【まるっと解説】法人保険と会社の資金繰り|万一に備える5つの視点
月末の夕方、経理担当者が社長室の前で足を止める場面があります。
翌週の仕入先への支払い、給与、銀行への返済日が、同じ週に重なっているからです。通帳の残高を見ながら、「社長に万一のことがあったら、この支払いはどうなるのだろう」と考えてしまいます。
一方で社長は、「保険に入っているから、いざというときの資金は何とかなる」と考えています。この二人の間には、「保険金が入る」ことと「会社の資金繰りが回る」ことの間のすき間があります。
法人保険は、万一のときや退職金を払うときに、会社の現金を支える手段の1つです。ただ、保険金の入金時期、課税の扱い、解約返戻金や契約者貸付の使い方、毎月の保険料の重さを知らないと、備えのつもりが資金繰りを苦しくすることがあります。
この記事は、法人保険と会社の資金繰りの関係を、全体像から順に整理する「まるっと解説」です。解説するのは、保険代理店で1,100名以上のご相談を受けてきたFP1級の筆者です。
結論
- 万一のとき、保険金より先に必要になるのは現金です。買掛金・固定費・借入金の支払いを、入金前に手元の資金で賄えるかを確かめます。
- 法人が受け取る保険金は益金で、入金額と使える額は一致しません。解約返戻金の受け取りも益金です。契約者貸付は、残高と利息が解約返戻金を超えると失効し、保障を失う点に注意します。
- 備えは、削りすぎても過剰でも資金繰りを苦しくします。年表と試算で、必要な額と時期を決めます。税務の個別判断は税理士の領域です。
この記事で分かること
- 万一のときに、保険金より先に必要になる現金の種類
- 保険金が益金になることと、使える額が入金額と一致しない理由
- 解約返戻金・契約者貸付を資金繰りに使うときの考え方と落とし穴
- 役員退職金・従業員退職金を払ったあとの資金繰り
- 保険料の負担と将来コストを踏まえて、備えを年表と試算で決める手順
1. 万一のときに先に必要になる現金と、保険金が益金になる資金繰りの視点
視点の1つ目は、保険金が入る前に必要になる現金と、入ったあとに使える額の差です。3つに分けて整理します。
1-1. 保険金より先に出ていく3つの支払い
社長に万一があった日も、会社の支払いは止まりません。先に出ていくお金は、主に3つに分かれます。
| 支払いの種類 | 主な中身 | 先に確かめること |
| 買掛金 | 仕入先・外注先への支払い | 支払いサイトと、月ごとの支払い額の波 |
| 固定費 | 給与・家賃・リース料・社会保険料など | 売上が落ちても毎月出ていく額の合計 |
| 借入金 | 金融機関への元金と利息の返済 | 返済日、社長の連帯保証の有無、期限の利益の扱い |
この3つは、保険金の請求から入金までの間も、手元の現預金から支払うことになります。保険会社への請求には、死亡の事実を示す書類などが必要で、入金までに時間がかかります。
たとえば、社長に万一があった翌週に、仕入先への支払い日が来たとします。経理担当者は支払いの準備を進めますが、社長が決めてきた支払いの順番や、取引先への連絡の方法が共有されていません。
買掛金は取引先の信用に、固定費は従業員の生活に直結します。借入金は、金融機関への早めの説明が欠かせません。借入金や連帯保証が大きい会社の考え方は、借入金が重い会社の事業保障で詳しく扱っています。
仕入の支払いが大きい会社は、買掛金が多い会社の備えで、固定費の比重が高い会社は、固定費を守る事業保障で、支払いの順番まで整理しています。
1-2. 保険金は益金になり、使える額と一致しない
法人が受け取る死亡保険金は、会社の益金になります。(出所:法人税法第22条第2項)解約返戻金を受け取った場合も同様です。
支払ってきた保険料のうち、資産に計上していた分は、保険金を受け取るときに取り崩します。受け取った保険金と、取り崩した資産計上分との差額が、その期の損益に影響します。(出所:法人税法第22条第2項)
つまり、通帳に入った額と、会社が自由に使える額は別の数字です。税金の支払いが後から来るため、入金額をそのまま返済や支払いに回すと、資金が足りなくなることがあります。
