【経営者必見】フランチャイズ加盟店の社長の万一 事業保障3つの視点
たとえば、社長が、コンビニや飲食のフランチャイズに加盟して3店舗を運営し、本部と4店舗目の出店を決めたとします。出店の資金は銀行から借り、内装や設備はリースで整えました。店の運営は、社長が毎日店舗を回って支えています。
加盟店の社長からのご相談では、出店の準備では借入とリースの契約に目が向き、社長自身の万一の備えは後回しになっていた、という声を伺います。
フランチャイズの店舗は、看板やノウハウは本部のものでも、借入やリース、従業員の雇用は加盟した会社が負っています。社長に万一があった時に、加盟契約がどうなるかで、会社に必要なお金は大きく変わります。
この記事では、法人保険の目的のうち「事業保障(経営者の万一への備え)」を扱います。フランチャイズ加盟店の社長の万一に備える3つの視点と、つまずきやすい場面を説明します。解説するのは、大手生命保険代理店で8年、1,100名以上のご相談を伺ってきた、FP1級(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)の筆者です。
この記事は、保険への加入や解約をお勧めするものではありません。税務の判断、申告、経理処理の確定は税理士の領域です。
結論
- 本部への支払いの洗い出し
- 加盟契約の承継の条件の確認
- 削りすぎは保障の空白、過剰は資金繰りの圧迫
この記事で分かること
- 今週できる3ステップ
- 加盟店の事業保障の3つの視点
- 加盟店で起こりやすい3つの見落とし
- FP1級が見る点検項目と、失敗につながる場面
1. フランチャイズ加盟店の事業保障で起こりやすい3つの見落とし
見落としは3つあります。どれも、「看板は本部のものだから、自分に何かあっても本部が何とかしてくれる」と考えてしまうことから起こります。
1-1. 加盟契約の承継に、本部の承認が要ることを知らない
加盟契約は、本部と加盟した会社との契約です。会社が加盟者であれば、社長が亡くなっても契約がすぐに終わるとは限りません。ただし、代表者の変更に本部の承認を求める条項や、本部の研修の修了を条件にする条項を置いている契約があります。
たとえば、社長が、自分に万一があれば店長の誰かが社長を継げばよいと考え、承継の条項を読まずにいたとします。契約更新の面談で、本部の担当者から、代表者が替わる時は本部の承認と研修の修了が条件で、研修には一定の期間がかかると伝えられて、社長は初めて気づきます。社長は、更新の面談の場で、研修を受けさせる候補の店長を決めることになりました。
1-2. 本部への支払いと違約金を、必要な資金に入れていない
加盟店の毎月の支払いには、ロイヤリティのほか、システムの利用料や広告分担金などがある場合があります。契約の途中で店を閉じる時は、違約金や、残ったリース料の一括の支払いを求められる場合があります。金額と条件は、加盟契約書とリース契約書で確かめます。
たとえば、経理担当者が、社長の万一に備える必要な資金を、借入の残高だけで計算していたとします。リース会社から届いた残高の通知をファイルに綴じる時に加盟契約書の支払いの条項も読み返し、中途解約の違約金と、店舗の設備のリース残債が、どこにも入っていないと気づきます。会社は、必要な資金の表に、違約金とリース残債の2つの行を書き足しました。
1-3. 社長個人の保険だけで、会社が受け取るお金がない
社長が個人で入っている保険は、受取人が家族であれば、保険金は家族に入ります。会社の借入や本部への支払いに、そのまま使えるお金ではありません。
たとえば、社長が、個人で入っている死亡保険の額が大きいので、会社の分は要らないと考えていたとします。決算の説明に来た取引銀行の担当者から、会社が受取人の保険はあるかと聞かれ、社長は、会社には保険金が入らないと気づきます。社長は、家族に残すお金と、会社に残すお金を、紙に分けて書き出しました。
要するに、承継の条件、本部への支払いと違約金、会社が受け取るお金、の3つが、加盟店の事業保障で起こりやすい見落としです。
2. 加盟店の社長が事業保障を後回しにしてしまう背景
背景は3つです。本部の仕組みへの安心感、日々の店舗運営の忙しさ、契約書の読みにくさです。
2-1. 本部の仕組みに守られている安心感がある
商品の仕入れや売り方、店舗の運営の手順は、本部が用意しています。そのため、自分が抜けても店は回るように見えます。ただ、本部が守るのは看板とノウハウで、加盟した会社の借入や雇用まで引き受けるわけではありません。
2-2. 店舗を回る毎日で、先のことを考える時間がない
シフトの穴埋め、本部との打ち合わせ、売上の確認と、社長の一日は店舗の運営で埋まります。自分の万一は、出店や更新の節目にしか考えないことがあります。
2-3. 加盟契約書は、条項が多く読みにくい
加盟契約書は条項が多く、承継や解約の条項は後ろのほうに置かれていることがあります。小売業や飲食業のフランチャイズでは、加盟金などを受け取る本部は、契約の前に、契約の期間・更新・解除などを記した書面を渡して説明することとされています(中小小売商業振興法第11条。出所:e-Gov法令検索・中小企業庁)。ただ、店舗の運営に追われる中で、その書面を出店のたびに読み返す時間は取りにくいものです。
