【まるっと解説】承継・相続の資金 自社株から貸付金まで7つの視点
決算書と自社株の評価の資料を前に、社長が経理担当者に声をかける場面があります。
「うちの株は、いまいくらと見られるのか。万一のとき、家族は税金を払えるのか」。経理担当者は、すぐには答えられません。会社の預金は運転資金として動いており、社長個人の財産は会社の帳簿に載っていないからです。
法人保険の相談では、「承継や相続のときに、お金の面で何が起きるのか」「どこから手を付ければよいのか」というお話をよくいただきます。
承継・相続の資金は、自社株の納税、遺族への死亡退職金、後継者以外の相続人への備え、自社株の買取、社長個人の貸付金、生前贈与と、論点が広く、窓口も税理士・弁護士・保険担当者に分かれがちです。
この記事では、承継・相続の資金を7つの視点で整理し、法人保険を「資金の置き場所のひとつ」として位置づけます。加入をお勧めする記事ではなく、いまの会社に何が足りて何が過剰かを点検するための地図です。
解説するのは、FP1級の資格を持つ筆者です。
結論
- 承継・相続の資金は、自社株の納税・死亡退職金・相続人への備え・自社株の買取・貸付金・生前贈与の6つに、資金の置き場所を加えた7つの視点で整理できます。
- 準備が足りなければ、納税や代償金の支払いで会社の資金繰りが止まります。準備が重すぎれば、平時の保険料や滞留する資金が経営を圧迫します。
- 法人保険は、資金の置き場所のひとつにすぎません。税務・法務の個別判断は、税理士・弁護士の領域です。
この記事で分かること
- 承継・相続のときに、資金面で起きやすい3つの場面
- 見落とされやすい理由と、社長と経理担当者の役割
- 承継・相続の資金を整理する7つの視点と、全体を見渡す表
- 備えが足りない場面と、備えが重すぎる場面(各3場面)
- 今週できる手順とチェックリスト
1. 承継・相続の資金で社長と会社に起きやすい3つの場面
承継・相続の資金で困る場面は、納税・分け方・自社株の持ち方の3つに分かれます。順に見ていきます。
1-1. 納税の資金が、相続の直後に必要になる
社長に万一があると、自社株や会社への貸付金、自宅などが相続財産になります。株は換金しにくく、現金は多くないことがあります。
たとえば、社長の財産の大半が自社株だったとします。相続人は税金を払う現金が足りず、会社に株の買取や貸付を頼むことになります。
経理担当者は、会社の預金が相続人の納税に使われる動きに気づく立場です。会社の資金繰りと、相続人の納税は、別々の財布です。
1-2. 後継者とそれ以外の相続人で、分け方がもめる
自社株は後継者に集めたい。しかし、ほかの相続人にも法律上の取り分があります。
遺留分については、兄弟姉妹には遺留分がありません。(出所:民法第1042条)遺留分を侵害された相続人は、金銭で請求できます。(出所:民法第1046条)
たとえば、社長が「株は長男に全部渡す」と決めていたとします。長女に渡す財産が乏しいと、長男が代償金を払う場面になり、会社に資金を頼ることが起こります。
1-3. 株が分散し、会社の意思決定が揺らぐ
過去に親族や知人へ株を渡していた会社では、社長の相続をきっかけに、株がさらに散らばることがあります。
株が分散すると、株主総会の決議の見通しが立ちにくくなります。集約のために会社が株を買い取る場合も、資金の制約があります。
たとえば、経理担当者が株主名簿を更新するときに、持ち主の分からない株が見つかる場面があります。社長が、何年も前の口約束で渡した株を忘れていたときです。
要するに、納税の資金・分け方・株の持ち方の3つが、承継・相続のお金でつまずく主な場面です。
2. 承継・相続の資金が見落とされやすい理由
見落とされる理由は、税金の話と会社のお金の話が別々に語られること、そして社長の頭の中にだけ計画があることの2つです。整理します。
2-1. 個人の相続と会社の資金繰りが、別々に扱われる
相続税は社長個人の問題として、税理士が試算します。一方、会社の預金や借入は、経理担当者と金融機関の話です。