たとえば、保険金が入った月に、社長が「借入金を一気に返して身軽になろう」と考えたとします。経理担当者が、その決算の利益の見込みと納税の時期を調べると、返済へ回した分だけ、あとで支払う税金の資金が足りなくなる計算になります。
入金額と、使えるお金は、別の数字です。受け取ったあとの全体像は、死亡保険金を受け取った後の資金繰りで、場面ごとに解説しています。
どれだけの額が益金になり、いつ納税が必要かは、会社の他の損益で変わります。試算と経理処理の確定は、顧問税理士の領域です。
1-3. 必要な額を出すときの考え方
では、万一のときに会社に必要な額は、どう出せばよいでしょうか。考え方は、先に出ていく現金の合計から、すぐに使える手元の資金を引くことです。
この積み上げ方は、社長の必要保障額の出し方で、手順を示しています。数字を決める前に、まず次の3点を書き出します。
- 入金までの間に支払う、買掛金・固定費・借入金の月ごとの合計
- すぐに使える現預金と、すぐには動かせない資金の区別
- 保険金が入ったあとに必要になる、納税や退職金の支払い
要するに、万一のときは保険金より先に現金が必要になり、入った保険金も益金として課税されるため、入金額と使える額は一致しません。
2. 解約返戻金・契約者貸付を資金繰りに使うときの考え方と落とし穴
視点の2つ目は、保険を手放さずに資金を作る方法の限界です。解約返戻金と契約者貸付は、似ているようで、会社に残るものが違います。
2-1. 解約と契約者貸付の違い
資金が足りなくなったとき、積み上がった解約返戻金を使うことが頭に浮かびます。主な方法は2つあります。
| 項目 | 解約して返戻金を受け取る | 契約者貸付を受ける |
| 保障 | 契約が終わり、保障がなくなる | 契約は続くが、返済しないまま残高が膨らむと失う場合がある |
| お金の性質 | 返戻金は益金。資産計上分を取り崩し、差額が損益(出所:法人税法第22条第2項) | 会社が借りる形で、返済と利息の負担が残る |
| 資金繰りへの影響 | 一度に資金が入るが、納税の資金が別に要る場合がある | 急ぎの資金を作れるが、返済の計画が要る |
| 確認する相手 | 顧問税理士・保険担当者 | 顧問税理士・保険担当者 |
解約すれば、その保険の保障はなくなります。契約者貸付は、解約返戻金を担保に借りる仕組みなので、契約を続けたまま資金を作れます。ただし借入れである以上、返済と利息の負担が会社に残ります。
解約返戻金の受け取りが益金になる点は、保険金と同じです。(出所:法人税法第22条第2項)手元に入る額と、納める税金の資金は分けて考えます。
2-2. 契約者貸付の最大の落とし穴は失効
契約者貸付で最も注意するのは、貸付の残高と利息が解約返戻金を超えると、契約が失効することです。失効すると、保障を失います。
返済を先送りして利息が積み上がるほど、失効に近づきます。しかも、いちばん保障が必要な時期に保障がなくなっていた、という形で表に出ます。
たとえば、資金繰りが苦しい時期に、社長が契約者貸付を受けて運転資金に充てたとします。経理担当者は返済の予定を立てて社長に伝えますが、売上が戻らず、返済は先送りされます。数年後、貸付の残高と利息が解約返戻金に近づいていることに、経理担当者が気づく、という流れです。
失効を避けるには、借りる時点で返済の計画を持ち、年に一度は残高と利息を確かめます。残高の見方は、契約者貸付の落とし穴で整理しています。
契約者貸付の経理処理や、返済した場合の扱いは、会社ごとの状況で変わります。実行する前に、顧問税理士に確認してください。
2-3. 資金繰りに使うときの3つの順序
資金繰りの手段として使うときは、次の順に考えます。
- 目的を決める:一時的な資金のすき間か、恒常的な不足かを分けます。恒常的な不足は、保険ではなく事業の収支や借入条件の見直しが先です。
- 戻し方を決める:契約者貸付なら、返済の時期と、利息を含めた返済額の見込みを紙に書きます。
- 保障への影響を見る:解約や貸付のあとも、万一のときの必要額を満たしているかを確かめます。
保障を残したまま資金を作りたい場合は、保険の減額や払済といった方法もあります。それぞれの違いは、減額・解約した後の保障の考え方で扱っています。
