【保存版】法人保険の相談先 税理士と担当者の役割分担 3つのポイント
決算の打合せの席で、顧問税理士が「この保険は、来期は見直したほうがよいかもしれません」と言い、同じ週に保険の担当者が「今のうちに、もう1本いかがですか」と提案してくる場面があります。
社長は、どちらの話も間違いではなさそうだと感じます。ただ、2人の話は別々に進んでいて、会社全体として何が正しいのかを説明してくれる人がいません。
法人保険の相談では、税理士、保険担当者、経営者のそれぞれが自分の持ち場の話をしていて、全体を見る人がいないまま契約が積み上がっているケースが少なくありません。
この記事は、法人保険の相談先に迷っている経営者に向けて、税理士・保険担当者・経営者の役割分担と、全体を見ながら進める方法を整理します。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
相談先を増やすことが目的ではありません。それぞれに何を聞けばよいかが分かれば、判断が早く、ぶれにくくなります。
結論
- 法人保険の相談は、税務は税理士、契約内容と手続きは保険担当者、目的と上限額の決定は経営者、と役割を分けると進めやすくなります。
- 押さえるポイントは3つです。経営者が目的と上限を先に決めること、税務の個別判断は税理士に任せること、三者に同じ資料を渡すことの3つです。
- 相談を一人に任せきると保障の空白が、相談せずに契約を足すと資金繰りの圧迫が生まれます。両面を見て決めます。
この記事で分かること
- 相談先がばらばらな会社で起きる3つの困りごと
- 経営者が法人保険を一人の担当者に任せてしまう背景
- 税理士・保険担当者・経営者の役割分担3つのポイント
- 相談の前に準備する資料と、聞くべき質問
- 任せきりと自己判断のそれぞれで起きる失敗の場面
1. 法人保険の相談先がばらばらな会社で起きる3つの困りごと
相談先がばらばらな会社では、大きく3つの困りごとが起きます。1つ目は目的が誰にも説明できなくなること、2つ目は税務と保障が別々に判断されること、3つ目は担当者が変わった後に契約の事情が引き継がれないことです。
1-1. 契約の目的を、誰も説明できなくなる
法人保険は、加入した時点では目的がはっきりしていても、年月がたつと忘れられていきます。退職金の準備だったのか、借入金の備えだったのか、社内で説明できる人がいなくなります。
目的が分からない契約は、見直しの判断ができません。残すべきか、減らすべきかの基準がないためです。
1-2. 税務と保障が別々に判断される
税理士は、損金や資産計上など税務の面から契約を見ます。保険担当者は、保障の中身や保険金額の面から契約を見ます。
お互いが自分の面だけで判断すると、税務上は問題がなくても保障が足りない、保障は十分でも資金繰りが苦しい、という状態が生まれます。
税務と保障のどちらか片方だけで決めた契約は、もう片方で問題が出ることがあります。2つを同じ机の上で見る場が必要です。
1-3. 担当者が代わると、契約の事情が引き継がれない
保険の担当者は、異動や退職で代わることがあります。新しい担当者は、契約の目的や加入時の経緯を知らないまま、更新や手続きの案内だけを送ってきます。
契約の事情が会社の中に残っていなければ、更新のたびに「このままでよいのか」が分からなくなります。
要するに、相談先がばらばらだと、目的が見えなくなり、税務と保障が分断され、担当者の交代で事情が途切れます。
2. 経営者が法人保険の判断を一人の担当者に任せてしまう背景
任せきりになる背景には、3つの理由があります。どれも、経営者が忙しく、相談の相手が複数いるために起きます。
2-1. 「税理士に任せておけば間違いない」と考える
税理士は、会社のお金に詳しく、経営者から信頼されている存在です。そのため、保険の判断も税理士に任せようとする経営者は多い傾向があります。
ただ、税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の業務です。(出所:税理士法第2条第1項)保険の商品や保障の設計は、税理士の本来の専門とは限りません。得意な範囲を確かめて頼む必要があります。
2-2. 「保険のことは担当者が詳しい」と考える
反対に、保険の担当者に任せきりにする経営者もいます。担当者は保険の中身に詳しく、手続きも手早く進めてくれます。
ただ、税務の個別判断や申告の中身までは、担当者が決める領域ではありません。税務は税理士に確認する、という線引きが必要です。
2-3. 誰に何を聞けばよいかが分からない
三者に聞くと、答えが少しずつ違って混乱する、と感じる経営者もいます。違いの多くは、見ている面が違うことから生まれます。
聞く内容を役割ごとに分けておけば、答えが違っても、どちらが何の面の話なのかを整理できます。
要するに、任せきりの背景には、税理士への信頼、保険担当者への期待、聞き分けの難しさの3つがあります。
3. 法人保険の相談を進める役割分担3つのポイント
役割分担は、次の3つのポイントで整理できます。経営者が先に決めること、税理士に確認すること、保険担当者に任せることを、順に分けます。
3-1. ポイント1:経営者が目的と上限を先に決める
最初に決めるのは、経営者です。何を守りたいのか、保険料にいくらまで払えるのかを、税理士や担当者に聞く前に書き出します。
