【見直し前に】逓増定期保険とは 契約の扱いを確かめる4つの方法
決算前の打ち合わせで、顧問税理士から「この逓増定期保険は、いつ入った契約ですか」と聞かれる場面を思い浮かべてください。
社長は、ずいぶん前に保険の担当者に勧められて入った契約だとは覚えています。ただ、契約した日付までは分かりません。証券を開いても、契約日の欄までは気にして見ておらず、損金や資産計上の扱いがどうなっているのかは読み取れません。経理担当者も、毎年の保険料を処理してきただけで、契約の中身までは説明できません。
逓増定期保険の相談では、「いまの契約が、いまのルールでどう扱われているのか分からない」という声を伺います。見直しを考える前に、まず契約の日付と、扱いの区分を確かめる必要があります。
この記事は、逓増定期保険を見直す前に確かめたい、契約の扱いを確かめる4つの方法を整理します。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
解約や乗り換えをお勧めする記事ではありません。いまの契約を落ち着いて読み解き、続けるか見直すかを自分で選べるようにするための記事です。
結論
- 逓増定期保険は、保険期間の経過とともに保険金額が増えていく定期保険です。見直し前に確かめることは4つあります。契約した日付、最高解約返戻率と区分、いまの保障額と必要額、出口の時期です。
- 2019年(令和元年)7月8日以後の契約は、最高解約返戻率による区分で損金算入と資産計上を判断します。それより前の契約には、従前の取扱いが適用されます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
- 保障を削りすぎれば万一の備えが不足し、続けすぎれば保険料が資金繰りを圧迫します。税務の個別判断は税理士の領域です。
この記事で分かること
- 逓増定期保険の仕組みと、見直し前に確かめる4つの方法
- 契約の扱いが分からなくなりやすい背景
- 最高解約返戻率の区分の読み方
- 今週できる証券の棚卸し3ステップ
- 見直しで起きやすい失敗の場面
1. 逓増定期保険とは 契約の扱いを確かめる4つの方法
逓増定期保険の見直し前に、確かめる方法は4つあります。日付、区分、保障額、出口の順に見ていきます。
1-1. 方法その1:契約した日付を確かめる
最初に確かめるのは、契約した日付です。2019年(令和元年)7月8日以後の契約は、法人税基本通達9-3-5の2に基づき、最高解約返戻率に応じた区分で、保険料の損金算入と資産計上を判断します。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
それより前の契約には、従前の取扱いが適用されます。同じ逓増定期保険でも、契約した日付によって、損金にできる範囲や資産計上の期間が違う場合があります。
契約日は、保険証券の契約日の欄で確かめます。更新や契約内容の変更をしている場合は、変更の日付も確かめます。
1-2. 方法その2:最高解約返戻率と区分を確かめる
2019年7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率で区分を決めます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
区分は4つです。最高解約返戻率が50%を超えない、50%を超え70%まで、70%を超え85%まで、85%を超える、の4つです。区分ごとに、資産計上の割合と期間が定められています。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
最高解約返戻率は、保険期間を通じて、解約返戻金が支払った保険料の累計に対して最も高くなる時点の割合です。数値は、保険会社が出す資料で確かめます。
年換算保険料相当額(保険料の総額を保険期間の年数で割った額)が30万円を超えない契約は、最高解約返戻率が70%を超えない場合に限り、この区分の対象外の扱いがあります。70%を超える契約は、年換算保険料相当額にかかわらず区分の対象です。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
1-3. 方法その3:いまの保障額と、万一のときの必要額を比べる
逓増定期保険は、保険期間の経過とともに保険金額が増えます。契約した当時の保障額と、いまの保障額は違います。
確かめるのは、いまの保障額が、社長に万一があったときに会社が必要とする資金に足りているか、足りすぎていないかです。借入金の返済、従業員の給与、取引先への支払いなどを書き出し、保障額と並べます。必要額の出し方は、社長の必要保障額 会社の万一資金を出す4つのポイントで整理しています。
1-4. 方法その4:出口の時期と選択肢を確かめる
逓増定期保険の解約返戻金は、保険期間の途中で大きくなり、満了に向かって小さくなる傾向があります。契約によって異なります。
どの時期に解約返戻金が最も大きくなるのか、解約・減額・払済・継続のそれぞれでどうなるのかは、保険会社の資料で確かめます。違いの整理は、法人保険の解約・払済・減額 違いを整理する4つの判断軸でも解説しています。
要するに、見直し前に確かめるのは、契約した日付、最高解約返戻率と区分、いまの保障額と必要額、出口の時期の4つです。
2. 逓増定期保険の契約の扱いが分からなくなりやすい背景
扱いが分からなくなる背景には、契約から年月がたつこと、相談先が分かれること、書類が散らばることがあります。代表的なものを3つ挙げます。
2-1. 契約から年月がたち、経緯を知る人がいなくなる
