決算書や設計書に並ぶ「保険積立金」「資産計上」「取崩し」「損金率196%」。意味が分からないまま、毎年の経理を任せていませんか。

この記事では、法人保険の経理処理の仕組みと、2019年改正後の損金算入ルールの読み方を、順を追って整理します。

契約者・被保険者・受取人の意味や、お金の流れ全体は、法人保険の受取人と仕組みの全体像にまとめています。この記事は、数字の読み方に絞ります。

法人保険の経理処理で戸惑う、資産計上と損金率196%の数字

戸惑いの正体は、保険料が「そのまま費用にならない」ことと、数字の見え方が期間で変わることにあります。

法人保険の設計書や試算表を見て、次のような疑問を持たれる経営者の方は少なくありません。

  • 保険料の一部が「資産計上」とされる理由が分からない
  • 資産計上した額が、あとでどうなるのか見えない
  • 「損金率196%」と書かれていて、100%を超える意味が分からない
  • 決算で保険積立金が増えていくことへの不安

保険料を払っているのに、その全額が費用にならない。そこへ「100%を超える」数字まで出てきます。戸惑うのは自然なことです。

経理を顧問の税理士に任せきりにしていると、数字の意味を社長ご自身が説明できない状態になりがちです。

金融機関や後継者、役員から「この保険は決算書でどう扱われているのか」と尋ねられたとき、答えに詰まってしまいます。

数字の読み方が分かると、設計書の見え方が変わります。仕組みを知ることが、最初の一歩です。

保険の話の前に、守りたい人の話を|経理を学ぶ前の筆者の視点

経理処理の理解は、会社と家族を守るための土台づくりです。

税金の話だけで保険を考えると、肝心の目的を見失いやすくなります。

筆者より

筆者のまつもとは、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)です。大学卒業後、大手生命保険代理店に8年勤め、現在は保険募集人として、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)で法人保険のご相談をお受けしています。

社長の万一の保障で守りたいのは、会社の存続と、社長のご家族に借金を背負わせないことです。そして、社長の役員退職金を、しっかり受け取っていただくことです。

自分に何かあったその時、そしてその後も、従業員や家族がずっと安心して暮らせる未来。保険の話の前に、守りたい人の話を。

経理処理は、その目的のために入っている保険が、決算書でどう見えるのかを知る作業です。この記事は、仕組みの理解にとどめ、税制上の扱いを理由に加入をお勧めするものではありません。

法人保険の経理処理の仕組みと、2019年改正後の損金算入ルールの読み方

経理処理の基本は、支払った保険料を「資産」と「費用」に分け、資産の部分を後で取り崩すことです。

まず全体の流れをつかみ、次に改正後の区分表、最後に数字の読み方へ進みます。

保険積立金と保険料|仕訳の流れ

保険料は、契約の内容によって、全額が費用になる場合と、一部が資産に計上される場合があります。資産に計上した部分の科目が、保険積立金です。

場面ごとの科目の流れを、表に整理します。科目名の付け方は会社の経理方針で異なるため、一例としてご覧ください。

場面 借方(左側)の科目 貸方(右側)の科目 読み方
保険料を払うとき 保険料(損金の部分)、保険積立金(資産計上の部分) 現金預金 保険料を、費用の部分と資産の部分に分けて記録する
資産計上期間 保険料、保険積立金 現金預金 払った保険料の一部が、資産として積み上がる
取崩期間 保険料(その年の保険料に加え、取崩分) 現金預金、保険積立金 積み上げた資産を、期間をかけて費用に振り替える
保険金・解約返戻金を受け取るとき 現金預金 保険積立金、雑収入など 受取額と保険積立金の残りとの差額が、損益になる
差額がマイナスのとき 現金預金、雑損失など 保険積立金 受取額が保険積立金の残りに届かない場合の差額

法人が受け取る保険金や解約返戻金は、益金として扱われます(法人税法第22条第2項、出所は国税庁・e-Gov法令検索)。

資産計上していた保険料(保険積立金)は、保険金の受取りや解約のときに取り崩します。その差額が損益になります。

つまり、資産計上は「費用にならなかった」のではなく、「費用にするタイミングを後に回している」状態です。

法人税基本通達9-3-5の2の区分表

2019年(令和元年)7月8日以後の契約では、最高解約返戻率の区分によって、資産計上の有無と期間が決まります。

対象は、保険期間3年以上の定期保険と第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものです(法人税基本通達9-3-5の2。出所は国税庁)。