目的の例は、社長の万一の借入金返済、役員の退職金、従業員の福利厚生、相続の資金などです。目的が決まらないまま商品の話に入ると、提案が先に立ってしまいます。
3-2. ポイント2:税務の個別判断は税理士に確認する
保険料の損金算入や資産計上など税務の判断は、税理士に確認します。税務相談は税理士の業務です。(出所:税理士法第2条第1項)
2019年(令和元年)7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて保険料の一部を資産に計上します。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)解約返戻金相当額のない短期払いの定期保険・第三分野保険だけは、2019年10月8日以後の契約が対象です。終身保険は別の扱いです。養老保険は法人税基本通達9-3-4の扱いで、9-3-5の2の対象外です。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-4)契約ごとに税理士へ確認します。
3-3. ポイント3:契約内容と手続きは保険担当者に整理してもらう
保険の種類、保険期間、保険金額、被保険者、受取人、解約返戻金の動きなど、契約の中身は保険担当者が整理します。減額、払済、名義変更などの手続きの影響も、ここで確認します。
担当者に頼むときは、目的と上限額を先に伝えます。商品の提案ではなく、現在の契約の整理から始めてもらいます。
| 立場 | 担うこと | 聞くときの質問の例 |
| 経営者 | 目的、上限額、最終の判断 | この契約は、何の支払いを守るためのものか |
| 顧問税理士 | 損金・資産計上・受取時の処理 | この契約の保険料は、決算でどう処理されるか |
| 保険担当者・FP | 契約内容、手続き、保障の空白 | 減額や払済にすると、保障はどう変わるか |
三者に同じ資料を渡すことも欠かせません。保険証券の写しと、直近の決算書、資金繰り表を同じ形でそろえて渡すと、三者の話がかみ合いやすくなります。
要するに、経営者が目的と上限を決め、税務は税理士が確認し、契約内容は保険担当者が整理します。三者には同じ資料を渡します。
この記事では要点に絞って解説しました。制度の全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
【まるっと解説】法人保険の見直し 全体像を整理する5つの手順
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。現在の契約と目的をもとに、誰に何を聞けばよいかを一緒に整理します。
\無料相談(30秒で予約)/
4. FP1級が全体を見るときの進め方
専門家と一緒に進める価値は、三者の話を1つの図にまとめられることです。経営者が三者の間で通訳をする負担が軽くなります。
4-1. 相談の前に準備する4つの資料
- 保険証券の写し(契約者・被保険者・受取人・保険金額が分かるもの)
- 直近2期分の決算書と、向こう1年の資金繰り表
- 借入金の一覧と、社長の連帯保証の有無が分かる資料
- 役員退職金の規程や、従業員向けの退職金・福利厚生の資料
全部そろっていなくても相談はできます。そろっているものから、持ち寄ってください。
4-2. 全体を見る人の役割
全体を見る人は、三者の話を1枚の表にまとめます。契約ごとに、目的、保障額、保険料、税務の扱い、見直しの選択肢を並べます。
この表があると、経営者は「何を守り、何を減らしてよいか」を自分の言葉で決められます。税務の判断は、表をもとに税理士が個別に確認します。
4-3. 筆者が大切にしていること
筆者が最初に学んだのは、保険の話より先に、守りたい人の話を伺うことでした。更新で保険料が上がる相談に来られた方に、背景を伺わないまま「そこまでの保障は必要ない」とお伝えし、納得いただけなかったことがあります。後日、守りたいご家族の事情を知り、自分の未熟さを恥じました。
以来、増やす話も減らす話も、会社の数字と守りたい人を伺ってから始めます。見直しが合う場合も、残すのが合う場合も、正直にお伝えします。
要するに、全体を見る進め方は、資料の準備、1枚の表への整理、経営者の判断の3つで進みます。
5. 今週できる一歩と、相談の進め方で起きる失敗
今週できる一歩は3つです。どれも、契約を変えずにできます。あわせて、相談の進め方で起きやすい失敗を3つの場面で整理します。
5-1. 今週中にできる3ステップ
- 保険証券を集めて、契約ごとに「何のための契約か」を一言で書く
- 書けない契約に印を付け、保険担当者に契約内容の確認書類を依頼する
- 税理士に、保険料の処理について聞きたい点を3つまでメモして渡す
この3つで、目的が分かる契約と分からない契約が分かれます。契約を変えるかどうかは、その後の話です。
5-2. 一人に任せきりにして起きる失敗の場面
たとえば、決算の直前に、顧問税理士が「今期は利益が出ているので、この保険は来期以降に整理を検討しましょう」と話したとします。
社長は、その契約が何のための保険だったか思い出せないまま、保険担当者にも相談せずに解約を決めます。その契約は、社長の万一のときに借入金の返済を支える事業保障でした。解約後に社長が病気になり、会社は返済を支える資金がないまま、金融機関への説明に追われます。
