契約から長い年月がたった法人保険の保険証券を、決算の打合せで経理担当者が社長の前に広げる場面を思い浮かべてください。

たとえば、社長が創業期に、保険期間の長い定期保険に入ったとします。当時は借入金の備えと、将来の役員退職金の原資を兼ねるつもりでした。年月がたち、会社の借入の状況も、社長の考えも変わりました。経理担当者は「保険期間があと何年も残っています。このまま続けるのか、見直せるのか、どこに聞けばよいのでしょうか」と尋ねますが、社長にも契約当時の細かい条件は思い出せません。

この記事では、長期平準定期保険を契約している会社が、途中で見直せるのかを、見直しがずれる理由、後回しになる背景、4つの選択肢と確認の順番、失敗の場面で整理します。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。

解約や乗り換えをお勧めする記事ではありません。いまの契約が会社の目的と合っているかを点検するための記事です。

結論

  • 長期平準定期保険は、契約の途中でも見直せる場合があります。ただし、可否と条件は契約と約款で決まるため、証券で契約日を確かめたうえで、保険会社に確かめます。
  • 見直しの選択肢は、継続、減額、払済や延長、解約の4つです。選ぶ前に、契約日、保険の目的、解約返戻金と保険積立金の関係を確かめ、そのうえで保険会社と顧問税理士に確認します。
  • 削りすぎれば万一の保障や退職金の原資が足りなくなり、残しすぎれば保険料が資金繰りを圧迫します。税務の個別判断は税理士の領域です。

この記事で分かること

  • 長期平準定期保険の見直しが、後回しになりやすい3つの理由
  • 契約日の違いで、税務上の扱いが変わる背景
  • 継続、減額、払済・延長、解約の4つの選択肢の比較
  • FP1級が見る点検項目と、削りすぎ・残しすぎの失敗の場面
タップできる目次

1. 長期平準定期保険を見直さないまま持ち続けて起きる3つのずれ

長期平準定期保険は、保険期間が長いため、見直さないまま持ち続けると、3つのずれが起きやすくなります。

1-1. 契約当時の目的と、いまの会社の事情がずれる

長期平準定期保険は、社長の万一の保障と、将来の役員退職金の原資の両方を目的に契約されることがあります。ただし、目的は契約した時点の事情です。借入金が減った、後継者に社長が交代する、従業員が増えた、といった変化があると、保険金額が合わなくなります。

たとえば、社長交代の後、経理担当者が証券を見て、被保険者が前社長のままだと気づいたとします。会社の保障として何を守りたいのか、決め直す必要が生まれます。

1-2. 契約日で、税務上の扱いが異なる

法人保険の税務上の扱いは、2019年(令和元年)通達改正の前後で変わっています。2019年7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて(年換算保険料の額などによる例外もあります)保険料の一部が資産に計上されます(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)。

2019年7月8日以後の契約は、長期平準定期保険という名前ではなく、最高解約返戻率で資産計上の有無や割合が決まります。それより前の契約には、改正前の長期平準定期保険の取扱いが残ります。同じ「長期平準定期保険」と呼ばれる契約でも、2019年の通達改正の前か後かで、決算書の資産計上の動きが異なります。契約日を証券で確かめることが、見直しの前提です。

1-3. 解約返戻金と保険積立金の関係が、見えなくなる

長期平準定期保険は、保険期間を通じて保険料が同じ水準で続く型です。解約返戻金は、契約の途中までは積み上がり、その後は小さくなっていく形になる契約があります(仕組みと額は契約ごとに異なります)。満了の前の数年は、払済や延長で変えられる幅が小さくなる場合があります。満了まで何年残っているかを証券で確かめ、早めに保険会社に条件を聞きます。決算書の保険積立金の額とも、解約返戻金は一致するとは限りません。

たとえば、経理担当者が、解約返戻金の見込額と保険積立金の額を並べたとします。差があるとき、その差が解約したときの損益に表れます。差の大きさを知らないまま判断すると、決算で驚くことになります。

要するに、目的のずれ、契約日による税務上の扱いの違い、解約返戻金と保険積立金の関係の見えにくさの3つが、見直しを難しくします。

2. 長期平準定期保険の見直しが後回しになる経営者の背景

後回しになる背景には、契約の長さ、保険料の慣れ、確かめる相手の多さがあります。代表的なものを3つ挙げます。

2-1. 保険期間が長く、急ぐ理由がない

保険期間が長い契約は、満了までまだ遠いため、見直しを急ぐ理由が見つかりにくくなります。毎年の決算の打合せでも、他の議題が先に来ます。

2-2. 保険料が固定費として当たり前になっている

同じ保険料を長く払い続けていると、金額が当たり前になります。借入の状況や売上が変わっても、保険料は据え置きのまま、会社の負担の中での比重だけが変わります。

2-3. 税務、保険会社、金融機関と、確かめる相手が多い

見直しを考えると、税務の扱いは顧問税理士、契約の条件は保険会社、質権が付いていれば金融機関と、確かめる相手が増えます。この手間が重なり、決算が過ぎて先送りになります。