要するに、解約返戻金や契約者貸付は、一時的なつなぎには使えても、残高と利息が解約返戻金を超えると失効して保障を失うため、返済の計画と年1回の確認が前提です。
3. 役員退職金・従業員退職金を払ったあとの資金繰りの視点
視点の3つ目は、退職金を払う日の資金と、払ったあとの数年間の資金です。役員と従業員で、確かめる点が違います。
3-1. 役員退職金を払ったあとの資金繰り
取締役の退職慰労金は、定款に定めがなければ、株主総会の決議で決めます。(出所:会社法第361条第1項)監査役の場合は、会社法第387条第1項が根拠になります。
退職金は、受け取る社長にとっては老後の資金ですが、会社にとっては大きな現金の支出です。保険の解約返戻金などを財源にしても、払ったあとの運転資金や、後継者が使える資金が薄くなることがあります。
損金の扱いにも制約があります。不相当に高額な部分は、損金になりません。(出所:法人税法第34条第2項、同法施行令第70条第2号)損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等で金額が確定した日の属する事業年度です。(出所:法人税基本通達9-2-28)
たとえば、勇退の年に、社長が退職金を払い、同じ年に後継者へ会社を引き継ぐとします。経理担当者が資金計画を見直すと、退職金の支払い後は運転資金の余裕が薄く、翌期の設備の更新や賞与の原資に響くことが分かります。
支払いの前後の資金を並べる手順は、役員退職金を払ったあとの資金繰りと、退職金が資金計画に与える影響で解説しています。
役員報酬と退職金のどちらに配分するかも、資金繰りに響きます。毎年の報酬は定期同額給与が原則で、期中の減額には要件があります。(出所:法人税法第34条第1項第1号)細部は税理士に確認します。配分の考え方は、役員報酬と退職金のバランスで整理しています。
3-2. 従業員退職金を払ったあとの資金繰り
従業員の退職金は、役員の場合と違い、時期が重なると資金が一度に出ていきます。同じ年代の従業員が多い会社では、退職が数年に集中することがあります。
退職金制度を設けるなら、就業規則に定めて記載します。(出所:労働基準法第89条第3号の2)
資金が足りないからといって、あとから退職金を引き下げることは簡単ではありません。退職金の引下げは労働条件の不利益変更にあたり、原則として労働者の同意が要ります。(出所:労働契約法第8条)就業規則の変更で行う場合は、変更の合理性が必要です。(出所:労働契約法第9条・第10条)
国の制度である中小企業退職金共済制度(中退共)は、退職金が従業員に直接支払われます。掛金は法人の損金で、掛金月額は5,000円から30,000円の範囲です(短時間労働者の特例を除く)。(出所:独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部)会社の資金繰りに残る負担は、掛金の毎月の支払いが中心になります。
退職の時期が集中する会社の見方は、退職金の時期が集中する会社の備えで扱っています。
3-3. 役員と従業員を並べて確かめる
| 項目 | 役員退職金 | 従業員退職金 |
| 決め方 | 株主総会の決議(会社法第361条第1項) | 就業規則の定め(労働基準法第89条第3号の2) |
| 資金が出る形 | 勇退時などに大きな支払いが1回 | 退職者ごとに、時期が重なると集中 |
| 払ったあとの課題 | 運転資金と後継者の資金の薄さ | 引下げが難しく、支払いが続くこと |
| 確認する相手 | 顧問税理士 | 社会保険労務士・税理士 |
労務の個別判断は、社会保険労務士・弁護士の領域です。税務の個別判断は、税理士に確認します。
この記事の第5章で示す年表に、役員と従業員の退職金の支払い時期を並べて書き込むと、資金が重なる年が見えます。
ここまでの内容を、会社の数字に当てはめて整理したい場合は、次の相談をご利用ください。
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要するに、退職金は払う日の資金と、払ったあとの運転資金の両方を見ます。役員は決議と損金の扱い、従業員は時期の集中と引下げの難しさが論点です。
