会社には借入金がある。その借入に、社長ご自身が連帯保証をしている。

もしも社長が他界したら、その借金はどうなるのでしょうか。

そして、後を継ぐ人がいない会社なら、なおさら不安は大きくなります。

この記事では、社長が他界したときの会社の借金と連帯保証を軸に、家族に借金を背負わせないための考え方を整理します。

事業保障の保険の位置づけ、必要保障額の考え方、後継者不在の会社が取れる選択肢までを、順に見ていきます。

契約者・被保険者・受取人の意味や、保険金が遺族へ届く道筋は、法人保険の受取人と契約管理のまとめ記事で解説しています。この記事では、借入金と会社の存続に絞ります。

社長が他界した後の会社の借金と連帯保証への恐怖

社長の万一の際、いちばん重くのしかかるのは、会社の借入金と連帯保証です。保険の種類より先に、この不安の中身を言葉にしておきましょう。

経営者の方からは、次のようなお声をいただきます。

  • 自分に何かあったら、会社の借金は家族に回るのかという恐怖
  • 連帯保証をしている借入が、そのまま妻や子に引き継がれないかという心配
  • 後継者がいないので、会社を誰が続けるのか見通せないという焦り
  • 従業員の雇用と取引先への責任を、どう果たせばよいかという重圧

どれも、会社の経営者として当然の悩みです。

ところが、この悩みは先送りにされがちです。元気なうちは、考えたくない話だからです。

先送りしている間にも、借入の残高も会社の事情も動いていきます。

社長の万一は、突然やってきます。そのとき、慌てるのは会社ではなく、残されたご家族と従業員です。

会社の資金繰りは、社長ひとりの判断と信用で回っていることが少なくありません。

その社長がいなくなれば、取引先や金融機関の見る目も変わります。

一方で、ご家族は会社の数字を詳しく知らないことが多いものです。

借入がいくらあるのか、誰が保証しているのか。それを知らないまま、突然の手続きに向き合うことになります。

不安の正体は、金額の大きさより、何がどう引き継がれるのかが見えていないことにあります。

次の章から、順を追って整理します。

家族に借金を背負わせたくない|筆者の視点と建築業の社長の奥様

決めるのは保険の中身ではなく、守りたい人は誰かという順序です。筆者がそう考えるようになった体験を、一つお話しします。

筆者より

筆者のまつもとは、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)です。大学卒業後、大手生命保険代理店に8年勤め、現在は保険募集人として、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)で法人保険のご相談をお受けしています。

建築業の社長の奥様との出会い

ある建築業の社長の奥様が、保険料が更新で上がる前に見直したいと、ご来店されました。会社には借入がありました。奥様と一緒に、治療費、生活費、そして借入まで含めてプランを組み、社長にもご説明して、契約に進みました。ところが、別の方のご説明を耳にされたことで行き違いが生まれ、契約は取り消しとなりました。この出来事から得た教訓は、プランの出来より前に、実際に決める本人の信頼を最初に得ることでした。

借入のある会社の備えは、数字の話だけでは決まりません。

だからこそ、筆者は保険の話の前に、守りたい人の話から伺います。

社長の万一の備えで守りたいものは、次の二つです。

  • 会社の存続と、従業員の暮らし
  • 社長のご家族に、借金を背負わせないこと

もう一つの軸は、社長ご自身の役員退職金を、しっかり受け取っていただくことです。

役員退職金の考え方は、役員退職金の準備と保険の名義変更で詳しく解説しています。

自分に何かあったその時、そしてその後も、従業員や家族がずっと安心して暮らせる未来。その整理を一緒に進めるのが、筆者の役割です。

社長の他界で連帯保証はどうなるか|借入金の相続と経営者保証ガイドライン

借入金や連帯保証の債務は、相続の対象になり得ます。まずは、民法が何を定めているかを確認しましょう。

民法が定める相続と、承認・放棄の期限

相続人は、亡くなった方の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法第896条)。

財産だけでなく、借金のような義務も含まれます。連帯保証債務も、相続の対象になり得ます。

相続を承認するか放棄するかは、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に判断します(民法第915条)。