2つを並べて見る人がいないと、「相続のときに会社が出せるお金」と「相続人が必要とするお金」が合っているか、誰も確かめません。
この2つを並べて見るのが、承継・相続の資金の整理です。
2-2. 社長の頭の中にだけ、計画がある
「後継者には株を渡す。ほかの子には預金を渡す」。社長の中では決まっていても、書面や遺言になっていないことがあります。
決まっていない前提で動くと、万一のあとに専務や経理担当者が、判断を求められます。
社長が元気なうちに、考えを書き出して、税理士や弁護士と共有しておくことが入口です。
2-3. 数字が動くので、一度の点検では足りない
自社株の評価は、会社の業績や資産の状況で変わります。社長の貸付金や、相続人の人数も変わります。
一度整えた計画も、決算期ごとに見直さなければ、前提とずれていきます。
点検の頻度は、会社ごとに違います。決算のたびに、税理士と数字を確かめる習慣にしておくと、ずれに気づきやすくなります。
要するに、個人と会社を別々に見ていること、計画が社長の頭の中にあること、数字が動くことの3つが、見落としの背景です。
3. 承継・相続の資金を整理する7つの視点
承継・相続の資金は、7つの視点で順に確かめると、抜けが見つかります。まず全体を表で整理します。
| 視点 | 確かめること | 主な相談先 |
| 1. 自社株の評価と納税資金 | 株の評価の見通しと、相続人が払う税金の資金源 | 顧問税理士 |
| 2. 死亡退職金の財源と非課税枠 | 支給の決議、財源、受取人と非課税の限度額 | 税理士・社会保険労務士 |
| 3. 代償分割と遺留分への備え | 後継者以外の相続人へ渡す資金と、請求への備え | 弁護士・税理士 |
| 4. 自社株の集約と買取資金 | 会社が株を買う場合の分配可能額と課税 | 税理士・弁護士 |
| 5. 社長個人の貸付金 | 会社への貸付の残高と、相続財産としての扱い | 顧問税理士 |
| 6. 生前贈与 | 贈与加算の期間と、贈与後の資金の流れ | 顧問税理士 |
| 7. 資金の置き場所 | 現預金・保険・その他の資産のうち、どこに置くか | 経営者・FP1級・税理士 |
3-1. 視点1|自社株の評価と納税資金を確かめる
自社株は、会社の業績や資産が良くなるほど、評価が上がる傾向があります。評価が上がると、相続人が払う税金も大きくなる見通しになります。
株の評価は、国税庁の財産評価の定めにもとづいて計算します。具体的な金額は、顧問税理士に試算してもらいます。
確かめたいのは、評価額そのものより、「納税のときに、相続人はどこから現金を用意するか」です。株は換金しにくいため、現金の出どころを先に考えます。
たとえば、評価が上がっている時期に、経理担当者が決算書を見て気づく場面があります。利益が積み上がるほど、社長の相続の負担も重くなる見通しだと、税理士に言われるときです。
納税の資金を会社の保険で備える考え方は、自社株の納税資金を保険で備える視点で整理しています。評価が上がり続ける会社の考え方は、自社株の評価が上がっているときの備えが参考になります。
後継者が払う税金の資金を取り上げた記事に、後継者の納税資金の考え方があります。
評価額の計算と納税額の試算は、税理士の領域です。
3-2. 視点2|死亡退職金の財源と非課税枠を確かめる
社長に万一があったとき、会社が遺族へ死亡退職金を支払う方法があります。
死亡退職金のうち、相続税の非課税の限度額は「500万円×法定相続人の数」です。(出所:相続税法第12条第1項第6号)相続人以外の人が受け取る分は、この非課税の対象になりません。
死亡後3年以内に支給が確定したものが、対象になります。(出所:相続税法第3条第1項第2号)
法定相続人の数は、相続放棄をした人も数えます。養子は、実子がいれば1人、いなければ2人までです。(出所:相続税法第15条第2項)
弔慰金は、業務上の死亡なら普通給与の3年分、業務外の死亡なら6か月分までが目安になります。(出所:相続税法基本通達3-20)
