【まるっと解説】法人保険の見直し 全体像を整理する5つの手順
決算の時期に、社長が試算表を眺めながら、経理担当者に尋ねる場面があります。
「毎月の保険料は、いくら払っているのだろう。何のために入ったのだったか」。経理担当者は、引き落としの一覧を見ながら答えます。「契約が何本かあります。ただ、目的までは、私は分かりません」。
法人保険の相談では、このように「入った理由を、いまは説明できない」というお話をよくいただきます。
見直しは、解約や乗り換えから始めると失敗しやすい作業です。先に目的を言葉にし、証券を並べ、税務上の区分を確かめ、そのうえで手段を選ぶと、判断が落ち着いて進みます。
この記事では、法人保険の見直しの全体像を、5つの手順で解説します。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
結論
- 見直しは「目的の棚卸し」「証券の棚卸し」「税務上の区分の確認」「手段の判断」「交代後の確認と役割分担」の5つの手順で進めます。
- 先に解約しないことが大切です。削りすぎれば備えが足りなくなり、持ちすぎれば備えが重くなります。
- 2019年(令和元年)の通達改正後は、契約の内容によって損金算入と資産計上の区分が分かれます。個別の税務判断は税理士の領域です。
この記事で分かること
- 法人保険の4つの目的と、目的ごとに確かめること
- 保険証券の棚卸しで、過剰と不足を見える化する方法
- 2019年通達改正後の、損金算入と資産計上の区分の考え方
- 解約・払済・減額・乗り換えの判断軸と、よくある失敗場面
- 社長交代後の確認事項と、税理士・保険担当者・経営者の役割分担
1. 法人保険の見直しで最初に整理する4つの目的
見直しの出発点は、保険の種類ではなく目的です。法人保険の目的は、大きく4つに分けて考えると整理できます。
1-1. 目的を言葉にしないまま、保険料を払い続けている
法人保険は、勧められたときの事情で入ることが少なくありません。当時は理由があっても、数年たつと、社長にも経理担当者にも説明できなくなります。
目的が曖昧な契約は、見直しの基準がありません。続けるのか、減らすのか、やめるのかを、何をもとに決めるのかが定まらないからです。
たとえば、創業期に入った契約が、会社の規模が変わった今も、そのまま残っているとします。当時の借入金は完済しているのに、保険料は毎月引き落とされ続けます。経理担当者は、支払うたびに「これは何のための保険か」と引っかかりを覚えます。
見直しの最初の作業は、契約ごとに「何のために持っているか」を一言で書くことです。
1-2. 法人保険の4つの目的
法人保険の目的は、事業保障・役員退職金・福利厚生・承継や相続の資金の4つに整理できます。次の表で、目的ごとに確かめることを並べます。
| 目的 | 守りたいもの | 見直しで確かめること |
| 1. 事業保障 | 社長に万一があったときの、会社の資金繰りと従業員の雇用 | 借入金・運転資金・取引先への支払いに対して、保険金額が合っているか |
| 2. 役員退職金 | 社長や役員が退任するときの、退職金の原資 | 規程と決議の準備があるか、支給時期と原資の時期が合っているか |
| 3. 福利厚生 | 従業員とその家族の暮らし | 加入範囲と規程が整っているか、既存の制度と重なっていないか |
| 4. 承継や相続の資金 | 後継者と家族が、納税や分割で困らないこと | 受取人の指定と、死亡退職金などの支払いの準備ができているか |
1つの契約が、複数の目的を兼ねている場合もあります。その場合は、主な目的を1つ決め、ほかの目的は副次的なものとして書き分けます。
1-3. 目的ごとに、見直しの視点が変わる
事業保障が目的なら、見るのは保険金額と借入金の残高の関係です。残高が減っているのに保険金額が大きいままなら、備えが重くなっている可能性があります。反対に、事業が大きくなったのに保険金額が昔のままなら、備えが足りない可能性があります。この考え方は、社長の必要保障額の出し方で詳しく解説しています。
役員退職金が目的なら、見るのは退職の時期と、規程・決議の準備です。保険を積み立てても、支給の根拠となる規程がなければ、支払いの場面で止まります。規程の準備は、役員退職金の規程が整っていない場合の記事が参考になります。