この3か月は、葬儀や会社の手続きで慌ただしい時期と重なります。

借入の全体像を知らないまま、期限だけが進んでしまうおそれがあります。

整理すると、場面ごとの論点は次のとおりです。

場面 何が起こり得るか 事前に整理したいこと
会社の借入金 社長が会社の代表として借りた債務は、会社の債務です。ただし、社長が連帯保証をしていれば、保証債務が別に生じます 借入先ごとの残高と、保証の有無の一覧
社長個人の連帯保証 保証債務は、相続の対象になり得ます(民法第896条) 誰が、どの借入を保証しているかの確認
相続の承認・放棄 自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に判断します(民法第915条) 期限を踏まえた、相談先と手順の把握
会社の運営 社長が不在になり、資金繰りや取引先の対応が止まるおそれがあります 代わりに判断する人と、手元資金の確保

借入金の返済そのものは、会社の事業から行うのが基本です。

ところが、連帯保証がついていると、会社が返せなくなったときの矛先が、保証人に向かいます。

その保証人が他界すれば、保証の債務は相続人に及び得る、ということです。

ご家族に借金を背負わせないための備えは、この一点から逆算して考えます。

経営者保証に関するガイドラインの考え方

経営者の個人保証については、公的な指針があります。

経営者保証に関するガイドラインです。中小企業庁と金融庁が関わり、2013年12月に策定されました。

法人と経営者の関係の明確な区分などを前提に、経営者保証に依存しない融資を促す考え方を示しています。

ただし、個別の金融機関との間でどのような結果になるかは、会社ごとに異なります。この記事では、結果をお約束することはできません。

ガイドラインは、保証を外すための魔法ではなく、金融機関と話し合うときの共通の物差しです。

借入の更新や借換えのタイミングで、保証の扱いを一度、金融機関に相談してみる価値はあります。

そのとき、会社の財務の状況を整え、会社と社長個人のお金を区分しておくことが土台になります。

保険金は会社の益金になる

事業保障として会社が保険をかけ、受取人を会社にした場合、保険金は会社に入ります。

この保険金は、会社の法人税の計算で益金に入ります(法人税法第22条第2項)。

資産計上してきた保険料(保険積立金)は、保険金を受け取るときに取り崩し、差額が損益になります(出所は国税庁)。

つまり、入ってきた保険金の全額が、そのまま借入の返済に使える手元資金になるとは限りません。

税金の扱いは、契約の種類や経理の状況で変わります。個別のご相談で、具体的にご説明します。

個人の保険との違いや、法人で備える必要があるかどうかは、個人の保険との違いと、法人保険が必要かの判断で整理しています。

事業保障の保険と必要保障額|法人の備えを積み上げで考える

事業保障の保険は、会社の存続のために、必要な額を積み上げて決めます。勘や、周りの会社の例で決めるものではありません。

事業保障の保険が担う役割

事業保障の保険とは、社長の万一の際に、会社の資金を確保するための保険です。

目的は、会社の存続と、従業員の雇用と、ご家族に借金を回さないこと。この三つです。

保険金で、借入金の返済、当面の固定費、後任が立つまでの運営費をまかなう、という考え方になります。

役割をはっきりさせると、「何のためにいくら必要か」が見えてきます。

必要保障額の考え方

必要保障額は、法人の場合、次のように考えます。

会社に必要なお金を積み上げ、そこから手元にあるお金を差し引くという方法です。

項目 中身 考え方のポイント
借入金 金融機関からの借入、役員借入など 社長が連帯保証をしているものを、まず洗い出す
固定費 家賃、人件費、リース料など 後任が立つまでの期間を、何か月分見込むか
後任の費用 後任の採用、育成、引継ぎの費用 外部から迎える場合と、社内で育てる場合で異なる
その他の支払い 取引先への支払い、役員退職金など 資金が必要な時期と、規程の整備状況を確認する
差し引くもの 手元の預金、回収できる売掛金など 自由に使える資金だけを数える