支払うには、財源と手続きが要ります。取締役の退職慰労金は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます。(出所:会社法第361条第1項)
不相当に高額な部分は、会社の損金になりません。(出所:法人税法第34条第2項、同法施行令第70条第2号)損金に算入する時期は、原則として、株主総会の決議などで金額が確定した日の属する事業年度です。(出所:法人税基本通達9-2-28)
たとえば、規程がなく、決議の準備もない会社で社長に万一があったとします。専務と経理担当者が、遺族への支払いの金額と時期を、その場で相談することになります。
非課税枠と受取人の考え方は死亡退職金の非課税枠と受取人、財源の組み立ては死亡退職金の財源の備え方で詳しく解説しています。
受け取りは、会社が法人保険で受け取る場合もあります。法人が受け取る死亡保険金は、益金になります。(出所:法人税法第22条第2項)受け取った後の動きは、保険金を受け取った後の資金繰りをご覧ください。
3-3. 視点3|代償分割と遺留分への備えを確かめる
代償分割は、後継者が自社株などを受け継ぎ、ほかの相続人に代わりの金銭(代償金)を支払う分け方です。
ほかの相続人が受け継ぐ財産が少ないと、遺留分の請求を受けることがあります。請求は、金銭でなされます。(出所:民法第1046条)
この制度は、2019年7月1日施行の民法改正で、「減殺請求」から「侵害額請求」に変わりました。(出所:法務省)
確かめるのは、「代償金や請求された金銭を、誰が、いつ、どこから払うか」です。後継者が自分の資金で払えるのか、会社の資金を頼るのかで、備えが変わります。
たとえば、後継者である長男が、代償金を払うために会社から借りようとしたとします。経理担当者は、貸付の稟議と返済の見通しを求められる立場になります。
後継者以外の相続人への備えは、後継者以外の相続人への資金の備えで取り上げています。
遺留分や分け方の個別判断は、弁護士・税理士の領域です。
3-4. 視点4|自社株の集約と買取資金を確かめる
株が分散している会社では、社長の相続のときに、株を後継者へ集めたい場面が出ます。
会社が自社株を買い取る場合は、分配可能額の範囲内でなければなりません。(出所:会社法第461条)
相続人などに対して、会社が株の売渡しを請求できる制度もあります。ただし、定款の定めが必要です。(出所:会社法第174条)
会社に株を譲渡した人には、「みなし配当」の課税が生じる場合があります。(出所:所得税法第25条)詳しい扱いは、税理士に確認します。
確かめたいのは、買取の資金が会社にあるか、分配可能額が足りるか、です。経理担当者は、決算書の純資産の状況から、この範囲の見通しを数字で伝える立場です。
たとえば、社長が「株は会社が買い取れば集まる」と考えていたとします。経理担当者が分配可能額を試算したところ、買取の資金が範囲を超えると分かる場面があります。
集約の進め方は分散した株を集約する進め方、買取の制約は自社株の買取と分配可能額、社長に株が集中している会社の備えは社長が株の大半を持つ会社の備えで整理しています。
3-5. 視点5|社長個人の貸付金を確かめる
会社の運転資金を、社長個人が貸している会社は少なくありません。
会社が社長から借りたお金は、社長個人の貸付債権になり、社長の相続財産に含まれます。(出所:財産評価基本通達204)
つまり、社長に万一があると、相続人は会社に返済を求める立場になり、会社は返済の資金を用意する必要があります。相続人の側でも、相続税の対象になります。
たとえば、経理担当者が貸借対照表の「役員借入金」に気づいたとします。社長の相続のときに、その残高が会社の資金繰りに影響することを、社長に伝える場面です。
貸付金の整理は、社長の会社への貸付金の整理で取り上げています。返済の進め方や帳簿の整理は、顧問税理士と相談して決めます。
3-6. 視点6|生前贈与の期間と贈与後の資金を確かめる
社長が元気なうちに、自社株や財産を後継者へ贈る方法があります。