福利厚生が目的なら、見るのは加入範囲と規程です。従業員の退職金は、退職金規程が未整備の場合の記事で、整える順番を解説しています。
承継や相続の資金が目的なら、見るのは受取人と、遺族への支払いの準備です。死亡退職金の考え方は、承継の場面での死亡退職金の準備で扱っています。
この記事は、4つの目的に共通する見直しの全体像を扱います。目的ごとの深掘りは、それぞれの記事に譲ります。
要するに、見直しは「この契約は何のためか」を4つの目的のどれかに結びつけるところから始まります。
2. 保険証券の棚卸しで過剰と不足を見える化する方法
目的が決まったら、次は保険証券を1枚の表に並べます。並べると、過剰な契約と不足している備えが、同時に見えてきます。
2-1. 証券の棚卸しは、1枚の一覧表にするところから始める
保険証券は、契約ごとに保険会社も、保管場所も、担当者も違うことがあります。1本ずつ眺めても、全体のバランスは見えません。
そこで、すべての契約を同じ項目で一覧表に書き出します。経理担当者が、引き落としの記録から契約の本数と保険料を拾い、社長が目的と被保険者を書き込むと、作業が早く進みます。
次の表が、一覧表に入れる項目の例です。
| 項目 | 書くこと | 主に分かること |
| 契約日 | 契約した年月日 | 2019年7月8日の前後か(税務上の扱いの出発点) |
| 保険の種類 | 定期保険・第三分野保険・養老保険・終身保険などの区分 | どの通達の区分に当たるかの手がかり |
| 契約者・被保険者・受取人 | 証券に記載された名義と氏名 | 前社長のままになっていないか、受取人が目的に合っているか |
| 保険料と払込期間 | 年間の保険料と、払い込みが終わる時期 | 資金繰りへの負担と、負担が続く期間 |
| 保障額と保障期間 | 万一のときの保険金額と、保障が続く期間 | 借入金や退職金の必要額に足りているか |
| 解約返戻金の状況 | 現時点の解約返戻金の額(保険会社に照会) | 解約・払済・減額を選んだときの、資金の動き |
| 目的 | 4つの目的のうち、どれか | 見直しの基準 |
解約返戻金の額は、証券だけでは分からないことがあります。契約している保険会社に、最新の状況を照会して書き込みます。
2-2. 過剰と不足を、目的ごとに見比べる
一覧表ができたら、目的ごとに保障額と必要額を並べます。
事業保障なら、借入金の残高と、会社として確保したい運転資金が、必要額を考える材料です。役員退職金なら、規程や社内の見込みから考えた支給額の見込みが必要額になります。必要額は会社ごとに違うため、具体的な数字は、顧問税理士や専門家と一緒に置きます。
並べたとき、次のような差が見つかることがあります。
- 過剰:必要額を大きく上回る保障や、同じ目的に重なっている契約。保険料の負担が資金繰りを圧迫している。
- 不足:必要額に届かない保障、期間が先に切れる保障、被保険者が現在の経営体制と合っていない契約。
- 適正:目的と必要額に対して、過不足が小さく、保険料の負担も無理がない契約。
この見比べは、判定を急ぐ作業ではありません。差を目で見えるようにして、次の手順で原因を確かめるための作業です。
2-3. 証券の棚卸しの進め方
棚卸しは、次の順番で進めると、抜けが出にくくなります。
- 引き落としを拾う:経理担当者が、通帳や会計ソフトから、保険料の引き落としをすべて拾います。
- 証券を集める:契約ごとの証券を、社長の手元や金庫、保険担当者から集めます。見当たらない場合は、保険会社に再発行を依頼します。
- 一覧表に書く:上の表の項目を埋めます。
- 目的を書き込む:社長が、契約ごとに目的を一言で書きます。書けない契約は、そのまま「目的不明」と記します。
- 差を並べる:目的ごとに、保障額と必要額を並べます。
「目的不明」の契約が出ても、慌てる必要はありません。見直しの優先順位が高い契約が、1つ見つかったということです。
既存の福利厚生の契約を点検したい場合は、福利厚生の既存プランの見直しの記事も参考になります。
要するに、証券を1枚の表に並べ、目的ごとに保障額と必要額を見比べると、過剰と不足が見えてきます。
3. 2019年通達改正後の損金算入と資産計上の区分
法人保険の保険料は、契約の内容によって、損金に算入する部分と資産に計上する部分に分かれます。2019年(令和元年)の通達改正で、区分の考え方が変わりました。
