【社長の備え】加入中の福利厚生プランを見直す3つのチェック項目
4月に新入社員が3人入社した翌月、経理担当者が社長に声をかけます。「社長、先輩たちが入っている福利厚生のプラン、新人さんの分はどうしますか。手続きをしていませんでした」。社長は一瞬考えて、「ああ、そうだった。誰が対象なのか、決まりをもう一度見ておこう」と答えます。
すでに福利厚生のプランに加入している会社ほど、「入っているから、あとは任せている」という状態になりやすいものです。人が入れ替わり、会社の状況が変わっても、プランの中身はそのままということがあります。
この記事では、加入中の福利厚生プランを、規程・周知・公平性・同意の観点から見直す方法を解説します。特定の保険会社の手続きは扱わず、社内の決まりと伝え方に絞ります。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
この記事で分かること
- 加入中のプランで、見直しが必要になる3つのきっかけ
- 見直しが後回しになる理由
- 規程・周知・同意を軸にした3つのチェック項目
- 退職金の財源を加えて制度を充実させるときの考え方
結論
- 加入中のプランは、新入社員の追加や退職者の発生で、対象と実態がずれていくことがあります。
- 見直しの軸は、規程に書いてあるか、従業員に伝わっているか、対象者の線引きが公平か、の3つです。
- 退職金の財源を加えるかは、見直しで空白が分かってから考えます。個別の税務判断は税理士の領域です。
1. 加入中の福利厚生プランに、見直しが必要になる3つのきっかけ
見直しのきっかけは、人の入れ替わり・制度の変更・会社の成長の3つです。
1-1. 新入社員や中途入社の人が加わったとき
たとえば、毎年春に新入社員が入る会社で、プランへの追加加入の手続きが担当者の記憶に頼っていたとします。
忙しい時期に手続きが漏れると、同期入社なのに加入している人としていない人が出ます。あとから気づいても、経緯の説明に時間がかかります。
1-2. 退職者や役職の変更があったとき
たとえば、加入者が退職したあと、その人の分の扱いが決まっていなかったとします。
給付の受け取りや、契約の整理について、社内の誰が何を決めるのかが曖昧になります。担当者が動けず、時間だけが過ぎます。
1-3. 会社の規模や事業が変わったとき
たとえば、拠点が増えて従業員が倍になったとします。プランを作った当時の前提が、すでに合わなくなっています。
対象者の範囲、保障の水準、費用の負担の仕方を、現在の会社の姿で見直す時期です。
要するに、新入社員・退職者・会社の成長のどれもが、プランと実態のずれを生みます。
2. 福利厚生プランの見直しが後回しになる理由
後回しになる理由は、「困っていないから」という感覚と、誰の仕事かが決まっていないことの2つです。
2-1. 動いている間は、問題が表に出ない
プランは、事故や退職などが起きて初めて、中身が問われます。
平時は保険料の引き落としが続くだけなので、対象者の抜けや、規程との食い違いが目に入りません。
2-2. 担当が決まっていない
プランを導入した当時の社長や担当者がすでにいない会社もあります。
たとえば、導入の経緯を知る人が退職したとします。なぜ今の対象者になっているのか、誰も説明できなくなります。
見直しの担当と時期を決めておかないと、年度ごとの確認が行われません。
経緯が分からないまま続いているプランは、公平性を問われたときに説明が難しくなります。
要するに、平時は目立たず、担当も曖昧なため、見直しが後回しになります。
3. 加入中の福利厚生プランを見直す3つのチェック項目
チェック項目は、規程との整合・従業員への周知・公平性と同意の3つです。まず全体を表にまとめます。
| チェック項目 | 確かめること | 主な相談先 |
| 1. 規程との整合 | 対象者・給付・費用負担が、社内の規程に書かれているか | 社会保険労務士 |
| 2. 従業員への周知 | 新入社員を含め、内容と手続きが伝わっているか | 総務・経理担当 |
| 3. 公平性と同意 | 対象の線引きに理由があり、必要な同意を得ているか | 社会保険労務士・税理士 |
3-1. チェック項目1|規程と実態を並べる
最初に、プランの対象者を実際に書き出します。次に、社内の規程の記載と見比べます。
福利厚生として加入する場合、対象者の範囲に合理的な理由が必要です。養老保険を例にすると、普遍的加入などの要件があります。(出所:法人税基本通達9-3-4)
この通達を会社の状況に当てはめられるかは、個別の判断になります。顧問税理士に確認してください。
3-2. チェック項目2|従業員への周知を、入社時の流れに入れる
プランの存在が従業員に伝わっていなければ、福利厚生としての意味が薄れます。
入社時の説明資料に、プランの概要と窓口を載せておきます。新入社員の追加の手続きも、入社時のチェック表に組み込むと漏れにくくなります。
たとえば、入社手続きのチェック表に「福利厚生プランの案内」の欄を加えておくだけで、担当者が代わっても同じ手順で動けます。
3-3. チェック項目3|公平性を説明でき、同意が必要な場面を押さえる
対象者を役職や勤続年数で分けるなら、その理由を説明できる必要があります。
また、従業員の労働条件に関わる変更は、慎重に進めます。退職金の水準を引き下げるような変更は、原則として労働者の同意か、就業規則の変更の合理性が必要です。(出所:労働契約法第8条・第9条・第10条)
個別の判断は、社会保険労務士や弁護士の領域です。説明できる線引きと記録を用意しておけば、従業員の納得を得やすくなります。
3-4. 退職金の財源を加えるかどうかは、見直しのあとで考える
見直しを終えると、「退職金の備えが薄い」「特定の層に偏っている」といった空白が見えることがあります。