ただし、相続開始前3年以内の暦年課税の贈与は、相続財産に加算されます。2024年(令和6年)1月1日以後の贈与からは、加算の期間が段階的に7年へ延長されています。(出所:相続税法第19条、国税庁)
贈与しても、直前だと相続税の計算に戻されることがある、という点を押さえておきます。
贈与を行ったあとは、贈与を受けた人の税金の資金、社長の老後の資金、会社の株主構成が変わります。それぞれの資金の流れを、あわせて点検します。
たとえば、社長が後継者へ株を贈与したあと、後継者が贈与の税金を払うための資金を用意できなかったとします。経理担当者は、後継者が会社に資金の融通を求める動きに気づく立場になります。
贈与を済ませたあとの点検は、生前贈与を済ませたあとの確認点で整理しています。
高齢の社長が準備を進めるときの考え方は、高齢の社長が進める承継の備えが参考になります。
贈与の方法・時期・税額の判断は、税理士の領域です。
3-7. 視点7|法人保険は資金の置き場所のひとつと捉える
ここまでの6つの視点で、必要なお金の「時期」と「金額の見通し」が見えてきます。最後に、そのお金をどこに置いておくかを考えます。
置き場所の候補は、会社の現預金、社長個人の資産、法人保険などです。法人保険は、そのうちのひとつにすぎません。
| 置き場所 | 向く面 | 気をつける面 |
| 会社の現預金 | 使い道を変えやすい。運転資金にも回せる | 社長個人の相続の資金には、そのままは使えない |
| 社長個人の資産 | 相続人が納税や代償金に使いやすい | 自社株が大半だと、現金が不足しやすい |
| 法人保険 | 万一の時期に合わせた資金を、会社で用意しやすい | 保険料の負担、契約の目的との一致、税務の取扱いの確認が要る |
法人保険を使う場合の損金算入は、2019年(令和元年)の通達改正後の取扱いで考えます。保険料の一部を資産に計上する対象は、最高解約返戻率が50%を超える定期保険・第三分野保険のうち、2019年7月8日以後の契約です。(出所:国税庁、法人税基本通達9-3-5の2)養老保険は別の通達で、9-3-4が根拠です。
保険金や解約返戻金は、法人が受け取るときは益金になります。(出所:法人税法第22条第2項)資産計上分は取り崩し、差額が損益になります。
確かめたいのは、「その保険は、どの視点の、どの金額のために置いているのか」です。目的が曖昧なまま保険料を払っていないかを点検します。個別の税務判断は、税理士の領域です。
この記事では、全体像を7つの視点でまとめました。ご自身の会社に当てはまる点を、具体的に整理したい方は、お気軽にご相談ください。
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要するに、納税・死亡退職金・相続人への備え・自社株の買取・貸付金・生前贈与の6つの資金と、置き場所の1つで、合わせて7つの視点を確かめます。
4. 承継・相続の資金で起きやすい失敗場面|備え不足と備えの過剰
備えは、足りなくても、重すぎても失敗します。備え不足の3場面と、備えが重すぎる3場面を、社長と経理担当者の動きで見ていきます。
4-1. 備えを削りすぎた3つの場面
- 場面1|納税の資金を考えていなかった:たとえば、社長が「株は評価が高くても、売らなければ問題ない」と考え、納税の資金を決めていなかったとします。相続の直後に、相続人が会社へ急な借入や買取を頼み、経理担当者が資金繰りの組み直しに追われます。
- 場面2|死亡退職金の規程と決議がなかった:たとえば、社長が保険料の負担を減らそうと、保障を縮めたまま、規程も整えていなかったとします。万一のとき、遺族への支払いの金額が決まらず、専務と経理担当者が、決議の準備と資金の確保を同時に進めることになります。
- 場面3|後継者以外の相続人への備えがなかった:たとえば、社長が遺言を作らず、「兄弟で話し合うだろう」と考えていたとします。相続のあと、ほかの相続人から遺留分の金銭の請求を受け、後継者は代償金の資金を会社に頼み、経理担当者が貸付の資金繰りを見直すことになります。
