【まるっと解説】法人保険の解約返戻金と税金|出口の選び方
長く払ってきた法人の保険を、解約すると損になるのではないか。そんな迷いを抱えていませんか。
解約返戻金が、万一の際の保障より少なく見えると、手放す決断はむずかしくなります。
この記事では、法人保険の解約返戻金と税金の基本を、解約・減額・払済み・名義変更・継続の比較と、会社解散時の考え方まで整理します。
契約者・被保険者・受取人の意味やお金の流れ全体は、法人保険の受取人とお金の流れをまとめた記事で扱っています。この記事は、その出口の部分に絞ります。
解約返戻金をめぐる迷いと、手放す前に知りたい不安
解約を迷う理由の多くは、金額の少なさより、解約後の姿が見えないことにあります。
解約を考える経営者の方からは、次のような声が聞かれます。
- 解約返戻金が、万一の際の保険金よりずっと少なく、手放すと損に見える迷い
- 解約したら、会社にどんな税金がかかるのか分からない不安
- 退職や会社の解散のとき、保険をどう処分すればよいのか分からない戸惑い
どれも、もっともな疑問です。保険は、入るときの説明は丁寧でも、出口の説明は少ないものだからです。
出口が見えないまま保険料を払い続けると、やめどきも、続けどきも、判断できなくなります。
反対に、出口の選択肢を先に知っておけば、今の契約を落ち着いて見直せます。
ここで大切な前提があります。解約すれば、その保険の保障は失われます。
保障の空白ができたあとに、会社や家族が困らないか。この視点を抜きにして、解約の判断はできません。
次の章から、仕組み、税金、選択肢の順に整理します。
解約返戻金の出口を考える視点|保険の話の前に、守りたい人の話を
出口の判断は、金額の大小より、守りたい人が困らないかで決まります。
筆者より
筆者のまつもとは、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)です。大学卒業後、大手生命保険代理店に8年勤め、現在は保険募集人として、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)で法人保険のご相談をお受けしています。
ご相談で大切にしているのは、商品の話の前に、守りたい人の話を伺うことです。
社長の万一の保障で守りたいのは、会社の存続と、ご家族に借金を背負わせないこと。そして、社長ご自身の役員退職金をしっかり受け取っていただくことです。
自分に何かあったその時、そしてその後も、従業員や家族がずっと安心して暮らせる未来。解約や払済みの判断も、この軸に照らして考えます。
「解約するか、続けるか」の二択ではなく、守りたいものを残しながら出口を選ぶ。その整理をお手伝いするのが、筆者の役割です。
法人保険の解約返戻金と税金|仕組みと損益の考え方
解約返戻金は、保険料の一部が積み立てられたお金で、受け取った会社では益金になります。
解約返戻金が積み立てられていく仕組み
保険料は、万一の保障にあてる部分と、事務などにあてる部分、将来に備えて積み立てる部分で成り立っています。
種類によって、積み立ての大きさは違います。積み立てがほとんど生じない保険もあります。
積み立てられた部分をもとに、解約したときに契約者へ払われるのが、解約返戻金です。
金額は、経過した年数や契約の種類で変わります。毎年、同じペースで増えるとは限りません。
契約の初期は少なく、ある時期から増えていく設計もあれば、途中から減っていく設計もあります。
だからこそ、いまの解約返戻金は、契約ごとの設計書で確認する必要があります。
解約返戻金が保障の額より少なく見える理由
解約返戻金が保障より少なく見えるのは、二つのお金が別の役割を持っているからです。
| 比べるもの | 役割 | 金額の動き |
| 万一の際の保険金 | 会社や家族が困らないよう、その時に備える | 契約で決めた額が、保障の期間中ずっと備わる |
| 解約返戻金 | 解約したときに戻る、積み立て部分 | 経過年数や種類で増えたり、減ったりする |
保障は、「何かあったときに間に合うこと」が価値です。貯蓄は、「使えるお金として手元に残ること」が価値です。
比べる物差しが違うため、金額だけを並べると、保障の側が大きく、返戻金の側が小さく見えます。
見えている差は、そのまま損失を表すものではありません。保障のために払った部分と、積み立てた部分の違いです。
ただし、解約すると保障は終わります。万一の備えを別の形で用意しないまま解約すると、保障の空白が生まれます。
金額の大小で考えるより、「この保障は、まだ必要か」「返戻金は、何に使うのか」で考えると、判断が整います。
解約返戻金の益金算入と、資産計上額との差額
法人が受け取る保険金や解約返戻金は、益金として扱われます(法人税法第22条第2項)。
一方、これまで資産に計上してきた保険料(保険積立金)は、解約のときに取り崩します。
会社の損益になるのは、受け取った解約返戻金と、資産計上額の差額です。
| 状況 | 会社の損益の考え方 |
