【2026年版】法人保険の契約者と受取人 課税が変わる3つの理由
決算の打ち合わせで、顧問税理士から「この保険の受取人は、どなたの設定ですか」と聞かれ、社長が証券を探し始める場面を思い浮かべてください。
契約したのは何年も前です。会社の保険のつもりでいたものの、契約者が誰で、保険金を受け取るのが誰なのか、はっきり答えられません。担当者に電話して確認することになり、経理の処理も止まってしまいます。
法人保険の相談では、「契約者・被保険者・受取人の組み合わせで、税金の扱いが変わると聞いたが、どう整理すればよいのか」という声を伺います。三者の設定は、保険料の経理にも、保険金を受け取るときの課税にも関わります。
この記事は、法人保険の三者の組み合わせで課税の扱いが変わる理由と、見直すときの確かめ方を整理します。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
加入や乗り換えをお勧めする記事ではありません。いまの契約の設定が、会社の目的と合っているかを点検するための記事です。
結論
- 法人保険の課税の扱いは、契約者・被保険者・受取人の組み合わせで変わります。三者の役割の違い、保険料の経理、保険金を受け取るときの課税の3点に関わるためです。
- 確かめる順番は、会社が守りたい対象、三者の設定、税務上の区分の順です。税負担の軽減を目的に設定を決めることはお勧めしません。
- 受取人の設定を誤ると保障の空白が、設定を直すために契約を重ねると資金繰りの圧迫が生まれます。税務の個別判断は税理士の領域です。
この記事で分かること
- 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで課税が変わる3つの理由
- 三者の設定が加入当時のまま残る経営者の背景
- 代表的な3つの組み合わせと、それぞれの課税上の見方
- 今週できる契約の三者の棚卸し3ステップ
- 設定の誤りや重ねすぎで起きる失敗の場面
1. 法人保険の契約者と受取人の設定で課税が変わる3つの理由
課税の扱いが変わる理由は、大きく3つあります。三者の役割の違い、保険料の経理、保険金を受け取るときの課税の3つです。
1-1. 契約者・被保険者・受取人の役割が違う
契約者は、保険料を払い、契約を続けるか解約するかを決める人です。被保険者は、保険の対象になる人です。受取人は、保険金を受け取る人です。
法人保険では、会社が契約者になり、役員や従業員が被保険者になるのが一般的です。受取人を会社にするか、被保険者の遺族にするかで、課税の扱いが分かれます。
1-2. 保険料の経理の扱いが変わる
会社が契約者で、役員や従業員が被保険者の定期保険は、受取人が会社でも被保険者の遺族でも、保険料を期間の経過に応じて損金に算入するのが原則です。ただし、受取人が被保険者の遺族で、役員や部課長など特定の使用人だけを被保険者としているときは、その保険料は本人への給与になります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5)
さらに、2019年(令和元年)7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて保険料の一部を資産に計上します。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)受取人の設定や区分によって扱いが異なる場合があるため、個別の処理は税理士に確認します。
1-3. 保険金を受け取るときの課税が変わる
会社が受取人になって保険金を受け取ると、その保険金は法人の収益として益金に算入します。(出所:国税庁、法人税法第22条第2項)資産に計上していた保険料があれば、その取り崩しは損金になります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
受取人が遺族の場合は、受け取る人側に別の課税関係が生じます。どの税金になるかは、契約の内容と受け取る人の立場で変わるため、税理士への確認が欠かせません。
要するに、課税が変わるのは、三者の役割が違い、保険料の経理と保険金を受け取るときの課税が、受取人の設定で分かれるためです。
2. 法人保険の三者の設定が加入当時のまま残る経営者の背景
設定が見直されない背景には、書面の見えにくさと、相談先の分かれ方があります。代表的なものを3つ挙げます。
2-1. 加入した目的が書面に残っていない
保険証券には、契約者・被保険者・受取人の名前は書かれていても、「なぜこの設定にしたのか」は書かれていません。担当者の説明を聞いて加入しても、その目的が社内に残らないことは少なくありません。
社長が交代すると、設定の理由を知る人がいなくなります。
2-2. 担当者に任せきりになる
契約の手続きは保険の担当者が進めるため、経営者は設定の細部を確かめないまま署名することがあります。三者の設定は、保険の担当者が決めるものではなく、会社の目的から経営者が決めるものです。
2-3. 税務と契約の相談先が分かれている
税務は顧問税理士、契約内容は保険の担当者と、相談先が分かれています。両者が会社の全体像を共有していないと、三者の設定と経理処理のずれに誰も気づきません。