計算の形は、必要な資金の合計から、手元資金を差し引くことです。

この記事では、具体的な金額の例は挙げません。会社ごとに、借入も費用も異なるからです。

大切なのは、保険の保障額から逆算しないことです。会社の状況から積み上げて、足りない分を考えます。

保険で備える額が、実際の必要額より大きくても小さくても、困るのは社長のご家族と従業員です。

次の点も、あわせて確認しておくと安心です。

  • 借入金の返済スケジュールと、残高の見通し
  • 保証人の欄に、社長以外の家族の名前がないか
  • 手元資金のうち、すぐに動かせるお金の額
  • 決算の時期と、資金繰りが苦しくなる時期
  • 役員退職金の支給の考え方と、規程の有無

借入が減れば、必要な保障も減ります。事業が伸びて借入が増えれば、必要な保障も増えます。

一度決めたら終わり、ではありません。決算のたびに、数字を見直す習慣が役に立ちます。

後継者不在の会社が、社長の万一のあとに取る選択肢

後継者がいない会社でも、社長の万一のあとに取れる道は、いくつかあります。ただし、どの道も、事前の準備があって初めて選べます。

後継者不在の会社と保険の役割

後継者不在の会社では、保険は「会社を続けるための資金」と「会社を閉じるための資金」の、どちらにも使えます。

先に方針を決めるのではなく、選択肢を並べてみることから始めます。

選択肢 内容 借入金・保証との関係 事前に整理したいこと
会社を続ける 社内の人や親族が代表に就き、事業を続ける 借入は会社が引き続き返済する。保証の扱いは、金融機関との相談になる 代表を任せられる人と、そのための資金
事業を引き継ぐ 事業の全部または一部を、他の人や会社に引き継ぐ 借入の扱いは、引継ぎの形で変わる 引継ぎ先の候補と、従業員・取引先への説明
会社を閉じる(廃業) 事業をやめ、会社の資産で借入を返す 返済で不足が出れば、連帯保証をしている人に話が及ぶ可能性がある 資産と借入の差、整理に必要な費用と時間

どの選択肢にも、メリットと負担があります。

どれが正解、という話ではありません。社長ご自身の思いと、ご家族の意向、従業員の暮らしから選びます。

後継者不在の会社の保険は、選択肢の幅を広げるためのものです。

資金があれば、ゆっくり考える時間が生まれます。資金がなければ、選択肢は狭まります。

今のうちにできる三つの準備

  1. 会社の借入と、社長の連帯保証の一覧を作る
  2. 万一のとき、代わりに判断する人を決めておく
  3. ご家族に、会社の借入と保証の現状を話しておく

ご家族への共有は、費用のかからない備えの一つです。

何がどこにあるのかを知っているだけで、手続きの負担は軽くなります。

保険は、その一つです。保険だけで、すべてが解決するわけではありません。

備えは、借入の整理、保証の相談、規程の整備と組み合わせて、はじめて形になります。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。ご相談では、借入と保証の洗い出しと、必要保障額の積み上げを、一緒に整理できます。

万一の備えを整理する

社長の万一に備える事業保障の相談|整理できること・向く会社・最初の一歩

相談の目的は、保険を決めることではなく、守りたいものの優先順位を決めることです。

個別のご相談で整理できること

  • 借入金と連帯保証の一覧づくり
  • 必要保障額の積み上げと、手元資金の確認
  • 受取人の指定と、遺族へ届く道筋の確認
  • 後継者不在の場合の、続ける・引き継ぐ・閉じるの整理
  • 役員退職金の準備と、規程の整備状況

