【要点整理】経営セーフティ共済だけの会社が分けたい備え 3つの理由
主要な取引先の倒産のニュースを見て、ある社長がつぶやきました。「うちは経営セーフティ共済に入っているから、大きな備えはできている」。
その場にいた経理担当者は、少し引っかかります。「その共済は、社長に万一があったときにも使えるものでしょうか」。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための、国の制度です。会社の守り方としては大切な一つですが、守る対象は、社長ご本人の万一とは別のところにあります。
この記事では、FP1級の資格を持つ筆者が、経営セーフティ共済だけを備えとしている会社が、社長の万一や就業不能への備えをどう分けて考えるかを、3つの理由から解説します。制度の細かな条件は、運営する機関の案内で確かめる前提です。
結論
- 経営セーフティ共済は、取引先の倒産への備えで、社長の万一や就業不能への備えではありません。
- 別に考える理由は、守る相手・起きる場面・必要な資金の考え方の3つが違うからです。
- この記事は、特定の制度や商品への加入をすすめるものではなく、目的ごとに備えを整理するための記事です。
この記事で分かること
- 共済だけで備えていると、困りやすい3つの場面
- 目的の違いが見落とされる背景
- 備えを目的ごとに分けて考える3つの理由と進め方
- 分け方を誤った失敗場面と、今週の確認項目
1. 経営セーフティ共済だけに頼ったときに困る3つの場面
困る場面は、社長の入院・社長の死亡・借入金の返済の3つです。順に見ていきます。
1-1. 社長が長期に働けなくなる
経営セーフティ共済は、取引先事業者の倒産による連鎖倒産を防ぐ国の制度です。(出所:独立行政法人中小企業基盤整備機構)
社長の病気やけがで会社の売上が落ちても、それは取引先の倒産とは別の出来事です。
たとえば、社長が数か月入院し、売上が落ちたとします。経理担当者は共済の資料を探しますが、この場面への備えとして書かれている項目が見つかりません。
1-2. 社長の万一で、会社の資金が必要になる
社長に万一があると、後任の人選・借入金の整理・取引先への対応が、同時に起こります。
これらの資金は、取引先の倒産への備えとは、使い道が異なります。
たとえば、専務が「共済があるから、当面の資金は何とかなる」と考えていたとします。実際には、共済の目的に当てはまらず、別の手当てが必要になります。
1-3. 借入金の返済と、社長の保証が残る
金融機関から借入れがあり、社長が保証人になっている会社は多くあります。
社長の万一のあと、返済や保証がどう扱われるかは、借入れの契約の内容によります。
たとえば、ご家族が保証の責任を後から知り、会社の資金繰りの説明を求められる、という場面が考えられます。
要するに、社長の入院・死亡・借入金の返済のいずれも、取引先の倒産への備えでは対応しにくい場面です。
2. 備えの目的の違いが見落とされる背景
見落とされる背景は、「備えている」という感覚と、制度名から受ける印象の2つです。整理します。
2-1. 「備えはある」という感覚が、目的の確認を飛ばす
会社として、何かしらの備えをしている状態は、意識の上では心強いものです。
ただ、備えは「何から守るのか」で意味が決まります。目的を確かめずに、「備えている」とだけ捉えると、抜けている部分が見えなくなります。
たとえば、年に一度の決算の打合せで「共済は継続中」と確認しただけで、社長の万一の話題が出ないまま、何年も過ぎることがあります。
2-2. 制度名から、守る範囲を広く受け取ってしまう
「セーフティ(安全)」という言葉の響きから、会社を幅広く守ってくれる制度と受け取られることがあります。
制度の目的は、国の案内で確かめるのが近道です。(出所:独立行政法人中小企業基盤整備機構)
個別の条件や手続きは、運営する機関の窓口で確認してください。ここで細かな条件を書かないのは、時期によって内容が変わる可能性があるからです。
取引先の倒産への備えを含め、会社の事業保障の全体を整理する方法は、別の記事でも解説しています。社長の必要保障額(会社の万一資金)の出し方もあわせて参照してください。
要するに、備えているという感覚と制度名の印象が、目的の違いの確認を飛ばさせます。
3. 取引先倒産への備えと社長の万一への備えを分ける3つの理由
分けて考える理由は、守る相手・起きる場面・必要な資金の考え方が、それぞれ違うからです。まず、2つの備えを表で並べます。
| 比べる点 | 取引先の倒産への備え | 社長の万一・就業不能への備え |
| きっかけ | 取引先の経営破綻 | 社長の死亡・病気・けが |
| 困る内容 | 売掛金などが回収できず、資金が詰まる | 売上の減少・後任の不在・借入金の返済 |
| 考える材料 | 主な取引先と、売掛金の大きさ | 固定費・借入金・ご家族の生活 |
| 確認する相手 | 制度を案内する機関・顧問の専門家 | 顧問税理士・社会保険労務士・FPなど |
3-1. 理由1|守る相手が違う
取引先の倒産への備えが守るのは、会社の資金繰りです。
社長の万一への備えが守るのは、会社の継続と、社長を支えるご家族や従業員の暮らしです。
守る相手を分けると、必要な備えの種類も分かれます。
3-2. 理由2|起きる場面と、起きる確率の見え方が違う
取引先の倒産は、主要な取引先の状況を日々見ていれば、兆しをつかめることがあります。
社長の病気やけがは、前触れなく起きます。そのため、事前に起きる場面を想像して、数字で並べておく必要があります。
3-3. 理由3|必要な資金の考え方が違う
取引先の倒産への備えは、主な取引先の売掛金の大きさから考えます。
