【まるっと解説】法人保険は必要か|個人保険との違いと判断の目安
「個人の保険にはもう入っている。それでも、会社として法人保険に入る必要があるのだろうか」。そう迷ったことはありませんか。
金融機関や取引先、知人から勧められて、判断に困っている経営者の方も多いと思います。
この記事では、法人保険が必要かどうかを、個人の保険との違いから整理します。必要な会社の特徴だけでなく、不要なケースやデメリットも、正直にお伝えします。
加入を勧める記事ではありません。ご自身の会社に当てはめて、考えるための材料としてお使いください。
個人の保険があるのに法人保険も必要か|加入判断の迷い
法人保険が必要かどうかは、会社ごとに答えが変わります。一律に「入るべき」「入らなくてよい」とは言えません。
迷いの背景には、次のような事情があります。
- 個人の保険で、家族の備えはできているという感覚
- 法人保険の目的が、自分の会社に合うのか分からない戸惑い
- 保険料が、会社の資金繰りに響かないかという心配
- 勧められた理由が、税金の話に偏っているように見える違和感
どれも、もっともな疑問です。むしろ、迷う方のほうが、慎重に会社のことを考えておられます。
個人の保険と法人保険は、似ているようで、守る対象が違います。個人の保険は、ご本人とご家族の備えです。法人保険は、会社の備えです。
この違いを整理しないまま、「入っているから十分」「会社でも入っておくべき」と決めてしまうと、後から迷いが残ります。
まずは、何を守るための保険なのかを、言葉にするところから始めましょう。
新卒時代のがん保険のお話|保険が助けるものと、必要性を会社ごとに考える理由
保険の価値は、お金が出ることだけでは測れません。筆者がそう感じた体験を、お話しします。
筆者より
筆者のまつもとは、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)です。大学卒業後、大手生命保険代理店に8年勤め、現在は保険募集人として、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)で法人保険のご相談をお受けしています。
当時もっとも手厚いがん保険を提案した、新卒の頃
新卒の頃の筆者は、売らなければという思いが先に立っていました。深く考えないまま、当時もっとも手厚いがん保険を、40代後半の女性にご提案し、ご契約いただきました。
数か月後、その方からお電話をいただきました。
「がんになった。保険金は受け取れるか」というお問い合わせでした。
免責期間を終えており、給付の対象でした。心からほっとされた姿を、見ることができました。
その姿を見て、筆者は気付かされました。保険が助けたのは、お金だけではありません。
- 身体にかかる負担
- ご家族への迷惑
- 生活を切り詰める負担
保険は、こうした負担を和らげるものです。保障の重要性を、身に染みて感じた出来事でした。
必要かどうかは、守りたいものから考える
一方で、あの頃の筆者は、売らなければという思いで、深く考えずに提案していました。
保険は、助けになる力を持っています。だからこそ、誰の、どんな負担を助けたいのかを先に決めることが大切です。
法人保険も同じです。社長の万一の際に、会社の借入が家族に及ばないようにしたい。従業員の暮らしを守りたい。そうした守りたいものがあって、はじめて必要性が見えてきます。
守りたいものがはっきりしない段階で、急いで入る必要はありません。必要かどうかを、会社ごとに考えること。それが、この記事の出発点です。
自分に何かあったその時、そしてその後も、従業員や家族がずっと安心して暮らせる未来。保険の話の前に、守りたい人の話を。この順で、考えていきます。
法人保険と個人保険の違い|保険料の負担者・目的・受取人・お金の使い道
個人の保険はご本人とご家族の備え、法人保険は会社の備えです。違いは、保険料を誰が負担し、お金を何に使うかに表れます。
契約者・被保険者・受取人の意味や、お金の流れの全体像は、法人保険の受取人と仕組みのまとめで解説しています。ここでは、判断に必要な違いに絞ります。
| 比べる点 | 個人の保険 | 法人保険 |
| 保険料の負担者 | 個人(ご自身の収入から) | 会社(会社の資金から) |
| 主な目的 | 遺族の生活、本人の医療など、個人の備え | 会社の借入金の返済、運転資金、役員退職金、従業員の福利厚生など、会社の備え |
| 受取人 | 本人またはご家族 | 会社、または遺族(契約ごとに異なる) |
| お金の使い道 | 生活費、治療費、教育費など家計の支え | 借入の返済、事業の継続、退職金や弔慰金の財源など |
表のとおり、同じ「保険」でも、守る相手が違います。
個人の保険で足りるのは、ご家族の生活を支える部分です。会社の借入や運転資金、役員退職金の財源までは、役割として別になります。
受取人が会社の場合、保険金は会社に入ります。ご家族の自由に使えるお金ではありません。