要するに、本部への安心感、運営の忙しさ、契約書の読みにくさ、の3つが背景です。
3. フランチャイズ加盟店の社長の万一に備える、事業保障の3つの視点
視点は3つです。加盟契約の終了と承継の条件、本部への支払いと違約金、備えの手段と保険金額です。まず次の表で全体を見ます。
| 視点 | 確かめること | 確かめる資料の例 |
| 1. 承継の条件 | 代表者の変更の承認・研修・期間 | 加盟契約書・契約前の書面 |
| 2. 本部への支払い | 毎月の支払い・違約金・リース残債 | 加盟契約書・リース契約書 |
| 3. 備えの手段 | 会社が受け取る保険金額と期間 | 保険証券・借入の返済予定表 |
3-1. 視点1 加盟契約の終了と承継の条件を確かめる
最初に、社長に万一があった時に、加盟契約が続くのか、終わるのかを確かめます。続ける場合は、誰が代表者になれば本部が承認するのか、研修や面談にどのくらいの期間がかかるのかを、加盟契約書で確かめます。
続けられない場合や、続けないと決める場合は、店を閉じるか、店を別の加盟者に譲るかを選びます。どちらを選ぶかで、必要な資金の中身が変わります。
3-2. 視点2 本部への支払いと違約金を書き出す
次に、社長が不在の間も続く支払いと、店を閉じる時に一度に出ていく支払いを、分けて書き出します。続く支払いは、ロイヤリティ、システムの利用料、家賃、従業員の給与などです。一度に出ていく支払いは、違約金、リース残債、店舗の原状回復の費用などです。
あわせて、借入の残高と、社長の連帯保証の有無を確かめます。この2つの列がそろうと、会社に残すべきお金の大きさが見えてきます。
3-3. 視点3 備えの手段と保険金額を決める
最後に、書き出したお金を、手元の預金で賄う分と、保険で備える分に分けます。保険で備える分は、会社が契約者・受取人、社長が被保険者の契約で考えるのが基本です。会社が受け取った保険金は、会社の益金になります(法人税法第22条第2項。出所:e-Gov法令検索)。税金を差し引いた後に残る額で、足りるかを確かめます。
死亡保険を新しく結ぶ時は、被保険者になる社長の同意が要ります(保険法第38条。出所:e-Gov法令検索)。保険料の経理は契約の種類で異なります。2019年7月8日以後に契約した、保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超える契約は、保険料の一部を資産に計上する扱いです(割合や期間は区分で異なり、例外もあります。法人税基本通達9-3-5の2。出所:国税庁)。個別の扱いは顧問税理士に確かめます。
保険期間は、借入やリースが終わる時期、加盟契約の更新の時期と合わせて考えます。
要するに、承継の条件、本部への支払いと違約金、備えの手段と保険金額、の3つを順に確かめます。
ここまでで、フランチャイズ加盟店の社長の万一に備える要点を解説しました。社長が売上を支える会社の事業保障について、全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
【まるっと解説】社長が売上を支える会社の事業保障 5つの備え
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4. FP1級が見る、加盟店の事業保障の点検項目
見る点は4つです。FP1級の筆者が最初に見るのは、保険証券よりも、加盟契約書の承継と解約の条項です。条項が分かれば、会社が続く場合と閉じる場合の、2つの必要な資金を分けて考えられます。
4-1. 店舗ごとの借入とリースの一覧があるか
店舗ごとに、借入の残高、リースの残債、終わる時期を並べた一覧があるかを見ます。出店のたびに借入が増える会社では、どの店舗の借入がいつ終わるかが、保険期間を決める手がかりになります。
4-2. 続ける場合と閉じる場合の資金を分けているか
店を続ける場合は、後任が承認されるまでの運転資金が中心です。閉じる場合は、違約金や原状回復の費用が中心です。どちらの場合も、必要な額を別々に出しているかを見ます。
4-3. 後任の候補と、承認までの期間を決めているか
後任の候補が決まっていれば、研修の時期や、候補を被保険者に加えるかどうかも考えられます。候補が決まっていない会社では、承認までの期間の運転資金を厚めに見ておく必要があります。
4-4. 相談先の役割分担が決まっているか
加盟契約の解釈は弁護士、税務と経理は顧問税理士、保険の手続きは保険の担当者です。FPは、加盟契約・借入・保険を1枚に並べ、足りない分と重なっている分を整理する役割で関わります。
要するに、店舗ごとの一覧、続ける場合と閉じる場合の資金、後任と承認までの期間、相談先の役割分担、の4つを見ます。
5. 今週できる、加盟店の社長の万一に備える3ステップ
今週できるのは3ステップです。加盟店だからといって、保険を急いで増やす必要はありません。
5-1. 加盟契約書の承継と解約の条項に印を付ける