3-1. 保険料の扱いは、一律ではない
2019年(令和元年)の通達改正で、解約返戻率の高い定期保険・第三分野保険を中心に、保険料の扱いが見直されました。
「法人保険の保険料は、損金になる」という言い方は、一般論としては正確ではありません。契約の種類・保険期間・解約返戻率の水準・契約日によって、扱いが変わるからです。
損金算入と資産計上の区分は、契約ごとに確かめます。経理担当者が処理を行う前に、顧問税理士と共有しておきます。
3-2. 定期保険・第三分野保険の区分
最高解約返戻率とは、保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる時点の率のことです。
この率が50%を超える定期保険・第三分野保険については、水準に応じて、保険料の一部を当初の一定期間は資産に計上し、のちに取り崩す扱いになります。対象は、2019年7月8日以後に契約したものです。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)
2019年7月8日より前に契約したものは、従前の取扱いが残る場合があります。証券の契約日の確認が、出発点になります。
水準ごとの細かい区分や、資産計上する割合・期間は、通達に定められています。実際の処理は、契約の内容を確かめたうえで、顧問税理士が判断します。
3-3. 養老保険と、その他の契約の区分
養老保険は、別の通達で扱われます。受取人の組み合わせによって扱いが分かれ、福利厚生として損金算入するには、普遍的加入などの要件を満たす必要があります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-4)
全員を対象にしない加入や、特定の役員だけを対象にした加入は、扱いが変わることがあります。加入範囲の考え方は、養老保険を福利厚生に使うときの加入範囲の記事で解説しています。
次の表に、保険の種類ごとの扱いを整理します。
| 保険の種類 | 関係する通達 | 確かめること |
| 定期保険・第三分野保険 | 法人税基本通達9-3-5の2(2019年7月8日以後の契約が対象) | 50%超の最高解約返戻率か、保険期間、契約日 |
| 養老保険 | 法人税基本通達9-3-4 | 受取人の組み合わせ、普遍的加入などの要件 |
| 終身保険など、上の2つ以外 | 契約ごとに税理士が確認 | 保険料の経理処理と、保険金・解約返戻金を受け取ったときの処理 |
この表は、見直しの入口の整理です。個別の契約にどの区分が当たるかは、顧問税理士が証券と契約内容を見て判断します。
3-4. 解約返戻金や保険金を受け取るときの扱い
法人が受け取る死亡保険金や解約返戻金は、会社の収益として扱われます。(出所:法人税法第22条第2項)
資産に計上していた保険料があれば、受け取るときに取り崩し、差額がその期の損益に影響します。
つまり、保険料を資産に計上している契約では、解約したときに、その期の損益が動きます。解約の時期は、決算の見込みと合わせて、税理士と相談して決めます。
税務の個別判断・申告・経理処理の確定は、税理士の領域です。この記事の内容は、見直しの全体像をつかむための一般的な情報です。
この記事では、全体像に絞って解説しました。通達の区分をもう少し詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。まずは、加入中の保険証券の一覧と、契約日をお聞かせください。
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要するに、保険料の扱いは契約の種類と契約日で変わるため、証券ごとに区分を確かめ、判断は税理士に任せます。
4. 解約・払済・減額・乗り換えの判断軸と失敗場面
手段を選ぶ前に、守りたい目的と、動かしてよい資金を確かめます。解約・払済・減額・乗り換えの4つを、判断軸とあわせて整理します。
4-1. 4つの手段の違い
見直しの手段には、解約・払済・減額・乗り換えがあります。それぞれ、保障と資金の動きが違います。
| 手段 | 内容 | 留意点 |
| 解約 | 契約をやめて、解約返戻金を受け取る | 保障が全部なくなる。解約返戻金は会社の収益になる |
| 払済 | 保険料の払い込みを止め、保障は小さくして続ける | 保障額が小さくなる。商品によって、選べない場合がある |