三者の役割分担は、法人保険の相談先 税理士と担当者の役割分担でも整理しています。
要するに、設定が残るのは、目的が書面に残らないこと、担当者任せ、相談先の分かれ方が重なるためです。
3. 法人保険の代表的な3つの組み合わせと課税の見方
代表的な組み合わせは、受取人の設定で3つに分けて考えられます。どれが合うかは、会社の目的で決まります。
3-1. パターン1:契約者も受取人も会社
会社が保険料を払い、保険金を受け取るのも会社です。社長の万一に備える事業保障など、会社に資金が必要な目的で使われます。
保険金は会社の益金になり、会社の運転資金や借入金の返済に充てられます。社長の遺族への支払いは、別に規程を整えて、死亡退職金などとして会社から支払う形になります。
3-2. パターン2:契約者は会社、受取人は被保険者の遺族
会社が保険料を払い、保険金は被保険者の遺族が受け取ります。従業員全員を対象にした福利厚生の定期保険で使われる形です。
役員や特定の使用人だけを被保険者にすると、保険料が給与として扱われます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5)加入範囲を決めてから設定します。
3-3. パターン3:契約者が役員個人、または受取人が役員個人
契約者が個人で、会社が保険料を負担する形や、受取人が役員個人になる形は、役員への給与として扱われる場合があります。法人保険の本来の目的である会社の備えとは、合わない設定です。
受取人が役員個人の場合の詳しい扱いは、法人保険の受取人が役員個人だと給与扱い?3つの注意点で整理しています。
| 組み合わせ | 主な目的 | 確かめる点 |
| 契約者・受取人とも会社 | 事業保障、役員退職金の準備 | 保険金が益金になること。使い道と規程の整備 |
| 契約者は会社、受取人は遺族 | 従業員の福利厚生 | 加入範囲。特定の人だけなら給与の扱い |
| 契約者または受取人が役員個人 | 会社の備えには向かない | 給与として扱われる場合がある。税理士へ確認 |
ここで触れた税務は、いずれも一般的な考え方です。個別の損金・給与の判断、申告、経理処理の確定は、税理士の領域です。
要するに、会社が受取人なら会社の資金に、遺族が受取人なら福利厚生に、個人の設定なら給与の扱いに注意が必要になります。
この記事では要点に絞って解説しました。制度の全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
【まるっと解説】法人保険の見直し 全体像を整理する5つの手順
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4. FP1級が見る契約者・被保険者・受取人の点検項目
専門家と点検する価値は、会社の目的と三者の設定を、同じ机で並べて見られることです。経営者が一人で見ると、どちらかが抜けやすくなります。
4-1. 証券で確かめる4つの項目
- 契約者が会社になっているか(個人になっていないか)
- 被保険者が、いまの会社で備えたい人になっているか
- 受取人が、契約の目的と合っているか
- 契約した時期が2019年7月8日の前か後か(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
この4つを、契約ごとに書き出します。契約が複数あるときは、受取人ごとに保険金額の合計も出します。
4-2. 経営者・税理士・保険担当者の役割
| 立場 | 主に見ること |
| 経営者 | 守りたい対象と、契約の目的。最終の判断 |
| 顧問税理士 | 保険料の損金・給与の判断、保険金受取時の経理処理 |
| 保険担当者・FP | 契約内容、三者の設定を変える手続き、保障の過不足 |
4-3. 筆者が大切にしていること
筆者は、契約を決める社長ご本人と、最初から向き合うことを大切にしています。かつて、奥さまとプランを決め、あとから社長ご本人も納得された案件で、別の説明を受けたことで行き違いが生まれ、契約が白紙になったことがありました。
契約者・被保険者・受取人という三者の設定も、決める社長ご本人が目的を理解して決めることが前提です。設定を変えないほうが合う会社には、正直にそうお伝えします。
要するに、点検は、証券の確認、三者の役割分担、決める社長ご本人との合意の3つで進めます。
5. 今週できる三者の棚卸し3ステップと、設定で起きる失敗
今週できる一歩は3つです。どれも、契約を変えずにできます。あわせて、設定で起きやすい失敗を3つの場面で整理します。
5-1. 今週中にできる3ステップ
- 保険証券を集めて、契約者・被保険者・受取人・保険金額・契約時期を1枚の表にする
- 契約ごとに、会社の目的(事業保障・退職金・福利厚生など)を一言で書き添える
- 目的と受取人が合っていない契約、契約者が個人になっている契約に印を付ける
この3つで、目的と設定のずれが見えてきます。変えるかどうかは、その後に税理士と相談して決めます。
5-2. 受取人が遺族のまま、会社に保険金が入らない場面
たとえば、社長が「会社の万一への備え」のつもりで加入した契約の受取人が、実は社長の遺族になっていたとします。