加盟契約書と、契約の前に受け取った書面を出し、代表者の変更、契約の解除、違約金の条項に印を付けます。分からない言葉は、本部の担当者に書面で問い合わせます。
5-2. 店舗ごとに、続く支払いと一度の支払いを書き出す
店舗ごとに、毎月続く支払いと、閉じる時に一度に出ていく支払いを、2つの列に書き出します。借入とリースの終わる時期も、同じ表に入れます。
5-3. 失敗につながる3つの場面を、先に確かめる
加盟店の事業保障で失敗につながる場面は、保障の削りすぎ、保険料の過剰、後任の候補の同意漏れの3つです。次の場面が起きないかを、先に確かめます。
削りすぎの場面
たとえば、社長が、1店舗目の出店時に入り、その後の店舗の借入にもあてるつもりだった会社の定期保険を、更新しないと保険会社に伝えて満了させたとします。3店舗目のリース契約の更新の書類をそろえていた総務担当者が、借入の返済予定表と見比べ、借入が残る期間に、会社が受け取る保険が1本もないと気づきます。社長は、告知に使う健康診断の結果をそろえ、新しい契約の見積りを取りました。
過剰の場面
たとえば、社長が、出店のたびに、その店舗の借入に合わせて保険を1本ずつ追加し、最初の店舗の借入を返し終えた後も、すべての保険料を払い続けていたとします。毎月の巡回で、顧問税理士が、年払いの保険料が引き落とされる月に、預金の残高が仕入れの支払いの額を下回りかけていたと指摘します。会社は、借入を返し終えた店舗の分の契約を、必要な額まで減額しました。
後任の候補の同意が漏れていた場面
たとえば、専務が、後任の候補に決まった店長を被保険者にする契約を、本人に説明しないまま申し込もうとしたとします。申込書を確かめた保険の担当者が、被保険者の同意の欄が空いていることを示し、本人の同意がなければ死亡保険は効力が生じないと伝えます(保険法第38条。出所:e-Gov法令検索)。専務は、店長と面談の時間を取り、契約の目的と受取人を説明してから、本人に署名してもらいました。
要するに、条項に印を付ける、支払いを2つの列に書き出す、失敗の場面を先回りする、の3つが今週の一歩です。
6. フランチャイズ加盟店の事業保障のよくある質問
Q1. 社長が亡くなったら、加盟契約は終わりますか。
会社が加盟者であれば、社長が亡くなっても、契約がすぐに終わるとは限りません。代表者の変更に本部の承認を求める条項や、契約の解除の条項の中身は契約で異なるため、加盟契約書で確かめます。解釈に迷う時は弁護士に確かめます。
Q2. 加盟店の事業保障は、いくら必要ですか。
決まった額はありません。後任が承認されるまでの運転資金、借入とリースの残債、店を閉じる時の違約金や原状回復の費用を書き出し、手元の預金で賄えない分を保険で備えるかを考えます。保険金は会社の益金になるため、税金を差し引いた後に残る額で確かめます。
Q3. 本部が入っている保険で、社長の万一は補われますか。
加盟契約で求められる保険が、店舗の損害や事故に備えるものであれば、社長が亡くなった時の保険金は出ません。加盟契約書の保険の条項と、保険証券の補償の内容を確かめます。
Q4. 加盟契約の前に受け取った書面は、何に使えますか。
小売業や飲食業のフランチャイズでは、加盟金などを受け取る本部は、契約の前に、契約の期間・更新・解除などを記した書面を渡して説明することとされています(中小小売商業振興法第11条。出所:e-Gov法令検索・中小企業庁)。承継や解約の条件を確かめる手がかりになります。
Q5. 事業保障の保険料は、経理でどう扱いますか。
契約の種類で異なります。2019年7月8日以後に契約した、保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超える契約は、区分に応じて保険料の一部を資産に計上します(割合や期間は区分で異なり、例外もあります。法人税基本通達9-3-5の2。出所:国税庁)。個別の扱いは顧問税理士に確かめます。
Q6. 店長を後任の候補にした時、保険はどうしますか。
候補の店長が会社の運営を担うようになれば、その人に万一があった時の備えも考える価値があります。新しく被保険者にする時は、本人の同意が要ります(保険法第38条。出所:e-Gov法令検索)。急いで加入するのではなく、役割が決まってから検討します。
7. まとめ|加盟店の事業保障は、加盟契約書から始める
- 承継の条件の確認
- 会社が受け取る保険金
- 税務と経理は税理士の領域
- 違約金とリース残債の洗い出し
- 続ける場合と閉じる場合の資金の区別
- 削りすぎは保障の空白、過剰は資金繰りの圧迫
筆者は、多くの社長とお話しする中で、社長が守っているのは家族だけでなく、従業員とそのご家族でもあると教わってきました。看板は本部のものでも、店で働く人の暮らしを支えているのは加盟店の社長です。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。加盟契約書の条項を一緒に読むところから、進めます。
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