相談先の役割分担は、法人保険の相談先 税理士と担当者の役割分担 3つのポイントでも整理しています。

要するに、急ぐ理由が見えにくいこと、保険料に慣れること、確かめる相手が多いことが、見直しを後回しにさせます。

3. 長期平準定期保険を途中で見直す4つの選択肢と、確かめる4つの順番

見直しの選択肢は4つで、確かめる順番も4つです。どれが良いかは、会社の目的によって変わります。まず次の表で、選択肢の特徴を比べます。

選択肢 内容 注意点
継続 契約を変えずに続ける 目的が終わっていれば、保険料だけが続く
減額 保険金額を小さくし、保険料の負担を軽くする 減額した部分は一部解約と同じ扱いになり、その部分の解約返戻金と保険積立金の差額が損益に出ることがある(契約と約款で異なる)。万一の保険金も小さくなる
払済・延長 払済は、以後の保険料の払込をやめ、その時点の解約返戻金を元に、保険期間は同じで保険金額が小さい保険に変える。延長は、保険料の払込をやめ、保険金額は同じで保険期間が短い定期保険に変える(可否と内容は契約と約款で異なる) 払済は保険金額が、延長は保険期間が変わる。税務上の処理は税理士に確認する
解約 契約を終わらせ、解約返戻金を受け取る 保障がなくなる。保険積立金との差額が損益に出る。入り直すには告知が必要

3-1. 確認その1:契約日と保険期間を証券で確かめる

最初に、契約日、保険期間、被保険者、受取人を証券で確かめます。2019年の通達改正の前の契約か後の契約かで、税務上の扱いが変わるため、決算書の資産計上の動きを読むときの前提になります。

3-2. 確認その2:保険の目的をいま決め直す

その契約が、いま何のためにあるのかを決め直します。借入金の備え、役員退職金の原資、従業員の生活を守る資金など、目的は1つとは限りません。目的が続いているなら、保険金額の全部を減らす必要はありません。

たとえば、借入金の備えは終わっていても、役員退職金の原資という目的が残っているなら、その部分は残す方向で考えます。目的が終わった部分だけを、減額や払済、解約の検討に回します。目的ごとに必要な額を分けて書くと、削りすぎも残しすぎも避けやすくなります。

3-3. 確認その3:保険会社に見直しの可否と条件を聞く

減額、払済、延長ができるか、できるとしたらどの条件か、手続きに必要な書類は何かを、保険会社や担当者に聞きます。商品や契約の時期で、可否と条件が異なります。

見直しの手順の全体像は、法人保険の解約・払済・減額 違いを整理する4つの判断軸でも解説しています。

3-4. 確認その4:顧問税理士に、損益と経理処理を確認する

見直しによって、保険積立金の取崩しや、解約返戻金との差額が損益に出る場合があります。税務の個別判断、申告、経理処理は税理士の領域です。見直しを決める前に、決算期のどこで処理されるかを聞いておきます。

要するに、契約日と保険期間を確かめ、目的を決め直し、保険会社に可否を聞き、税理士に損益を確認する順に進めます。

この記事では要点に絞って解説しました。見直しの全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。

【まるっと解説】法人保険の見直し 全体像を整理する5つの手順

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4. FP1級が見る長期平準定期保険の点検項目

FP1級の筆者が最初に見るのは、保険料の額よりも、契約の目的と契約日です。点検項目は次の4つです。

4-1. 契約日と保険期間

2019年の通達改正の前か後かで、税務上の扱いが異なります。保険期間の満了がいつか、更新型かどうかも確認します。

4-2. 被保険者と受取人

被保険者が前社長のままになっていないか、受取人が会社になっているかを確かめます。受取人が役員個人や遺族になっている場合は、保険料の経理処理や課税関係が変わるため、顧問税理士に確認します。

4-3. 解約返戻金の見込額と、保険積立金の額

保険会社の資料で、現時点の解約返戻金の見込額を確かめ、決算書の保険積立金と並べます。差が損益に出る可能性を把握しておけば、見直しの時期を決算に合わせて考えられます。

4-4. 保険料の負担と、会社の資金繰り

毎年の保険料が、会社のキャッシュフローの中でどの程度の比重かを確かめます。資金繰りに無理があるなら、払込方法や金額を動かせるかを検討します。

4つを確かめたら、結果を1枚の紙にまとめます。契約日、保険期間、被保険者、受取人、保険の目的、解約返戻金の見込額、保険積立金の額、毎年の保険料の8つを並べるだけで、社長と経理担当者、顧問税理士が同じ前提で話せます。

たとえば、経理担当者がこの紙を用意して決算の打合せに持参したとします。社長は、契約当時の事情を思い出しやすくなり、税理士は、損益に出る時期を具体的に確認できます。口頭の記憶に頼らないことが、見直しを前に進める近道です。