税務の面だけで解約を決めると、社長の万一のときに返済を支える契約が残っていません。解約の前に、その契約が守る支払いを書き出し、保険担当者にも保障の面から意見を聞きます。
5-3. 相談せずに契約を足して起きる失敗の場面
たとえば、決算で利益が大きくなりそうだと分かった月に、社長が保険担当者に電話をして新しい契約を頼んだとします。
税理士には、契約を結んだ後に報告しました。新しい契約が最高解約返戻率50%を超える定期保険だった場合、区分に応じて保険料の一部が資産に計上され、その年の費用は思ったほど増えません。一方で、保険料は毎月の引落しとして続き、翌年の資金繰りが苦しくなります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
決算の対策だけで契約を足すと、保険料が毎月の固定費として残り、翌年の資金繰りを圧迫します。契約の前に、税理士に処理を確認し、経理担当者が資金繰り表へ重ねて、払える範囲を社長に報告します。
5-4. 担当者の交代を放置して起きる失敗の場面
たとえば、長年付き合ってきた保険担当者が異動し、新しい担当者から更新の案内が届いたとします。
経理担当者は、案内に書かれた金額をそのまま社長に回し、社長は目的を確かめないまま更新を承認します。その後、資金繰りが厳しくなり、見直そうとしても、契約の目的を知る人が社内にいません。判断に時間がかかり、解約や減額の検討が遅れます。
担当者が代わったときに目的を社内の資料に残していないと、見直しの判断が遅れます。更新の案内が届いたら、経理担当者が契約ごとの目的の一覧と照らし合わせ、社長に報告します。
要するに、任せきりでは保障の空白が、相談せずに足せば資金繰りの圧迫が生まれます。担当者の交代にも備えて、目的を社内に残します。
6. 法人保険の相談先のよくある質問
Q1. 法人保険の相談は、税理士と保険担当者のどちらにすればよいですか。
どちらか一方ではなく、役割を分けて両方に聞くのが進めやすい方法です。税務の個別判断は税理士の領域、契約内容や手続きは保険担当者が整理します。目的と上限額は、経営者が先に決めます。
Q2. 顧問税理士は、保険の中身まで相談に乗ってくれますか。
税理士によって得意な範囲が異なります。税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の業務です。(出所:税理士法第2条第1項)保険の商品や保障の設計については、保険担当者やFPにも意見を聞くと、保障の面が抜けにくくなります。
Q3. 保険担当者の提案が、自社に合っているか見分けるにはどうすればよいですか。
提案を受ける前に、目的と上限額を担当者に伝えます。そのうえで、現在の契約の整理から始めてくれるか、目的に合わない提案を無理に勧めないかを確かめます。税務の判断を担当者だけで断定していないかも、見るポイントです。
Q4. 税理士と保険担当者の意見が食い違ったら、どうすればよいですか。
食い違いの多くは、見ている面が違うことから生まれます。税理士は税務、保険担当者は保障の面です。両方の意見を同じ資料の上に並べ、経営者が目的と上限額に照らして決めます。
Q5. 法人保険の損金算入は、どのように判断されますか。
契約の種類と内容で変わります。2019年(令和元年)7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて保険料の一部を資産に計上します。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)個別の判断は、税理士の領域です。
Q6. 相談の前に、どんな資料を用意すればよいですか。
保険証券の写し、直近2期分の決算書、向こう1年の資金繰り表、借入金の一覧、役員退職金や従業員向けの規程があると進めやすくなります。全部そろっていなくても、持ち寄れるものから始めて構いません。
Q7. 担当者が代わったら、契約を見直したほうがよいですか。
担当者が代わることだけで、見直しが必要になるわけではありません。ただ、契約の目的が社内で説明できない場合は、点検する良い機会です。契約ごとの目的を一覧にして、新しい担当者と共有します。
7. まとめ|役割を分けて、全体を一緒に見る
- 相談先がばらばらだと、目的が見えなくなり、税務と保障が分断され、担当者の交代で事情が途切れます。
- 役割分担は、経営者が目的と上限を決め、税理士が税務を確認し、保険担当者が契約内容を整理する、の3つのポイントです。
- 任せきりでは保障の空白が、相談せずに足せば固定費の積み上がりが生まれます。三者に同じ資料を渡します。
- 税務の個別判断は税理士の領域です。契約の目的は、社内の資料に残します。
筆者は、保険は会社と大切な人を守る道具のひとつだと考えています。必要なものを、必要な分だけ。そのために、会社の数字と守りたい人のお話を先に伺います。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。契約の一覧と目的をもとに、相談の進め方を一緒に整理します。
\無料相談(30秒で予約)/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