| 減額 | 保障額を下げ、保険料の負担を軽くする | 減らした部分は保障がなくなる。減額部分に応じた返戻金の扱いは税理士に確認 |
| 乗り換え | 今の契約をやめ、新しい契約を結ぶ | 新契約で、健康状態の告知が改めて必要。保障の空白が生じうる |
どれが正解かは、目的と資金の状況で変わります。違いの詳しい整理は、解約・払済・減額の違いと判断軸の記事にまとめています。
4-2. 判断軸1|先に解約しない
見直しで最も多い失敗は、新しい契約が決まる前に、今の契約を解約してしまうことです。
解約した瞬間から、その契約の保障はなくなります。新しい契約が成立するまで、あるいは成立しなかった場合、社長は無保障の状態になります。
新しい備えが決まるまで、今の契約は動かさない。これが、見直しの最初の約束です。
乗り換えの具体的な手順と確認事項は、乗り換えで保障の空白を防ぐチェック項目で解説しています。
4-3. 判断軸2|告知と健康状態を確かめる
新しい生命保険に加入するときは、健康状態などについて告知します。年齢を重ねると、加入できる条件が変わることもあります。
生命保険の告知は、保険会社が尋ねた事項について答える義務です。(出所:保険法第37条)事実と違う告知があったとき、保険会社が契約を解除できるのは、故意または重大な過失があった場合が要件です。(出所:保険法第55条)
とはいえ、うっかりの記載漏れでも、あとで保険金の支払いの場面で争いになることは避けたいところです。告知は、事実のとおりに記載します。
健康状態に不安がある社長は、今の契約の価値が大きくなっていることがあります。新しい契約に入れる保証はありません。加入の可否は、保険会社の審査で決まります。
4-4. 判断軸3|保障の空白をつくらない
乗り換えでは、今の契約を終える日と、新しい契約の保障が始まる日の間に、空白が生じないようにします。
新しい契約は、申し込みから保障が始まるまでに、審査などの手続きがあります。保障が始まったことを確かめてから、今の契約の手続きを進めます。
また、払済や減額は、保障が小さくなる手段です。目的に対して、保障額が足りなくならないかを、先に必要額と見比べて確かめます。
4-5. 削りすぎで備えが足りなくなる3つの場面
保険料の負担を減らそうとして、削りすぎてしまう失敗があります。次の3つの場面が典型です。
- 場面1|借入金が残るのに、保障を小さくした:たとえば、社長が保険料の負担を減らそうと、数年前に保障額を大きく下げたとします。その後も借入金は残っています。経理担当者が借入金の返済予定表と証券を並べたとき、保障が残高に届かないことに気づきます。社長に万一があった場合、会社は返済と運転資金の両方に不安を抱えます。
- 場面2|新契約が決まる前に、解約した:たとえば、社長が「保険料が高い」と感じて、先に解約したとします。新しい契約の審査で、健康状態を理由に条件が付き、希望の保障を持てませんでした。経理担当者が解約返戻金の入金を確認したとき、はじめて保障が空白になっていることに気づきます。
- 場面3|退職金の原資を、使ってしまった:たとえば、社長が資金繰りの苦しい時期に、役員退職金の原資として積み立てていた契約を解約したとします。数年後、勇退の時期が近づき、経理担当者が支払いの準備を確認したとき、原資が残っていないことに気づきます。保障を減らしたり解約したりしたあとの備えの記事では、こうした場合の考え方を解説しています。
3つに共通するのは、目的と必要額を並べる前に、手段を決めてしまったことです。
4-6. 持ちすぎで備えが重くなる3つの場面
反対に、備えが重くなりすぎる失敗もあります。
- 場面1|同じ目的の契約が、何本も重なっている:たとえば、社長が、勧められるたびに契約を追加してきたとします。経理担当者が毎月の保険料を支払ううちに、同じ目的の契約が複数あることに気づきます。必要額を超えた分の保険料が、賞与や設備更新の原資を削っています。
- 場面2|借入金を完済したのに、保障が当時のまま:たとえば、社長が借入金の完済後も、当時の保障額のまま契約を続けているとします。経理担当者が試算表を見て、保険料の支払いが毎期の資金繰りを圧迫していることに気づきます。