逆に、法人保険で家族の生活費のすべてをまかなう、という考え方にも無理があります。目的ごとに、役割を分けて考えます。
個人の保険の保険金と相続税
個人が契約者で保険料を負担している保険の保険金は、相続税の対象です。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です(相続税法第12条第1項第5号)。
法人契約の保険金は、この枠とは別に扱われます。個人の保険と法人保険は、税金の面でも、別々に整理が必要です。
整理すると、次のようになります。
- 個人の保険は、家族の生活の備え
- 法人保険は、会社の借入・事業・退職金・福利厚生の備え
- どちらか一方で、もう一方の役割を代わりにすることは難しい
法人保険が必要な会社と不要な会社|小規模な会社の考え方も
必要性が高いのは、会社の備えとして守りたいものが、はっきりしている会社です。反対に、守りたいものが見えない会社では、無理に入る理由はありません。
必要性が高いと考えられる会社の特徴
次のような事情がある会社では、法人保険を検討する意味があります。
- 借入金や、社長の連帯保証がある会社
- 社長への依存が大きく、社長の万一の際に事業が立ち行かなくなるおそれのある会社
- 役員退職金の財源を、計画的に準備したい会社
- 従業員の保障を整えたい会社
たとえば、借入があって社長が連帯保証をしている場合、社長の万一の際に、借入の問題がご家族に及ぶ可能性があります。相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するためです(民法第896条)。
この場合、会社の借入返済の備えとして、法人保険が選択肢になります。詳しい考え方は、事業保障と社長の万一の借入金の考え方で扱っています。
従業員の保障を整えたい場合は、目的と受取人、加入の範囲を整理することが欠かせません。従業員にかける保険と福利厚生の考え方で解説しています。
法人保険が不要、または急がなくてよいケース
ここは、正直にお伝えします。次のような場合は、法人保険を急いで検討する必要はありません。
- 借入がなく、会社の資金に十分な余力がある
- 社長個人の備えで、ご家族の生活が足りる
- 保険料の負担が、資金繰りを圧迫する
- 目的があいまいなまま、税負担の軽減だけを理由に勧められている
- 小規模で、当面の必要が見えない
特に注意したいのは、税金の話だけで勧められている場合です。税負担の軽減だけを目的に入る保険は、順序が逆です。守りたいものがあって、そのための手段として考えるものです。
目的を聞いて、うまく説明できない保険は、いったん立ち止まって構いません。
必要性の見分け方を一覧にすると
| 会社の状況 | 考え方 |
| 借入や連帯保証がある | 社長の万一の際の返済の備えとして、検討する意味が大きい |
| 役員退職金の財源を準備したい | 時期と金額の見通しを立てたうえで、手段の一つとして検討する |
| 従業員の保障を整えたい | 目的・受取人・加入の範囲を決め、社内で説明できる形にする |
| 借入がなく、資金に余力がある | 会社の資金で備えられるため、急ぐ理由は小さい |
| 目的が説明できない | 目的を言葉にするまで、加入を見送る |
小規模な会社の考え方
従業員が少ない、社長ひとりの会社でも、法人保険が不要とは限りません。社長への依存が大きいぶん、万一の際の影響は大きくなる場合があります。
一方で、小規模な会社は資金に余裕が少なく、保険料が資金繰りの負担になりやすい面もあります。
小規模な会社では、次の順で考えると整理しやすくなります。
- 借入や連帯保証の有無の確認
- 社長の万一の際に、困る人と困る場面の整理
- 社長個人の保険で足りる部分の確認
- 不足する部分だけ、会社の備えとして検討
全部を法人保険で備える必要はありません。足りない部分だけを補う考え方で十分です。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。ご相談では、借入の状況や社長個人の保険を伺いながら、会社にとっての必要・不要を一緒に整理できます。
法人保険のデメリットと見直しの入口|入る前、入った後に確かめること
法人保険には、知っておきたいデメリットがあります。良い面だけで判断すると、入った後に戸惑うことになります。
法人保険の主なデメリット
| デメリット | 内容 |
| 解約返戻金が払込保険料を下回る期間がある | 契約して間もない時期に解約すると、戻るお金が払った保険料より少なくなる場合があります |
| 資金が拘束される | 払い込んだ保険料は、会社の手元から離れます。急な資金需要に使いにくくなります |
| 経理・契約管理の手間 | 資産計上や取崩しの処理、契約一覧の管理、受取人の確認など、継続的な手間がかかります |
| 税務の扱いが複雑 | 契約の内容により、経理や税務の扱いが変わります |
| 保険料が資金繰りを圧迫するおそれ | 業績が落ちたときも、保険料の支払いは続きます |