| 解約返戻金が、資産計上額を超えるとき | 超えた部分が、その事業年度の利益に加わる |
| 解約返戻金が、資産計上額に満たないとき | 満たない部分が、その事業年度の損失になる |
帳簿では、解約返戻金が雑収入などの科目で処理されることがあります。ただし、科目や仕訳は、会社の経理の方針によって異なります。
大切なのは、受け取る金額そのものより、資産計上額との差額がその年の損益にどう響くかです。
差額が大きいと、その事業年度の法人税の負担も変わります。決算の見通しと、あわせて確認したい点です。
資産計上の区分や取崩しの数字は、法人保険の経理処理と損金算入のルールで扱っています。
損金・益金の詳細は、契約の内容によって異なります。個別のご相談でご説明します。
法人保険の出口の選択肢|解約・減額・払済み・名義変更・継続の比較
出口は解約だけではなく、保障を残す選択肢が複数あります。
五つの出口を比べる
| 選択肢 | 内容 | 保障の行方 | 確認したい点 |
| 解約 | 契約を終了し、解約返戻金を受け取る | 保障は終わる | 益金と資産計上額の差額。保障の空白への備え |
| 減額 | 保障の額を小さくして、続ける | 保障は小さくなる | 減額した部分の返戻金の扱いと、保険料の変化 |
| 払済み | 保険料の払込みをやめ、その時点の解約返戻金をもとに保障を続ける | 保障は残るが、額や期間は変わる | 変更時の益金または損金。保険の種類 |
| 名義変更 | 契約者を会社から役員などへ変える | 保障は引き継がれる | 権利の評価と、受け取る側の課税 |
| そのまま継続 | 今の契約を続ける | 保障は続く | 保険料の負担と、会社の資金繰り |
どれが正解という話ではありません。保障が必要か、資金が必要か、会社の状況はどうかで、選ぶ道が変わります。
解約と、減額・払済みは、似ているようで性格が違います。前者は保障を終える選択、後者は保障の形を変えて残す選択です。
払済保険への変更と、法人税の扱い
払済みは、保険料の払込みをやめ、そのときの解約返戻金をもとに、保障を続ける方法です。
保険料の負担を止めたい。でも、保障をすべては手放したくない。そうした場面で検討されます。
法人税の扱いは、法人税基本通達9-3-7の2に定められています。
原則は、変更したときの解約返戻金相当額と、資産計上額の差額を、変更した事業年度の益金または損金に算入するというものです(出所は国税庁)。
ただし、同種の払済保険への変更などには、例外があります。どちらに当てはまるかは、契約の種類や内容で変わります。
払済みにすると、保障の額や期間は、もとの契約と変わります。変更後の保障が、目的を満たすかも確認してください。
変更の前に、設計書と、税理士による確認が欠かせません。
解約のタイミングの考え方
法人保険の解約のタイミングは、「この時期がよい」と決められるものではありません。会社の状況を並べて、総合的に考えます。
| 見るもの | 考える内容 |
| 決算期 | 解約返戻金の益金が、どの事業年度の損益に入るか。決算の見通しと合わせる |
| 資金繰り | 返戻金が入る時期と、会社の支出の時期が合うか |
| 退職金の支払い | 役員退職金を支払う時期と、返戻金の受取りの時期をどう組み合わせるか |
| 保障の必要性 | 解約したあとの空白に、会社や家族が困らないか |
| 契約の経過年数 | 返戻金の動きが、設計書の上でどう変わっていくか |
とくに、役員の退職の前後は、退職金の支払いと返戻金の受取りが近づくことがあります。
返戻金を退職金の原資にするのか、保険は残して別の資金を使うのか。時期によって、会社の資金の余裕は変わります。
焦って解約すると、保障の空白や、想定外の損益が生まれることがあります。時期は、数字を並べてから決めれば間に合います。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。ご相談では、お持ちの契約の解約返戻金の動きと、出口の選択肢を、一緒に整理できます。
会社解散(清算)時の選択肢
会社を解散するときも、保険の出口は、解約・名義変更・保有の三つに整理できます。
清算に入る会社は、資産を整理し、債務を支払う必要があります。保険もその対象に含まれます。
| 選択肢 | 内容 | 会社側の考え方 | 確認したい点 |
| 解約して清算資金に充てる | 解約返戻金を受け取り、清算の資金にする | 益金と資産計上額の差額が、損益になる | 保障の空白と、清算の時期 |
| 役員へ名義変更する | 契約者を会社から役員へ変え、保障を引き継ぐ | 権利を支給したものとして、評価が必要 | 評価の方法と、役員側の課税 |
| そのまま保有する | 解散後も、契約を続ける形を検討する | 保険料の負担者や契約者を、誰にするか | 契約の継続の可否と手続き |
役員へ名義変更をする場合、権利の評価が論点になります。2021年に所得税基本通達36-37が改正されており、評価の考え方はこの改正を踏まえて確認します(出所は国税庁)。