- 場面3|資金を寝かせすぎて、手元の資金が薄くなった:たとえば、社長が決算の数字を整えようとして、保険料を増やし続けたとします。経理担当者が月末の支払いの資金を確認したとき、手元の現預金が薄くなっていることに気づきます。保険は目的のための備えであり、税負担の軽減のために増やすものではありません。
備えは、足りなくても、重すぎても、会社の動きを止めます。目的と必要額に合わせて、過不足を小さくするのが、見直しの狙いです。
要するに、先に解約せず、告知と保障の空白を確かめ、削りすぎと持ちすぎの両方を避けて手段を選びます。
5. 社長交代後の確認と、税理士・保険担当者・経営者の役割分担
見直しの最後に、社長交代後の名義の確認と、専門家の役割分担を決めます。ここを後回しにすると、せっかくの見直しが途中で止まります。
5-1. 社長が代わったあとの、被保険者と契約者の確認
社長が交代しても、契約の被保険者や契約者は、自動では変わりません。証券を見ると、前社長のままになっていることがあります。
確認する点は、次の4つです。
- 被保険者:現在の経営の中心にいる人が、被保険者になっているか。
- 契約者:契約者が会社になっているか。名義の変更が必要な契約はないか。
- 受取人:保険金の受取人が、いまの目的に合っているか。
- 保障の目的:前社長の勇退の備えと、新社長の事業保障の備えが、整理されているか。
たとえば、新しい社長に交代したあと、前社長が被保険者のままの契約が残っているとします。経理担当者は保険料を支払い続けますが、現在の経営の中心である新社長の万一に、備えが足りない状態になっているかもしれません。
名義の変更には、課税関係が生じる場合があります。変更する前に、顧問税理士に確認します。
手順は、社長交代後の法人保険の見直し手順で解説しています。承継後の事業保障の考え方は、承継後の事業保障の記事が参考になります。
5-2. 税理士・保険担当者・経営者の役割分担
見直しは、1人の専門家だけでは完結しません。税務・保険・会社の方針が重なるからです。次の表で、役割を整理します。
| 立場 | 主な役割 | 任せない方がよいこと |
| 経営者 | 目的と優先順位を決める。守りたい人と、動かしてよい資金を示す | 目的を決めずに、手段だけを任せること |
| 税理士 | 保険料や保険金の税務上の区分、申告・経理処理の確定、解約の時期の相談 | 保険の商品選びや、保障額の設計 |
| 保険担当者 | 契約内容の説明、解約返戻金の照会、手続きの案内 | 税務の個別判断 |
| FP1級など、全体を見る立場 | 目的・証券・必要額・資金繰りを並べた、全体の点検 | 特定の商品を勧めること |
| 経理担当者 | 保険料の支払い、引き落としの記録の整理、証券と帳簿の突き合わせ | 見直しの方針を、1人で決めること |
個別の税務判断は、顧問税理士の領域です。労務や法律の個別判断は、社会保険労務士や弁護士の領域です。
この記事で解説した全体像は、専門家への相談の準備に使えます。目的の一覧、証券の一覧、必要額の見込みを持っていくと、相談が早く進みます。
5-3. 今週できる確認チェックリスト
見直しの入口は、今週のうちに始められます。次の項目を確かめてみてください。
今週できる確認チェックリスト
- 保険料の引き落としを、経理担当者と一緒にすべて拾い出した。
- 契約ごとに、契約日が2019年7月8日の前か後かを書いた。
- 契約ごとに、目的を4つのうち1つで書いた。書けない契約に印を付けた。
- 契約者・被保険者・受取人が、現在の経営体制と合っているかを確かめた。
- 顧問税理士に、損金算入と資産計上の区分を確認する日程を伝えた。
5項目のうち、1つでも終われば、見直しは動き出しています。完了していない項目が、次の相談のテーマになります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。見直しの前に、契約の一覧と目的を一緒に整理したい方は、お声がけください。
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- 承継後の事業保障
- 福利厚生の既存プランの見直し
- 役員退職金の規程が未整備のとき
- 従業員の退職金規程が未整備のとき
- 承継の場面の死亡退職金の準備
要するに、交代後の名義を確かめ、税理士・保険担当者・経営者の役割を分けると、見直しが途中で止まりません。