最高解約返戻率とは、解約返戻金相当額が、払い込んだ保険料の累計に対して最も高くなったときの割合です。具体的な数値は、設計書に記載されています。

区分ごとの扱いを、表に整理します。

最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額 取崩期間
50%まで 資産計上なし なし なし(期間の経過に応じ損金)
50%を超え70%まで 保険期間の開始から、保険期間の40%相当期間を経過する日まで 支払保険料の40% 保険期間の75%相当期間を経過した後から保険期間の終了まで(均等)
70%を超え85%まで 同上(保険期間の40%相当期間まで) 支払保険料の60% 同上
85%を超える 保険期間の開始から、最高解約返戻率となる期間の終了まで(細則あり) 支払保険料に最高解約返戻率の70%を乗じた額(保険期間開始から10年を経過する日までは90%) 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間の経過後から保険期間の終了まで(均等)

年換算保険料相当額が少額のもの(最高解約返戻率が70%までで、年換算保険料相当額が30万円までのもの)などは、従来の取扱いです。

資産計上額や期間の細部には、表で書ききれない細則があります。詳しい内容は、国税庁の定期保険の保険料の取扱いに関するFAQで、確認が必要です。

個別の契約の区分は、設計書と税理士でご確認ください。

区分は、扱いの違いを示すものです。どの区分が望ましいという評価をするものではありません。

損金率196%の読み方|取崩期間の数字

「損金率196%」のような数字は、取崩期間の年の見え方を説明するものです。

設計書には、年ごとの保険料に対する損金の割合が載っていることがあります。その割合が100%を超えると、驚かれる方が多いのです。

理由は、期間ごとに損金になるものが違うからです。流れを表にします。

期間 その年に損金になるもの 保険料に対する損金の割合の見え方
資産計上期間 保険料のうち、資産計上しない部分 100%に届かない
取崩期間 その年の保険料の全体に加え、過去に資産計上した額の取崩分 100%を超えて表示されることがある
保険期間全体 資産計上した額は、取崩期間に損金へ移る 資産計上した額の範囲での話

取崩期間は、その年の保険料に加えて、過去に資産計上した額の取崩分も損金になります。そのため、その年の保険料に対する損金の割合が100%を超えて表示されることがあります。

これは取崩期間という「ある期間」の見え方の説明です。保険期間全体で見れば、資産計上した額を超えて損金になるわけではありません。

前半に資産計上した分を、後半に取り崩している。その動きが、ある年の数字に表れているのです。

だからこそ、単年の割合だけを見て、保険全体の評価をするのは避けたいところです。資産計上期間の数字と取崩期間の数字は、セットで読む必要があります。

逓増定期保険の経理処理の読み方

逓増定期保険は、保険期間の途中で保険金額が増えていくタイプの定期保険です。

逓増定期保険も、種類名ではなく、最高解約返戻率の区分によって、資産計上と取崩しの有無が決まります。

読み方の手順は、次のとおりです。

  1. 設計書で、最高解約返戻率を確認する
  2. 区分表で、資産計上期間と資産計上額を確認する
  3. 取崩期間の始まりと終わりを確認する
  4. 資産計上期間の数字と、取崩期間の数字を分けて読む

経理処理だけでなく、会社の資金繰りとの兼ね合いも、あわせて見ておきます。

逓増定期保険の経理処理は、契約日や設計によって区分が変わります。ご自身の契約の区分は、設計書と税理士でご確認ください。

資産計上額の取崩しの意味

取崩しは、資産計上していた保険料を、費用へ振り替える手続きです。

取崩しには、二つの場面があります。取崩期間に均等で行うものと、保険金の受取りや解約のときに行うものです。

取崩期間に入っても、保険積立金の残りが一度にゼロになるわけではありません。期間にわたって、少しずつ取り崩されていきます。

保険期間の途中で解約すると、その時点の保険積立金の残りと、受け取る解約返戻金との差額が、損益になります。

解約・払済時の差額処理

出口の場面では、受取額と保険積立金の残りの差額が、その事業年度の損益に表れます。

払済保険に変更した場合は、変更時の解約返戻金相当額と資産計上額の差額を、変更した事業年度の益金または損金に算入するのが原則です(法人税基本通達9-3-7の2。出所は国税庁)。例外の扱いがあるため、変更の際は専門家に確認します。

解約のタイミングによる差額の出方や、出口の設計は、解約返戻金の扱いと出口の考え方で詳しく解説しています。

なお、養老保険など、従業員を対象にする保険の経理処理は、目的や加入範囲によって考え方が変わります。従業員にかける保険と福利厚生の考え方で整理しています。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。ご相談では、設計書の数字(最高解約返戻率、資産計上期間、取崩期間)の読み方を、ご一緒に整理できます。