損金に関わる詳細は、借入や契約の内容を伺ってからご説明します。

向く会社と、急がなくてよい会社

借入と保証の状況を整理しておく意義が大きいのは、次のような会社です。

  • 社長が連帯保証をしている借入がある会社
  • 後継者がまだ決まっていない会社
  • ご家族が会社の借入の状況を知らない会社
  • 万一の際に代わりに判断する人が決まっていない会社

反対に、急がなくてよい会社もあります。

  • 借入がなく、手元資金が十分にある会社
  • 後継者が決まり、引継ぎの準備が進んでいる会社
  • すでに、借入と保証の一覧があり、定期的に見直している会社

加入を急ぐ必要はありません。借入と保証の現状を知るだけでも、次の判断がしやすくなります。

税金を抑える目的で保険に入ることは、お勧めしていません。備えの額は、会社の借入と守りたい人から決めます。

不安を煽るつもりもありません。洗い出した結果、現状で足りていると分かる場合もあります。

今日からできる、借入金と連帯保証の確認

最初の一歩は、会社の借入と連帯保証を、一枚の紙に書き出すことです。特別な知識は要りません。

次の手順で書き出すと、短時間で借入の全体像が見えてきます。

  1. 借入先ごとに、借入の残高と返済期限を書き出す
  2. それぞれの借入に、保証人がいるかを確認する
  3. 社長個人の連帯保証になっているものに、印を付ける
  4. 手元資金と、毎月の固定費を並べる
  5. 分からない点を、相談の材料にする

金融機関の契約書類や、決算書があれば、一覧づくりはぐっと楽になります。

空欄が残っても構いません。空欄のままお持ちいただければ、そこから一緒に調べます。

相続や税務の扱いは、会社の状況や契約の内容で変わります。詳細は税理士等の専門家にご確認ください。

一覧ができたら、ご家族にも共有しておくと、万一のあとの手続きの見通しが立てやすくなります。

保険の話の前に、守りたい人の話を。この記事も、その順で進めてきました。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。借入と連帯保証の一覧づくりから、お話を始められます。

借入の現状を相談する

よくある質問

Q. 社長が他界したら、会社の借金は家族が返すことになりますか

会社の借入は、会社の債務です。ただし、社長が連帯保証をしている場合、その保証債務は相続の対象になり得ます(民法第896条)。

相続の承認か放棄かは、相続の開始を知った時から3か月以内に判断します(民法第915条)。まず、借入と保証の一覧を作っておくことをお勧めします。

Q. 連帯保証は、金融機関に相談すれば外せますか

経営者保証に関するガイドラインは、経営者保証に依存しない融資を促す考え方を示しています。中小企業庁と金融庁が、2013年12月に策定しました。

ただし、個別の金融機関との結果は、会社の状況によって異なります。この記事で、外せるとお約束することはできません。

Q. 事業保障の保険金で、借金は全額返せますか

保険金の額と、借入の残高によります。また、法人が受け取る保険金は益金として扱われます(法人税法第22条第2項)。

受け取った額が、そのまま手元資金になるとは限りません。必要保障額は、借入金・固定費・後任の費用を積み上げ、手元資金を差し引いて考えます。

Q. 後継者がいない会社は、保険に入っても意味がありませんか

意味がないわけではありません。保険は、会社を続ける場合にも、事業を引き継ぐ場合にも、閉じる場合にも、資金面の選択肢を広げます。

どの道を選ぶかは、社長のお考えと、ご家族の意向、従業員の暮らしによります。法人で備える必要があるかは、法人保険が必要かの判断も参考になります。

Q. 社長個人の保険と法人の保険は、どう使い分けますか

個人の保険は、ご家族の生活費に備えるもの。法人の保険は、会社の借入や運営費に備えるもの、と分けると整理しやすくなります。

違いの詳細は、個人の保険との違いと必要・不要の判断で解説しています。受取人や契約管理は、まとめ記事をご覧ください。

売り込みはしません。お断りいただいて構いません。借入金、連帯保証、必要保障額について、現状の整理をお手伝いします。

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