6. 法人保険の見直しのよくある質問
Q1. 法人保険の見直しは、いつ行えばよいですか。
決まった時期はありませんが、決算の前、借入金の増減があったとき、社長が交代するとき、2019年7月8日の前後の契約が混ざっているときは、点検の機会です。見直しの前に、目的と証券を整理しておくと、判断が落ち着いて進みます。
Q2. 2019年の通達改正で、法人保険の保険料はすべて資産計上になったのですか。
すべてではありません。最高解約返戻率が50%を超える定期保険・第三分野保険のうち、2019年7月8日以後の契約が対象で、保険料の一部が資産計上になります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)養老保険は別の通達で扱われます。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-4)個別の契約の扱いは、顧問税理士にご確認ください。
Q3. 保険料が高いと感じたら、すぐ解約してよいですか。
先に解約するのは避けます。解約すると保障が全部なくなり、新しい備えが決まらないまま、保障の空白が生じるおそれがあります。先に目的と必要額を確かめ、減額や払済などの選択肢も比べます。
Q4. 乗り換えのとき、告知で気をつけることは何ですか。
事実のとおりに記載することです。告知は、保険会社が尋ねた事項に答える義務です。(出所:保険法第37条)告知義務違反で保険会社が契約を解除できるのは、故意または重大な過失があった場合が要件です。(出所:保険法第55条)新しい契約が成立する前に、今の契約を動かさないようにします。
Q5. 社長が交代したあとの保険契約は、何を確認すればよいですか。
被保険者・契約者・受取人の3つを確認します。前社長が被保険者のままになっていることがあります。名義の変更は課税関係が生じる場合があるため、変更する前に顧問税理士に確認します。
Q6. 解約返戻金を受け取ると、会社の損益に影響しますか。
影響する場合があります。法人が受け取る解約返戻金は、会社の収益として扱われます。(出所:法人税法第22条第2項)資産計上していた保険料があれば、受け取るときに取り崩し、差額が損益に影響します。解約の時期は、決算の見込みとあわせて税理士に相談します。
Q7. 税理士と保険担当者のどちらに相談すればよいですか。
役割が違うため、両方に相談します。税務上の区分や経理処理は税理士、契約内容や手続きは保険担当者の領域です。目的と全体のバランスは、経営者ご自身が決めます。全体を並べる整理は、FP1級など第三者の立場も活用できます。
7. まとめ
- 見直しは、目的の棚卸し・証券の棚卸し・税務上の区分の確認・手段の判断・交代後の確認と役割分担の5つの手順で進めます。
- 法人保険の目的は、事業保障・役員退職金・福利厚生・承継や相続の資金の4つです。契約ごとに、目的を一言で書きます。
- 最高解約返戻率が50%を超える定期保険・第三分野保険で、2019年7月8日以後に契約したものは、保険料の一部が資産計上になります(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)。養老保険は別の通達です(出所:同9-3-4)。
- 先に解約せず、告知と保障の空白を確かめます。削りすぎも持ちすぎも、会社の動きを止めます。
- 個別の税務判断は、顧問税理士の領域です。専門家の役割を分けて、相談を進めます。
筆者より
筆者は、保険の話の前に、守りたい人のお話を伺うことを大切にしています。保険を増やすより、見直したほうがよい場合も、正直にお伝えします。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。保険証券の一覧をもとに、目的と過不足を一緒に整理します。
\無料相談(30秒で予約)/
筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
\経営者さま向け 法人保険のご相談/
「社長交代を機に保険を見直したい」「役員・従業員の退職金や福利厚生を整えたい」「万一のときの資金繰りが心配」――会社を守る備えについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)がお話を伺います。