改正の内容と、役員退職金との組み合わせは、役員退職金の準備と保険の名義変更で詳しく扱っています。
役員側の課税は、個別の事情で変わります。専門家にご確認ください。
解散には、会社法や登記の手続きも伴います。保険の出口も、その一部として、時間のあるうちに整理しておく方法があります。
出口を決めないまま解散の時期を迎えると、判断に使える時間が短くなります。
個別のご相談で整理できることと、向く会社・急がなくてよい会社
出口の判断は、会社の決算、資金繰り、退職金の予定が分かれば、整理しやすくなります。
ご相談の場では、解約返戻金と出口について、次の点をご一緒に整理していきます。
- お持ちの契約の解約返戻金の動きと、資産計上額の確認の進め方
- 解約・減額・払済み・名義変更・継続の、会社に合った比べ方
- 役員の退職や、会社解散を見据えた、出口の時期の整理
- 保障の空白を生まないための、備えの考え方
- 税理士に確認すべき点の洗い出し
損金・益金の詳細は、契約の内容によって異なります。個別のご相談でご説明します。
出口の整理が助けになるのは、たとえば次のような状況の会社です。
- 解約返戻金と、万一の際の保障の差に、迷いがある会社
- 役員の退職や、事業の承継を数年以内に見据えている会社
- 会社の解散や、事業の整理を考え始めている会社
- 保険料の負担が、資金繰りに重く感じられる会社
一方で、急がなくてよい場合もあります。
- 保障が、まだ目的に合っていて、資金繰りにも余裕がある会社
- 解約や変更の予定が、当面ない会社
税負担を軽くすることを目的に、保険に入ったり、やめたりするものではありません。守りたい人と、会社の事情から考えるものです。
ご不安を煽るつもりもありません。話を整理して、「今の契約を続ける」が答えになることもあります。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。ご相談では、解約・払済み・名義変更のそれぞれで、会社に何が起きるかを具体的に整理できます。
今日からできる、解約返戻金と出口の確認
最初の一歩は、手元の契約ごとに、解約返戻金と資産計上額を並べて見ることです。
次の順に確かめていくと、現状の整理が進みます。
- 保険証券と設計書の収集
- 契約ごとの、現在の解約返戻金の目安の確認
- 帳簿での、保険積立金の残高の確認
- 返戻金と積立金の差の、契約ごとの書き出し
- 役員の退職や解散の予定の、年表への書き込み
- 気になる点への印付けと、相談材料の整理
解約返戻金の目安は、保険会社への照会や設計書で確認できます。分からない点は、そのまま持ち寄ってください。
ここまで整理できれば、解約するかどうかの前に、「いつ、何のために使うお金か」が見えてきます。
解約や払済みの税務上の取扱いは、契約の種類や、手続きを行う時期で変わります。詳細は税理士等の専門家にご確認ください。
解約も払済みも、一度行うと、もとには戻せません。実行の前に、設計書と数字をそろえて確認することが、いちばんの備えになります。
全体の考え方は、法人保険の受取人と契約管理の全体像にまとめています。あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 解約返戻金が保障より少ないとき、解約すると損ですか
金額だけで、解約の良し悪しは決められません。保障と返戻金は、役割が違うお金だからです。
解約すると保障は終わります。保障がまだ必要なら、別の備えが要ります。「保障が必要か」「返戻金を何に使うか」の二つで考えてください。
Q. 解約返戻金を受け取ると、会社にどんな税金がかかりますか
解約返戻金は益金になります(法人税法第22条第2項)。資産計上していた保険積立金を取り崩し、差額が損益になります。
差額が利益になるのか損失になるのかは、契約ごとに違います。詳細は、個別のご相談でご説明します。
Q. 払済みにすると、税金はどうなりますか
原則として、変更時の解約返戻金相当額と資産計上額の差額を、その事業年度の益金または損金に算入します(法人税基本通達9-3-7の2)。
同種の払済保険への変更など、例外もあります。実行の前に、専門家へご確認ください。
Q. 役員の退職時に、保険はどうすればよいですか
主な選択肢は、解約して退職金の資金に充てる、役員へ名義変更する、会社で継続するの三つです。
名義変更では、権利の評価が論点になります。詳しくは、役員退職金と保険の名義変更の記事をご覧ください。
Q. 会社を解散するとき、保険はどう処分しますか
解約して清算の資金に充てる、役員へ名義変更する、そのまま保有する、といった選択肢があります。
役員側の課税は、個別の事情で変わります。時期と方法を、早めに専門家と整理してください。
売り込みはしません。お断りいただいて構いません。法人保険の解約返戻金と出口について、現状の整理をお手伝いします。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