契約したときの経緯は、保険の担当者と社長の間でだけ共有されていることがあります。担当者が異動や退職をし、社長も細部を覚えていないと、契約の目的が誰にも説明できなくなります。
2-2. 税理士と保険担当者で相談先が分かれている
損金や資産計上の扱いは顧問税理士、保障額や解約返戻金は保険の担当者と、相談先が分かれています。両者が同じ契約を同じ資料で見ていないと、ずれが生まれます。
相談先の役割分担は、法人保険の相談先 税理士と担当者の役割分担 3つのポイントでも整理しています。
2-3. 証券や設計書が見つからない
設計書や、区分の根拠になる資料が、社長の自宅や前任の担当者の手元に残っていることがあります。会社の書類の中では、証券だけが見つかる状態になりがちです。
証券には、契約日、保険期間、保険金額、保険料は載っていても、最高解約返戻率は載っていないことがあります。その場合は、保険会社に資料を請求します。
要するに、扱いが分からなくなるのは、経緯を知る人がいなくなること、相談先が分かれていること、必要な資料が散らばっていることが重なるためです。
3. 最高解約返戻率の区分の読み方と、見直しの選択肢
区分の読み方と、見直しの選択肢は、この2つを並べて考えます。区分によって、保険料の経理の考え方が変わるためです。
3-1. 区分ごとの考え方
2019年7月8日以後の契約について、区分ごとの考え方を整理します。割合や期間の細部は、国税庁のFAQで確かめます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
| 最高解約返戻率 | 保険料の考え方 |
| 50%を超えない | 期間の経過に応じて損金に算入する |
| 50%を超え70%まで | 保険期間の前半の一定期間、保険料の一部を資産に計上する |
| 70%を超え85%まで | 前半の一定期間、保険料のより大きな割合を資産に計上する |
| 85%を超える | ほかの区分とは別の計算で、資産計上の割合と期間を決める |
資産に計上した保険料は、その年の費用にならず、区分に応じた時期から取り崩して損金にします。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
3-2. 見直しの選択肢
見直しの選択肢は、継続、減額、払済、解約の4つです。どれが良いかは、会社の資金の状況と、保障の必要額で決まります。
継続は、保障と保険料の負担が続きます。減額と払済は、保険料の負担を軽くできる一方で、保障も小さくなります。解約は、解約返戻金が入る一方で、保障がなくなります。
解約すると、法人税法第22条第2項により、解約返戻金は益金になります。資産に計上している保険料は、法人税基本通達9-3-5の2に基づいて取り崩して損金にします。その差額が、その期の損益に出ます。(出所:国税庁)解約の期に損益が偏る場合があるため、時期は税理士と相談して決めます。
ここで触れた税務は、いずれも一般的な考え方です。個別の損金の判断、申告、経理処理の確定は、税理士の領域です。
要するに、区分で保険料の経理の考え方が変わります。継続、減額、払済、解約の選択肢は、保障の必要額と資金の状況で選びます。
ここまでで、逓増定期保険の契約の扱いを確かめる流れを解説しました。制度の全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
【まるっと解説】法人保険の見直し 全体像を整理する5つの手順
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。証券の内容を一緒に読み解くところから始めます。
\無料相談(30秒で予約)/
4. FP1級が見る逓増定期保険の点検項目
専門家と点検する価値は、保障の話と税務の話を、同じ契約で並べて見られることです。社内では、この2つが別々に進みやすいためです。
4-1. 書類で確かめる4つの項目
- 保険証券の契約日、保険期間、保険金額、保険料
- 保険会社の資料にある最高解約返戻率と、解約返戻金の推移
- 決算書にある保険積立金の残高
- 契約の目的が書かれた設計書や稟議書、取締役会の議事録
この4つを、契約ごとに1枚の表にまとめます。契約日、区分、保障額、解約返戻金、積立金の残高が並ぶと、いまの扱いが見えやすくなります。
表は、社長、経理担当者、顧問税理士の三者で共有します。社長が自分の保険を判断する立場にもなるため、第三者の目で確かめる場を作ります。
4-2. 経営者・税理士・保険担当者の役割
| 立場 | 主に見ること |
| 経営者 | 契約の目的と、続けるか見直すかの最終判断 |
| 顧問税理士 | 区分に応じた保険料の経理、解約時の損益 |
| 保険担当者・FP | 最高解約返戻率、解約返戻金の推移、保障の過不足 |
4-3. 筆者が大切にしていること
筆者は、更新で保険料が上がる相談に来られた方に、背景を伺う前に「そこまでの保障は必要ない」とお伝えして、納得いただけなかった経験があります。後になって、その方に守りたい理由があったと知り、自分の未熟さを恥じました。
以来、保険の話の前に、守りたい人のお話を伺っています。見直したほうがよい場合も、そのままのほうがよい場合も、正直にお伝えします。
要するに、点検は、証券、最高解約返戻率の資料、積立金の残高、契約の目的が分かる書類の4つで進めます。
5. 今週できる証券の棚卸し3ステップと、失敗の場面
今週できる一歩は3つです。どれも、解約や乗り換えを決める前にできます。あわせて、見直しで起きやすい失敗を3つの場面で整理します。
5-1. 今週中にできる3ステップ