お金の流れの全体像は、先にご紹介した法人保険の仕組みのまとめで確認できます。
デメリットは、事前に知っていれば、備えられるものも多くあります。保険料の水準を無理のない範囲に抑える。契約一覧で管理する。税理士と経理の扱いを確認しておく。こうした工夫で、負担は小さくできます。
それでも、会社の状況によっては、デメリットが目的を上回ることがあります。そのときは、見送るという判断も立派な選択です。
法人保険の見直しの入口|四つの点を確かめる
すでに法人保険に入っている場合も、同じ視点が役立ちます。目的・保障額・期間・保険料負担の四つを確かめると、見直しの入口が見えてきます。
| 確かめる点 | 問いかけの例 |
| 目的 | 何のために、誰を守る保険か。今も、その目的は変わっていないか |
| 保障額 | 借入の残高や、必要な資金に対して、多すぎないか、足りないか |
| 期間 | 備えたい期間と、保険の期間は合っているか |
| 保険料負担 | 今の資金繰りで、無理なく払い続けられるか |
借入が減った、役員が交代した、事業の規模が変わったといった節目は、見直しの機会です。
見直した結果、現状のままで十分と分かることもあります。見直しは、入り直しを意味しません。
法人保険の相談で整理できることと、向く会社・急がなくてよい会社
相談の目的は、加入を決めることではなく、会社にとっての必要・不要を言葉にすることです。
ご相談では、会社の状況を伺いながら、次の点を整理できます。
- 会社の借入や連帯保証の状況と、社長の万一の際に困る場面
- 社長個人の保険で足りる部分と、足りない部分
- 役員退職金の財源の考え方と、準備の時期
- 従業員の保障について、目的と受取人の整理
- すでに入っている法人保険の、目的・保障額・期間・保険料負担
損金の扱いなど、税務に関わる点の詳細は、個別のご相談でご説明します。
相談が向く会社
- 借入や連帯保証があり、社長の万一の際の影響が気がかりな会社
- 法人保険を勧められ、必要かどうか判断できずにいる会社
- すでに入っている法人保険の、目的を説明できない会社
- 役員退職金や従業員の保障を、計画的に整えたい会社
急がなくてよい会社
- 借入がなく、資金に十分な余力がある会社
- 社長個人の備えで、ご家族の生活が足りている会社
- 当面の必要が見えていない会社
加入を急ぐ必要はありません。不安を煽るつもりもありません。整理の結果、「今は入らない」という答えになることもあります。
今日からできる一歩
最初の一歩は、守りたいものを書き出すことです。難しい準備は要りません。
- 会社の借入と、社長の連帯保証の有無を確認する
- 入っている個人の保険と法人保険を、一覧にする
- 各保険の目的を、一言で書いてみる
- 目的が書けない保険に印を付ける
- 印を付けた保険を、相談の材料にする
税務の扱いは、契約ごとの内容で変わります。詳細は税理士等の専門家にご確認ください。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。まずは契約の一覧を作るところから、ご一緒できます。
よくある質問
Q. 個人の保険に入っていれば、法人保険は不要ですか
一概には言えません。個人の保険は、ご家族の生活や医療など、個人の備えです。法人保険は、会社の借入や事業、退職金などの備えです。
借入がなく、社長個人の備えで足りる会社では、不要な場合もあります。会社の状況から考えます。
Q. 小規模な会社でも、法人保険は必要ですか
小規模だから必要、不要と決まるわけではありません。借入や連帯保証の有無、社長への依存の度合い、保険料を払い続けられるかが、判断の軸です。
当面の必要が見えない場合は、急がなくて構いません。
Q. 法人保険のデメリットは何ですか
解約返戻金が払込保険料を下回る期間があること、資金が拘束されること、経理や契約管理の手間がかかること、税務の扱いが複雑なこと、保険料が資金繰りを圧迫するおそれがあることです。
事前に知っておけば、備えられるものも多くあります。
Q. すでに入っている法人保険は、見直したほうがよいですか
見直しが必要とは限りません。目的・保障額・期間・保険料負担の四つを確かめて、今の会社の状況に合っているかを見ます。
合っていれば、そのままで構いません。借入の変化や役員の交代があったときは、確かめる機会になります。
Q. 税金の話だけで法人保険を勧められました。入るべきですか
目的が説明できないまま、税負担の軽減だけを理由に加入する必要はありません。まず、何のために、誰を守る保険なのかを確かめてください。
納得できるまで、決めなくて構いません。税務の扱いは、税理士にも確認すると安心です。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。法人保険が必要かどうかを、会社の状況に合わせて整理するお手伝いをします。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