4. 保険料の負担と、設備投資・修繕など将来コストが資金繰りを圧迫する場合
視点の4つ目は、備えそのものが、平時の資金繰りを重くしていないかという点です。保険料、将来コスト、点検の問いの3つを見ます。
4-1. 保険料が平時の資金繰りを圧迫するとき
保険料は、毎月または毎年、決まって出ていく支払いです。売上が落ちた年でも、保険料の支払日は変わりません。
損金の扱いは、2019年(令和元年)の通達改正後、契約の内容で分かれます。最高解約返戻率が一定の水準を超える定期保険・第三分野保険は、保険料の一部が資産計上になる場合があります。2019年7月8日以後の契約が対象です。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)養老保険は別の通達(9-3-4)で扱います。
資産計上になる分は、費用にならず、現金だけが出ていきます。損益と現金の動きがずれるため、帳簿の利益が出ていても、手元の資金が思ったより少ない、という状況が生まれます。
たとえば、経理担当者が月末の資金表を作ると、売上は計画どおりなのに、現預金が毎月少しずつ減っています。原因をたどると、保険料の支払いと、資産に計上された分の合計が、想定より大きかったことに気づきます。
個別の契約の区分と経理処理は、契約内容によって異なります。顧問税理士に確認してください。保険料の重さの点検は、法人保険の見直しと損金算入の区分と、解約・払済・減額の違いの記事が参考になります。
4-2. 設備投資・修繕・創業期など将来コストの視点
平時の資金繰りには、保険料のほかにも、時期の読みにくい支出があります。代表的なものは、設備の更新と建物の修繕です。
これらは、毎月ではなく、まとまった額が数年に一度出ていきます。保険料と重なる年に、資金が足りなくなる事態が起こりやすくなります。
たとえば、工場の設備の更新を予定している年に、社長が「今期は利益が出たから」と、保険料の高い契約を追加したとします。経理担当者が翌期の資金表を作ると、更新の費用と保険料の支払いが同じ時期に重なり、金融機関に借入れを相談する流れになります。
設備や修繕の費用と、保障の費用をどう並べるかは、設備・修繕費がかかる会社の備えで解説しています。
創業間もない会社には、また別の事情があります。決算の実績が少なく、借入れの枠も小さいため、手元の資金に頼る比重が高くなります。決算が1回も終わっていない会社の考え方は、創業期で決算前の会社の備えに整理しています。
4-3. 負担の重さを点検する4つの問い
保険料と将来コストの重さは、次の問いで確かめます。
- 売上が落ちた年でも、保険料と固定費を払い続けられるか
- 設備の更新や修繕の時期と、保険料の負担が重なる年はないか
- 資産計上になる分を含めて、実際に出ていく現金の合計を把握しているか
- その保険料が守っているのは、どの支払いなのか
答えにくい項目があれば、備えの目的が曖昧になっている可能性があります。目的が曖昧なまま払い続けている契約を、そのままにしないための点検です。
要するに、保険料は損益と現金の動きがずれやすく、設備投資や修繕と重なる年もあるため、備えが資金繰りを重くしていないかを平時に点検します。
5. 備えを年表と試算で決める手順と、削りすぎ・過剰の失敗場面
視点の5つ目は、備えの量を、感覚ではなく年表と試算で決めることです。手順、年表、失敗場面の順に見ていきます。
5-1. 年表と試算で決める5つの手順
備えの量は、次の5つの手順で決めます。
- 先に出る現金を書く:買掛金・固定費・借入金の月ごとの合計を、1枚にまとめます。
- 今ある備えを書く:現預金、加入中の保険の保障額、解約返戻金の水準、契約者貸付の残高を並べます。
- 将来の支出を年表に置く:役員・従業員の退職金、設備の更新、修繕、借入金の返済終了の時期を書き込みます。
- 益金と納税を試算する:保険金や解約返戻金が入った場合の益金と納税の資金を、税理士に試算してもらいます。(出所:法人税法第22条第2項)
- 差を見て決める:年ごとに、必要な額と今ある備えの差を見て、増やすか、減らすか、そのままにするかを決めます。
年表は、次のような形で作ると、資金が重なる年が一目で分かります。