社長の万一への備えは、借入金の残高・固定費の月数・ご家族の生活費から考えます。見る数字が異なるので、同じ尺度では測れません。
公的な支えとして、健康保険の傷病手当金は、病気やけがで働けないとき、条件を満たせば支給されます。支給期間は通算1年6か月です。(出所:全国健康保険協会)国民健康保険にはありません。
この記事では要点に絞って解説しました。全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
【まるっと解説】社長が売上を支える会社の事業保障 5つの備え
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。まずは、いまの備えが何を守るためのものか、お聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
要するに、守る相手・場面・数字の3つが違うため、2つの備えは別々に考えます。
4. 共済だけで備えるときに起きやすい失敗の対
失敗は、社長の万一への備えが抜ける場面と、あれもこれもと備えを重ねすぎる場面の対で起きます。社長と経理担当者の場面で見ます。
4-1. 備えが足りない場面
- 目的を取り違えたまま放置した:たとえば、社長が「備えは共済で足りている」と数年間考えていたとします。社長が入院したとき、経理担当者は支払いの資金の出どころを失い、金融機関への相談が後手に回ります。
- 就業不能の備えが無い:たとえば、亡くなる場合の備えだけを考え、働けなくなる場合を考えていなかったとします。入院が長引くと、会社の固定費だけが出ていきます。
- 社長個人の生活費を考えていない:たとえば、役員報酬に頼って暮らす社長が、自分の療養中の家計の見通しを持っていなかったとします。会社の備えとは別に、ご家族の生活費の見通しが要ります。
4-2. 備えが重すぎる場面
- 不安から備えを重ねすぎた:たとえば、取引先の倒産への不安から、備えの積み上げを優先しすぎたとします。毎月の負担が資金繰りを圧迫し、肝心の運転資金が薄くなります。
- 2つの備えを足して、全体像を見ていない:たとえば、複数の備えを別々に積み上げ、経理担当者が全体の負担を把握できなくなったとします。目的の重なる部分があっても、気づくのが遅れます。
どちらも、備えを目的ごとに一覧にすれば防げます。税務上の取扱いは、顧問税理士に確認します。
要するに、目的ごとの一覧が無いと、抜けと重なりの両方が起きやすくなります。
5. 今週できる備えの目的の仕分けチェックリスト
仕分けは、一覧を1枚作るところから始まります。次の項目を、今週のうちに確かめます。
- いま備えているものを、目的ごと(取引先の倒産・社長の万一・就業不能)に書き出したか
- 主な取引先の売掛金の大きさを、一覧にしたか
- 借入金の残高と、社長の保証の有無を確かめたか
- 社長が働けない場合に、固定費を何か月払えるかを数えたか
- 加入している健康保険の種類(傷病手当金の有無)を確かめたか
あわせて読みたい
要するに、目的ごとの一覧と、社長が働けない月数の確認が、仕分けの入口です。
6. よくある質問
Q1. 経営セーフティ共済は、どんな制度ですか。
取引先事業者の倒産による連鎖倒産を防ぐための、国の制度です。運営は、独立行政法人中小企業基盤整備機構です。(出所:独立行政法人中小企業基盤整備機構)詳しい条件は、機構の案内で確かめてください。
Q2. 経営セーフティ共済で、社長の万一にも備えられますか。
目的が違います。社長の万一や就業不能への備えとは別に考える必要があります。会社の借入金や固定費を並べて、何が足りないかを確かめてください。
Q3. 共済に加入していれば、ほかの備えは不要ですか。
不要とは言えません。取引先の倒産と、社長の万一は、別の出来事です。どちらも起こり得るかどうかを、会社の状況から考えます。
Q4. 社長が働けなくなったとき、公的な制度はありますか。
健康保険に加入している場合、傷病手当金が条件を満たせば支給されます。支給期間は通算1年6か月です。(出所:全国健康保険協会)国民健康保険にはありません。
Q5. この記事は、共済への加入をすすめていますか。
いいえ、特定の制度や商品への加入をすすめるものではありません。目的ごとに、備えを整理するための記事です。加入の有無は、会社の状況に合わせて、ご自身で判断してください。
Q6. 税務上の扱いは、誰に確認すればよいですか。
税務の個別判断・申告・経理処理の確定は、税理士の領域です。制度ごとの取扱いは、顧問税理士に確認してください。
7. まとめ
- 経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐ国の制度で、社長の万一や就業不能への備えではありません。
- 守る相手・起きる場面・資金の考え方の3つが違うため、備えは目的ごとに分けて考えます。
- 備えは、足りなくても重くても負担になります。目的ごとの一覧が、確認の土台です。
- 税務の個別判断は税理士、労務の個別判断は社会保険労務士・弁護士の領域です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。いまの備えを目的ごとに並べて、抜けがないかを一緒に確認します。
\無料相談(30秒で予約)/
筆者より
筆者は、保険を、人が一番つらい「その時」に心と暮らしを支えるものだと考えています。商品の話より先に、会社の数字と、守りたい人のお話を伺うことを大切にしています。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