設計書の数字を整理する

経理処理の疑問を、個別の相談で整理できること

設計書の数字は、会社の契約ごとに違います。だからこそ、個別に読み解く必要があります。

設計書と決算書をお持ちいただければ、次の点をご一緒に確認できます。

  • 設計書の最高解約返戻率と、区分表の当てはめ方の確認
  • 資産計上期間と取崩期間の、年ごとの流れの確認
  • 「損金率」の数字が、どの期間の説明なのかの確認
  • 解約や払済を考えるときの、差額の出方の確認の進め方
  • 税理士の先生へお尋ねする際の、質問事項の整理

損金の詳細な扱いは、契約の内容によって異なります。個別のご相談でご説明します。

税務上の判断そのものは、税理士の専門領域です。筆者は、数字の意味を経営者の方が理解し、税理士と話せる状態をつくるお手伝いをします。

経理処理の確認が向く会社と、急がなくてよい会社

この記事は、保険の加入や入り直しを勧めるものではなく、現状の数字を理解する機会を提案するものです。

次に当てはまる会社は、数字の整理から始めると、見通しが立てやすくなります。

  • 決算書の保険積立金の中身を、社長が説明できない会社
  • 設計書の「損金率」などの数字の意味を、確認したことがない会社
  • 2019年7月8日以後に、定期保険や第三分野保険に加入した会社
  • 解約や払済を考える前に、差額の出方を知っておきたい会社

一方で、急ぐ必要のない場合もあります。

  • 顧問の税理士から、契約ごとに区分と取崩しの流れの説明を受けている会社
  • 法人保険に加入しておらず、必要性を検討する段階の会社

経理処理は、保険に入る理由にはなりません。守りたい人と会社の事情から、保険を考えるのが順序です。

加入を急ぐ必要はありません。不安を煽るつもりもありません。確認の結果、現状のまま続けて差し支えないと分かることもあります。

法人保険がそもそも自社に必要かどうかは、別の視点で考えます。まずは、現状の数字を知ることから始めれば十分です。

今日からできる、設計書と決算書の確認|最初の一歩

最初の一歩は、設計書と決算書の保険積立金を、手元に並べることです。

特別な知識は要りません。次の順で進めてください。

  1. 保険証券と設計書を、契約ごとに机の上に集める
  2. 契約日が、2019年7月8日の前か後かを確認する
  3. 設計書の最高解約返戻率を探して、書き出す
  4. 決算書の保険積立金の残高を確認する
  5. 分からない用語に印を付け、質問事項にする

設計書に最高解約返戻率の記載が見当たらない場合は、保険会社への確認や、税理士へのご相談で分かります。分からないままで構いません。

経理や税務の扱いは、契約した時期や保険の種類で変わります。詳細は税理士等の専門家にご確認ください。

ご相談の際は、決算書と設計書をお持ちいただくと、お話がスムーズです。なくても、ご心配には及びません。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。数字の意味を、ご一緒に読み解くところから始められます。

数字の意味を整理する

よくある質問

Q. 「損金率196%」は、保険料より多く損金になるという意味ですか

いいえ。取崩期間の年の見え方を表した数字です。取崩期間は、その年の保険料に加えて、過去に資産計上した額の取崩分も損金になります。そのため、その年の保険料に対する割合が100%を超えて表示されることがあります。

保険期間全体で見れば、資産計上した額の範囲での話です。

Q. 資産計上した保険積立金は、いつ取り崩されますか

2019年7月8日以後の契約の定期保険などでは、区分表の取崩期間に、均等に取り崩します。解約や保険金の受取りのときにも、保険積立金の残りを取り崩して、差額を損益にします。

個別の契約の区分は、設計書と税理士でご確認ください。

Q. 最高解約返戻率は、どこで確認できますか

設計書や、保険会社が示す資料に記載されていることが多い項目です。見当たらない場合は、保険会社への確認や、税理士へのご相談で分かります。

区分の細則は、国税庁のFAQで確認が必要です。

Q. 2019年より前に契約した保険にも、区分表は当てはまりますか

区分表の対象は、2019年(令和元年)7月8日以後の契約です。それより前の契約は、従来の取扱いになります。

契約日が境目になるため、証券で契約日を確認し、扱いは税理士にご確認ください。

Q. 解約したとき、経理処理はどうなりますか

受け取る解約返戻金は益金になり、保険積立金の残りを取り崩します。その差額が、損益になります。払済保険への変更でも、差額を変更した事業年度で処理するのが原則です(法人税基本通達9-3-7の2)。

出口の考え方は、解約返戻金の扱いと出口の考え方で解説しています。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。経理処理の数字の読み方や、契約全体の整理を、ご一緒にお手伝いします。

未来の安心を相談する

法人保険のご相談

\経営者さま向け 法人保険のご相談/

「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

法人保険の相談を申し込む