そのときに初めて、退職金の財源を加えて制度を充実させるかを考えます。先に商品を決めるのではなく、何を補いたいかを決める順番です。
手続きの細かな点は、加入時の書類や契約内容を確認して進めます。社内で決めておくべきことは、次の4つです。
- 対象者:誰を対象にするかと、線引きの理由を決めます。
- 目的:何を補いたいのかを一言で決めます。
- 費用負担:会社が負う範囲を、資金繰りと並べて決めます。
- 周知の方法:入社時の説明など、従業員に伝える流れを決めます。
この記事では要点に絞って解説しました。全体像から手順・注意点までまとめて知りたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
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要するに、規程・周知・公平性と同意の3つを見直したあとに、財源を加えるかを考えます。
4. 福利厚生プランの見直しで起きやすい失敗|放置と作りすぎ
見直しの失敗は、何もしない放置と、やりすぎの作りすぎの2方向に分かれます。
4-1. 見直さず、空白が生まれる場面
- たとえば、社長が「前の社長が決めたプランだから」と、そのまま続けたとします。いまの従業員構成に合わず、一部の人だけが守られる状態になります。
- たとえば、経理担当者が新入社員の追加を忘れたまま、1年が過ぎたとします。給付が必要になったとき、加入していなかったことが分かります。
- たとえば、規程を改めないまま対象者を広げたとします。社内の決まりと実態が食い違い、監査や調査で説明に窮します。
4-2. 制度を広げすぎて、負担が重くなる場面
- たとえば、社長が「全員に手厚くしたい」と、保障の水準を一度に引き上げたとします。会社の毎月の負担が増え、資金繰りに響きます。
- たとえば、一部の役員や管理職だけに上乗せを設けたとします。一般の従業員との差が目立ち、不公平感が生まれます。
- たとえば、従業員への説明を省いて内容を変更したとします。後日、従業員から異議が出て、変更をやり直す事態になります。
放置も作りすぎも、「何のための制度か」を共有せずに動いたことが共通の原因です。
要するに、目的を決めてから見直せば、放置も作りすぎも避けやすくなります。
5. 今週できる福利厚生プランの確認チェックリスト
今週のうちに、次の5つを確かめてみてください。
- プランの対象者を書き出し、社員名簿と見比べた
- 今年入社した人が、対象に入っているかを確かめた
- 就業規則や関連の規程に、プランの定めがあるかを見直した
- 入社時の説明資料に、プランの案内が入っているかを確認した
- 見直しの担当者と、年1回の確認の時期を決めた
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要するに、名簿と規程とプランを机に並べるだけで、ずれの多くが見つかります。
6. 加入中の福利厚生プランについてよくある質問
Q1. 新入社員を、あとからプランに加えることはできますか。
契約や制度の内容で異なります。具体的な手続きは、加入時の書類や契約内容で確認してください。社内では、対象者の範囲と規程を先に確認しておくとスムーズです。
Q2. 対象者を役職で分けても問題ありませんか。
線引きに合理的な理由があるかが大切です。普遍的加入などの要件が関わる場合もあります。(出所:法人税基本通達9-3-4)個別の判断は顧問税理士に確認してください。
Q3. 従業員にプランの内容を伝える義務はありますか。
退職金制度を設けるなら、就業規則への記載が必要です。(出所:労働基準法第89条第3号の2)それ以外の福利厚生も、内容を伝えておくほうが運用しやすくなります。個別の判断は社会保険労務士にご相談ください。
Q4. 内容を変更するとき、従業員の同意は必要ですか。
退職金の引下げは、原則として労働者の同意か、就業規則の変更の合理性が必要です。(出所:労働契約法第8条・第9条・第10条)変更の内容により扱いが異なるため、事前に社会保険労務士や弁護士に確認します。
Q5. 退職金の財源は、加えたほうがよいですか。
加えるべきとは言えません。まず現状の見直しで、備えが薄い部分があるかを確かめます。そのうえで、会社の資金繰りと従業員の納得を踏まえて考えます。
Q6. 見直しは、どのくらいの頻度で行えばよいですか。
決まった頻度はありません。年に1回の確認に加え、新入社員の入社や組織変更などのタイミングで見直すと、ずれが広がりにくくなります。
7. まとめ
- 加入中のプランは、人の入れ替わりや会社の成長で、実態とずれることがあります。
- チェック項目は、規程との整合・従業員への周知・公平性と同意の3つです。
- 退職金の財源を加えるかは、見直しで空白を確かめたあとに考えます。
- 税務の個別判断は税理士、労務の個別判断は社会保険労務士・弁護士の領域です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。いまのプランと規程をもとに、見直す順番を一緒に整理します。
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社長が守っているのは、ご家族だけではありません。毎日一緒に働く従業員と、そのご家族の暮らしも、社長の肩にかかっています。筆者はそう考えて、必要なものを、必要な分だけ整える相談を心がけています。
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
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