要するに、点検の中心は、契約日と期間、被保険者と受取人、解約返戻金と保険積立金、資金繰りの4つです。紙に8項目を並べて共有します。

5. 長期平準定期保険の見直しで起きやすい失敗の場面と、今週できる一歩

失敗は、削りすぎと残しすぎの両面で起きます。誰が、いつ、何を間違えるかを、場面で確認します。

5-1. 目的を確かめずに、社長が解約を指示する

たとえば、保険料の負担が重いと感じた社長が、経理担当者に解約を指示したとします。実は、その契約は、数年後に予定していた役員退職金の原資も兼ねていました。解約返戻金は手元に入りますが、万一の保障も退職金の原資も同時になくなります。入り直そうとしても、年齢や健康状態によっては、同じ条件では入れない場合があります。

解約の前に、契約の目的を書き出し、減額や払済で足りないかを確かめます。

5-2. 解約の時期が決算と重なり、損益が大きく動く

たとえば、期末の直前に解約したとします。解約返戻金と保険積立金の差額が、その期の損益に出ます。差額が益になれば税負担が増え、損になれば利益が減ります。経理担当者が事前に税理士に確認していなかったため、納税額と資金繰りの見込みが狂います。

解約や減額の時期は、決算期を見ながら、顧問税理士と先に相談します。

5-3. 何も動かさず、保険料だけが続く

反対に、たとえば、社長が借入金の備えが終わったと知りながら、保険料の払込を毎年続けたとします。経理担当者は資金繰り表で保険料の月を見ていますが、契約を動かす権限はありません。売上が落ちた年の返済月に資金が足りなくなり、慌てて解約を検討すると、5-2と同じ決算期のずれが起きます。

残しすぎも失敗です。年に一度は、契約の目的と保険料の負担を点検します。

5-4. 払済や延長を、元の保障と同じと考えてしまう

たとえば、社長が、払済にしたので保障は同じまま保険料がなくなると思ったとします。実際には、払済は保険金額が小さくなり、延長は保険期間が短くなります。万一のときの保険金が想定より小さく、借入金の備えに足りないと気づくのは、その時です。

払済や延長を選ぶ前に、変更後の保障の内容を、書面で確かめます。

5-5. 今週できる3ステップ

今週できるのは、次の3つです。

  1. 保険証券で、契約日、保険期間、被保険者、受取人を確かめる
  2. 保険の目的を、紙に書き出す
  3. 顧問税理士に、保険積立金の内訳と、見直し時の経理処理を確認する

要するに、解約を急がず、放置もせず、契約日と目的を確かめてから、選択肢を比べます。

6. 長期平準定期保険の見直しのよくある質問

Q1. 長期平準定期保険は、途中で解約できますか。

解約はできますが、保障がなくなり、解約返戻金と保険積立金の差額が損益に出ます。解約の前に、目的と他の選択肢を確かめます。入り直す場合は、健康状態の告知が必要で、年齢によっては同じ条件では入れないことがあります。

Q2. 減額すると、保険料はどうなりますか。

一般に、保険金額が小さくなれば、保険料も小さくなります。ただし、減額した部分は一部解約と同じ扱いになり、その部分の解約返戻金と保険積立金の差額が損益に出ることがあります。扱いは契約と約款で異なるため、税理士に確認します。

Q3. 払済にすると、保障はそのまま続きますか。

払済は保険金額が小さくなり、延長は保険期間が短くなります。保障がそのまま続くわけではありません。契約と約款で可否が異なるため、変更後の内容を保険会社に書面で確かめます。

Q4. 2019年の通達改正は、いつの契約に関係しますか。

2019年(令和元年)7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて(年換算保険料の額などによる例外もあります)保険料の一部を資産に計上します(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)。それより前の契約は取扱いが異なるため、契約日を証券で確かめます。

Q5. 被保険者が前社長のままです。変更できますか。

被保険者を変えられるかは、契約と約款で異なります。変更できない場合は、新しく契約し直すことになります。新しく契約し直す場合、健康状態の告知が必要です(出所:保険法第37条)。税務の扱いも含め、顧問税理士と担当者に確かめます。

Q6. 見直しは、いつ相談するのがよいですか。

決算の前に、損益への影響を税理士と確認できる時期が適しています。社長交代、借入金の増減、役員退職金の予定が決まったときも、点検のきっかけになります。

7. まとめ|長期平準定期保険は、契約日と目的を確かめてから見直す

この記事のまとめ
  • 長期平準定期保険は、途中で見直せる場合があります。可否と条件は契約と約款で決まるため、保険会社に確かめます。
  • 選択肢は継続、減額、払済・延長、解約の4つです。先に契約日、保険の目的、解約返戻金と保険積立金の関係を確かめます。
  • 削りすぎれば万一の保障や退職金の原資が足りず、残しすぎれば保険料が資金繰りを圧迫します。
  • 税務の個別判断は税理士の領域です。解約や減額の時期は、決算期を見て先に相談します。

筆者は、保険は会社と大切な人を守る道具のひとつだと考えています。必要なものを、必要な分だけ。減らしたほうがよい場合も、残したほうがよい場合も、正直にお伝えします。

筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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