- 逓増定期保険の証券を取り出し、契約日、保険期間、保険金額、保険料を書き出す
- 保険の担当者に、最高解約返戻率と、解約返戻金の推移の資料を依頼する
- 決算書の保険積立金の残高を確かめ、顧問税理士に区分を確認する
この3つで、契約の扱いが見えてきます。続けるか見直すかは、顧問税理士と保険担当者と相談して決めます。
5-2. 契約の日付を確かめずに見直し、扱いを取り違える場面
たとえば、社長が、最近の説明で聞いた区分の考え方を、古い契約にもそのまま当てはめて、見直しを考えたとします。
決算の打合せで、税理士に契約日を聞かれて証券を確かめた経理担当者は、契約日が2019年7月8日より前だと気づきます。契約日が2019年7月8日より前なら従前の取扱いが適用され、最高解約返戻率の区分で見込んだ解約時の益金と取り崩す金額の数字が、実際の扱いと違ってきます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)社長は見直しを決める前に契約日を確かめ、経理担当者は証券の契約日を税理士に伝えます。
5-3. 保険料を払い続け、資金繰りが重くなる場面
たとえば、社長が、退職金の原資にするつもりで逓増定期保険を払い続け、減額や払済は検討していないとします。
決算の打合せで、経理担当者が保険積立金の残高と、保険会社の資料の解約返戻金の推移を並べると、解約返戻金が小さくなり始めている一方で、毎期の保険料が借入金の返済と並んで支払いを重くしていると分かります。保険料を払うたびに会社の手元資金が減り、退職金の原資に回せる金額も小さくなります。社長は、勇退の時期と返戻金の推移を並べ、続けるか、出口を決めるかを税理士と保険担当者に相談します。
5-4. 保険料を軽くしようと解約して、保障の空白が生まれる場面
たとえば、保険料が重いと感じた社長が、逓増定期保険をすべて解約したとします。
解約返戻金は入ります。しかし、金融機関との面談の前に、経理担当者が借入金の返済予定表と見比べると、社長に万一があったときに借入金の返済と従業員の給与を支える保険金が、会社に入らなくなっていると気づきます。保険金が会社に入らないため、借入金の返済と従業員の給与は、手元の資金だけでまかなうことになります。社長は解約する前に、保障を全部なくすのか、減額や払済で一部を残すのかを、万一のあとに必要な資金から決めます。
要するに、日付を確かめずに見直せば扱いを取り違え、払い続ければ保険料が重くなり、解約しすぎれば保障の空白が生まれます。続けすぎも削りすぎも避けて、確かめてから決めます。
6. 逓増定期保険のよくある質問
Q1. 逓増定期保険とは、どのような保険ですか。
保険期間の経過とともに、保険金額が増えていく定期保険です。保険料は一定の契約が多く、解約返戻金は途中で大きくなり、満了に向かって小さくなる傾向があります。契約によって異なります。
Q2. 保険料は、全部を損金にできますか。
一概には言えません。2019年(令和元年)7月8日以後の契約は、最高解約返戻率に応じた区分で、保険料の一部を資産に計上する場合があります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)それより前の契約は、従前の取扱いです。個別の判断は、税理士の領域です。
Q3. 契約日が2019年7月より前でも、新しいルールは関係ありますか。
2019年7月8日より前の契約には、従前の取扱いが適用されます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)ただし、契約の内容を変更した場合などは、扱いが変わることがあります。契約の履歴を保険会社と税理士に確認します。
Q4. 最高解約返戻率は、どこで分かりますか。
保険証券に載っていないことがあります。保険会社が出す資料や設計書で確かめます。見つからなければ、保険会社に資料を請求します。
Q5. 解約したほうがよいでしょうか。
解約をお勧めするものではありません。解約は、解約返戻金が益金になり、保障もなくなります。続ける、減額する、払済にする、解約するの選択肢を並べて、保障の必要額と資金の状況から決めます。
Q6. 見直しは、誰に相談すればよいですか。
税務の個別判断は税理士、保障額や解約返戻金は保険の担当者です。経営者が両者に同じ資料を渡して、同じ契約を同じ目線で見てもらうと、ずれを減らせます。
7. まとめ|逓増定期保険は、日付・区分・保障額・出口の順に確かめる
- 逓増定期保険の見直し前に確かめるのは、契約した日付、最高解約返戻率と区分、いまの保障額と必要額、出口の時期の4つです。
- 2019年7月8日以後の契約は、最高解約返戻率の区分で損金算入と資産計上を判断します。それより前の契約は、従前の取扱いです。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
- 続けすぎれば保険料が資金繰りを圧迫し、削りすぎれば保障の空白が生まれます。
- 税務の個別判断は税理士の領域です。経営者・税理士・保険担当者で同じ資料を見ます。
筆者は、保険は会社と大切な人を守る道具のひとつだと考えています。必要なものを、必要な分だけ。見直したほうがよい場合も、そのままのほうがよい場合も、正直にお伝えします。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。証券と資料を見ながら、契約の扱いを一緒に整理します。
\無料相談(30秒で予約)/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