| 時期 | 書き込む出来事 | 確かめること |
| 今期 | 借入金の返済、保険料、固定費 | 万一のときの必要額と、今ある備えの差 |
| 来期 | 設備の更新、修繕の予定 | 保険料と重なって、現金が足りなくならないか |
| 数年先 | 従業員の退職の集中、借入金の返済終了 | 必要な保障額が減っていないか |
| さらに先 | 社長の勇退、役員退職金の支払い | 払ったあとの運転資金と、後継者の資金 |
年表を作る目的は、保険を増やすことではありません。借入金の返済が進めば、必要な保障額は減り、保険が重すぎる時期も出てきます。年表は、増やす時期だけでなく、見直す時期も示します。
5-2. 削りすぎ=備え不足の3つの失敗場面
備えを削りすぎると、万一のときや退職金の支払いのときに、資金が足りなくなります。主な場面は3つです。
- 場面1|保険料を減らして保障が借入金に届かない:たとえば、社長が保険料の負担を減らそうと、保障の額を大きく下げたとします。経理担当者が借入金の残高と保障額を並べると、万一のとき、返済に足りないことに気づきます。
- 場面2|契約者貸付を重ねて失効に近づく:たとえば、社長が資金繰りのたびに契約者貸付を使ったとします。経理担当者が残高と利息を確かめると、解約返戻金に近づいており、契約が失効すれば保障を失うおそれがあります。
- 場面3|退職金の財源を決めずに時期が来る:たとえば、社長が「勇退のときに何とかする」と先送りしたとします。支払い日が近づいてから、経理担当者が現預金を数えると、運転資金を残すと退職金に足りないことが分かります。
いずれも、足りない部分は借入れで埋めることになり、返済の負担が次の資金繰りを重くします。保障を減らす判断は、減額・解約・払済の違いと、保障の空白が出ないかを確かめてから行います。
5-3. 過剰=備えが重すぎる3つの失敗場面
反対に、備えを厚くしすぎると、平時の資金繰りが苦しくなります。こちらも3つの場面があります。
- 場面1|保険料が固定費の中で大きくなる:たとえば、社長が「保険金が出れば会社は回る」と考えて、保険料の大きい契約を重ねたとします。経理担当者が毎月の支払いを並べると、保険料が固定費の中で大きな割合を占め、賞与の原資が削られています。
- 場面2|設備の更新の年に保険料が重なる:たとえば、社長が設備の更新の予定を伝えないまま、新しい契約を決めたとします。経理担当者が翌期の資金表を作ると、更新の費用と保険料が同じ時期に重なり、金融機関に急ぎの相談をすることになります。
- 場面3|借入金が減ったのに保障がそのまま:たとえば、借入金の返済が進んだのに、社長が保険の見直しをしないまま数年が過ぎたとします。経理担当者が決算の資料を整理すると、必要な額を超える保障のために、保険料を払い続けていることに気づきます。
過剰かどうかは、保障の額だけでなく、毎月の支払いが資金繰りに占める重さで判断します。ただし、減らす場合は、保障の空白が出ないかの確認が先です。
削りすぎも過剰も、「いまの目的と合っているか」を点検していないことから起こります。決算期ごとに、年表と今ある備えの差を見直します。
5-4. 今週できる確認チェックリスト
今週のうちに確かめる項目
- 買掛金・固定費・借入金の月ごとの支払い額を、1枚に書いたか
- 加入中の保険の保障額、解約返戻金の水準、契約者貸付の残高を並べたか
- 役員・従業員の退職金、設備の更新、修繕の時期を年表に書いたか
- 保険金や解約返戻金が益金になる点を、顧問税理士に試算してもらう予定を立てたか
- 万一のとき、誰が保険会社・金融機関・取引先に連絡するかを決めたか
まず、今週中に1枚の表を作るところから始めます。数字がそろったら、顧問税理士と保険担当者を交えて、年表を一緒に確認します。
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要するに、先に出る現金・今ある備え・将来の支出を年表に並べ、差を見て決めます。削りすぎも過剰も、年表と試算で防げます。
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- 買掛金が多い会社の備え