削りすぎの場面に共通するのは、「時期が来てから資金を探す」ことです。時期と金額の見通しを、先に紙に書いておきます。
4-2. 備えが重すぎた3つの場面
- 場面1|保険料が平時の資金繰りを圧迫した:たとえば、社長が「相続の備えは多いほどよい」と、複数の契約を重ねたとします。毎月の保険料が重くなり、賞与や設備更新の資金を削る場面が出て、経理担当者が支払いの調整に追われます。
- 場面2|現預金を積み上げすぎた:たとえば、社長が万一に備えて、決算のたびに会社の現預金を積み上げたとします。純資産が厚くなって株の評価が上がる方向に働くことがあり(評価は顧問税理士の試算で確認します)、設備更新や採用の資金を回せず、経理担当者が社長に投資の先送りを相談する場面が出ます。
- 場面3|目的が変わったのに、契約が残った:たとえば、後継者が決まって生前贈与も終えたのに、以前に納税用として入った契約をそのまま続けていたとします。経理担当者が保険料の支払いを続ける中で、「この契約は何のためか」と気づく場面になります。
重すぎる場面に共通するのは、「目的の確認なしに、備えが増えていく」ことです。決算期ごとに、目的と金額が合っているかを点検します。
備えは、足りない側にも、重い側にも、ずれます。7つの視点で、時期と金額を並べて、会社に合う水準を探します。
要するに、備えの過不足は、時期と金額を並べて点検すると、早い段階で気づけます。
5. 今週できる承継・相続の資金の手順とチェックリスト
難しい計算は要りません。次の5つの手順を、順に進めます。
5-1. 5つの手順
- 財産を一覧にする:自社株、会社への貸付金、自宅、預貯金、加入中の保険を1枚に書きます。
- 相続人と後継者を書き出す:法定相続人の人数、後継者、後継者以外の相続人を整理します。
- 必要な資金を時期別に並べる:納税、代償金、遺族への死亡退職金、貸付金の返済、自社株の買取を並べます。
- 置き場所を決める:現預金・個人資産・保険のどこで用意するかを、金額と時期で割り当てます。
- 専門家に確認する:税理士に税額を試算してもらい、弁護士に分け方を相談します。
3番目の「時期別に並べる」が、最も効果のある作業です。時期が重なる資金は、会社の資金繰りを圧迫するためです。
5-2. 今週のチェックリスト
今週のチェックリスト
- 自社株の評価について、直近の試算を顧問税理士に確認したか
- 死亡退職金の規程と、株主総会の決議の手順が整っているか
- 法定相続人の数と、後継者以外の相続人を書き出したか
- 会社への貸付金の残高と、返済の考え方を確認したか
- 加入中の保険が、7つの視点のどの目的に当たるかを書き出したか
- 生前贈与をしている場合、贈与の時期と加算の期間を確認したか
5-3. 誰に何を相談するか
| 立場 | 主な役割 |
| 社長 | 承継の方針と、誰に何を渡すかを決める |
| 経理担当者 | 決算書の数字を整え、資金繰りと分配可能額の見通しを伝える |
| 税理士 | 株の評価、相続税、贈与、みなし配当などの税務の個別判断 |
| 弁護士 | 遺言、遺留分、分け方の法務の個別判断 |
| FP1級 | 資金を時期別に並べ、置き場所の全体像を点検する |
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5-4. あわせて読みたい
- 自社株の納税資金を保険で備える視点
- 死亡退職金の非課税枠と受取人
- 保険金を受け取った後の資金繰り
- 高齢の社長が進める承継の備え
- 自社株の評価が上がっているときの備え
- 死亡退職金の財源の備え方
- 後継者の納税資金の考え方
- 後継者以外の相続人への資金の備え
- 社長の会社への貸付金の整理
- 社長が株の大半を持つ会社の備え
- 分散した株を集約する進め方
- 自社株の買取と分配可能額
- 生前贈与を済ませたあとの確認点
要するに、財産の一覧・相続人の整理・時期別の資金・置き場所・専門家の確認の5つを、順に進めます。