決算の打ち合わせで税理士に尋ねられ、証券を開いて初めて、受取人が遺族のままだと分かりました。社長に万一があったとき、保険金は遺族へ入ります。一方で、銀行への借入金の返済や、取引先への支払い、従業員の給与は会社が負います。受取人が遺族のままだと、社長の万一のあとに会社の運転資金と借入金の返済に使える保険金が会社に入りません。受取人を遺族にすること自体が誤りなのではなく、会社の備えという目的と設定がずれていることが問題です。会社の備えのつもりで加入した契約は、受取人を最初に確かめます。
5-3. 設定を整えるつもりで契約を重ね、保険料が二重になる場面
たとえば、社長が「受取人を会社にし直したい」と考え、新しい契約を追加で結んだとします。古い契約はそのまま残しておきました。
次の決算前に、経理担当者が資金繰り表を作ると、新旧両方の保険料が毎月引き落とされ、固定費が増えています。売上の波がある年は、保険料の引き落としが資金繰りの重荷になります。設定を直すために契約を重ねると、保険料が二重に積み上がり、資金繰りを圧迫します。新しい契約を結ぶ前に、既存契約で受取人や被保険者を変更できるかを保険担当者に確かめ、経理担当者は合計の保険料を資金繰り表に重ねて社長に報告します。
5-4. 社長ご本人の合意がないまま設定を決める場面
たとえば、経理担当者と保険担当者が相談して、受取人の変更書類を整え、社長には事後に報告したとします。
社長は目的を理解しないまま署名し、後日、税理士から「この設定の理由は」と聞かれても答えられません。設定を戻そうとしても、受取人の変更には被保険者の同意が要る契約があり、手続きがやり直しになります。(出所:保険法第45条)その間は、保障が目的に合わないままです。決める社長ご本人の合意がないまま三者の設定を変えると、手続きがやり直しになり、経営者は設定の理由を説明できないまま決算を迎えます。設定を変える前に、社長ご本人が目的を説明できる状態にします。
要するに、受取人の設定を誤れば保障の空白が、契約を重ねれば資金繰りの圧迫が生まれます。社長ご本人の合意を先に取ります。
6. 法人保険の契約者・被保険者・受取人のよくある質問
Q1. 法人保険の受取人は、会社にしたほうがよいですか。
目的で決まります。社長の万一に備えて会社に資金が必要な事業保障なら、受取人を会社にする考え方が合います。従業員の福利厚生で遺族に支払う目的なら、受取人を遺族にする形があります。
Q2. 契約者を社長個人にして、会社が保険料を払ってもよいですか。
契約者が個人で会社が保険料を負担する形は、役員への給与として扱われる場合があります。会社の備えとしての法人保険の目的とは合わないため、設定の前に顧問税理士へ確認します。
Q3. 保険金を会社が受け取ると、税金はかかりますか。
会社が受け取った保険金は、法人の収益として益金に算入します。(出所:国税庁、法人税法第22条第2項)資産に計上していた保険料があれば、取り崩して損金にします。個別の計算は、税理士の領域です。
Q4. 役員だけを被保険者にして、受取人を遺族にしてもよいですか。
定期保険の場合、受取人が遺族で、役員や特定の使用人だけを被保険者とするときは、保険料がその人への給与として扱われます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5)事前に顧問税理士に確認します。
Q5. 受取人や被保険者を後から変更できますか。
契約によって、変更できる場合とできない場合があります。被保険者を別の人にする場合は新しい契約になることが多く、本人の同意が必要です。(出所:保険法第38条)受取人の変更にも、被保険者の同意が要る契約があります。(出所:保険法第45条)変更の可否や手続きは、保険の担当者に確認します。
Q6. 2019年の通達改正は、三者の設定に関係しますか。
設定そのものよりも、保険料の経理の区分に関わります。2019年(令和元年)7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、最高解約返戻率が50%を超えるものは、区分に応じて保険料の一部を資産に計上します。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)個別の判断は、税理士の領域です。
7. まとめ|法人保険の三者は、会社の目的から決める
- 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで、保険料の経理と保険金を受け取るときの課税の扱いが分かれます。
- 代表的な組み合わせは、契約者・受取人とも会社、受取人が遺族、個人の設定の3つです。目的に合う形を選びます。
- 受取人の設定を誤れば保障の空白が、契約を重ねれば保険料が資金繰りを圧迫します。決める社長ご本人の合意を先に取ります。
- 税務の個別判断は税理士の領域です。経営者・税理士・保険担当者の三者で全体を見ます。
筆者は、保険は会社と大切な人を守る道具のひとつだと考えています。必要なものを、必要な分だけ。守りたい人のお話を、設定の話より先に伺います。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
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