- 固定費を守る事業保障
- 借入金が重い会社の事業保障
- 創業期で決算前の会社の備え
- 設備・修繕費がかかる会社の備え
- 退職金が資金計画に与える影響
- 役員報酬と退職金のバランス
- 退職金の時期が集中する会社の備え
- 減額・解約した後の保障の考え方
6. 法人保険と会社の資金繰りのよくある質問
Q1. 法人が受け取った保険金は、全額を資金繰りに使えますか。
全額を自由に使えるとは限りません。法人が受け取る死亡保険金は益金で、入金額と使える額は一致しません。(出所:法人税法第22条第2項)納税の資金を先に確保してから、使い道を決めます。
Q2. 保険金が入るまでの間の支払いは、どうなりますか。
入金までの間は、手元の現預金で買掛金・固定費・借入金の返済を賄います。入金までの期間は、保険会社と手続きの状況で変わります。平時のうちに、請求の流れと必要書類を確認しておきます。
Q3. 契約者貸付を使うと、保障はどうなりますか。
契約は続きますが、貸付の残高と利息が解約返戻金を超えると、契約が失効して保障を失います。借りる時点で返済の計画を持ち、年に一度は残高と利息を確かめます。
Q4. 解約返戻金を受け取ったときの扱いは、どうなりますか。
解約返戻金も益金になります。資産計上していた分は取り崩し、差額が損益に影響します。(出所:法人税法第22条第2項)実際の額と経理処理は、顧問税理士に確認してください。
Q5. 役員退職金を払ったあとは、何を確かめればよいですか。
払ったあとの運転資金と、後継者が使える資金を確かめます。退職慰労金は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます。(出所:会社法第361条第1項)不相当に高額な部分は損金になりません。(出所:法人税法第34条第2項)
Q6. 従業員の退職金を、資金が苦しいときに引き下げられますか。
簡単ではありません。退職金の引下げは労働条件の不利益変更にあたり、原則として労働者の同意が要ります。(出所:労働契約法第8条)就業規則の変更には合理性が必要です。(出所:労働契約法第9条・第10条)個別の判断は、社会保険労務士・弁護士に確認します。
Q7. 保険料の負担が重いと感じたとき、まず何をしますか。
目的、保障額、期間、資産に計上されている分を点検します。資産計上の区分は契約の内容で異なります。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)減額や払済などの方法もあるため、保障の空白が出ないかを確かめてから決めます。
Q8. 備えの量は、どのように決めればよいですか。
先に出る現金、今ある備え、将来の支出を年表に並べ、年ごとの差を見て決めます。益金と納税の試算は顧問税理士に依頼します。決算期ごとに年表を見直します。
7. まとめ
- 視点1:万一のときは、保険金が入る前に現金が必要で、保険金は益金のため入金額と使える額は一致しません(出所:法人税法第22条第2項)。
- 視点2:契約者貸付は、残高と利息が解約返戻金を超えると失効し、保障を失います。
- 視点3:役員退職金は決議と損金の扱い、従業員退職金は時期の集中と引下げの難しさを見ます。
- 視点4:保険料と設備・修繕などの将来コストが重なる年は、平時の資金繰りが重くなります。
- 視点5:備えは年表と試算で決め、削りすぎも過剰も避けます。税務の個別判断は税理士の領域です。
筆者は、保険を、人が一番つらい「その時」に心と暮らしを支えるものだと考えています。商品の話より先に、会社の数字と、守りたい人のお話を伺うことを大切にしています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。会社の数字と保険の一覧をもとに、資金繰りの全体像を一緒に整理します。
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筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
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