6. 承継・相続の資金のよくある質問
Q1. 自社株の相続税の納税資金は、会社の預金から出せますか。
会社の預金は、そのまま相続人の納税に使えるとは限りません。会社と社長個人は別の財布です。会社が株を買い取る方法などは、分配可能額の範囲内で行います。(出所:会社法第461条)
Q2. 死亡退職金の非課税枠は、いくらまでですか。
非課税の限度額は、500万円に法定相続人の数を掛けた額です。(出所:相続税法第12条第1項第6号)相続人以外が受け取る分は、対象外です。
Q3. 後継者以外の相続人から、遺留分を請求されたらどうなりますか。
遺留分を侵害された相続人は、金銭で請求できます。(出所:民法第1046条)兄弟姉妹に遺留分はありません。(出所:民法第1042条)個別の対応は、弁護士に相談してください。
Q4. 会社が自社株を買い取るときの制限はありますか。
自己株式の取得は、分配可能額の範囲内で行います。(出所:会社法第461条)株を会社に譲渡した人には、みなし配当の課税が生じる場合があります。(出所:所得税法第25条)詳しい扱いは、税理士に確認します。
Q5. 社長が会社に貸しているお金は、相続でどう扱われますか。
社長個人の貸付債権として、相続財産になります。(出所:財産評価基本通達204)会社には返済の資金が必要になるため、残高と返済の考え方を、税理士と確認します。
Q6. 生前贈与をすれば、相続税は軽くなりますか。
贈与の時期によっては、軽くならない場合があります。相続開始前3年以内の暦年課税の贈与は、相続財産に加算されます。2024年1月1日以後の贈与からは、期間が段階的に7年へ延長されています。(出所:相続税法第19条、国税庁)
Q7. 法人保険は、承継・相続の資金に欠かせませんか。
法人保険は、資金の置き場所のひとつです。現預金や社長個人の資産で用意できる会社もあります。目的と金額、保険料の負担を並べて、加入の要否を判断します。損金算入の取扱いは、顧問税理士に確認してください。
Q8. 何から始めればよいですか。
財産の一覧と、相続人の整理から始めます。次に、必要な資金を時期別に並べます。手元の資料をもとに、顧問税理士とFP1級に相談すると、進めやすくなります。
7. まとめ
- 承継・相続の資金は、自社株の納税・死亡退職金・相続人への備え・自社株の買取・貸付金・生前贈与・資金の置き場所の7つの視点で整理できます。
- 死亡退職金の非課税の限度額は、500万円に法定相続人の数を掛けた額です(出所:相続税法第12条第1項第6号)。
- 自社株の買取は分配可能額の範囲内で行い(出所:会社法第461条)、遺留分は金銭で請求されます(出所:民法第1046条)。
- 備えは、足りなくても重すぎても失敗します。時期と金額を並べて、決算期ごとに点検します。
- 法人保険は資金の置き場所のひとつです。税務・法務の個別判断は、税理士・弁護士の領域です。
筆者は、法人保険の相談で、決める社長ご本人と最初から向き合うことを大切にしています。正しい説明だけでなく、社長ご自身が納得して選べるようになることを目指して、お話を伺っています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。お断りいただいて構いません。手元の財産と保険の一覧をもとに、承継・相続の資金を時期別に並べるところから、一緒に整理します。
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筆者の考えや経歴は、プロフィールにまとめています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や個別の勧誘ではありません。税制・制度は改正される場合があります。実行前に顧問税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
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